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ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


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第15話:幻影のゼロ 1位の終焉と新たな現実

門田龍人こと『Ryujin DM』は、姉 優子の目隠し特訓を完遂した。薄暗い通路を歩いていても、彼は周囲の微かな空気の流れ、岩肌の反響音、そして天井のクレーンの駆動音を、五感ではなく『ロマン』で捉えることができていた。


彼の隣には、新しい『闇属性 反動制御ブレード』と、耐衝撃合金製の『聖女のポーションケース』を携えた姫宮彩美が立っている。


「どうだ、彩美。俺の『次元渡りの視野』は、もうカガリの罠なんかに引っかからねぇぜ」


「うん、龍人。さっき、クレーンが動く0.3秒前に、あんたがクレーンの音を察知してた。もう大丈夫」彩美は心底安心したように頷いた。


龍人は、カガリへの三度目の挑戦状を送り、私設ダンジョンの入り口で待機していた。


その時、妹の門田命からメッセージが届いた。


Mon_Mikoメッセージ 兄さん。貴方の配信に、Phantom Zeroがコメント欄に現れました。彼の配信は滅多に行われませんが、出現すると必ず『何か』が起こります。警戒してください。


龍人の配信画面のコメント欄に、滅多に動かないはずの『Phantom Zero 幻影のゼロ』の名前が流れた。


Phantom Zero 幻影のゼロ 貴方のロマンは、見ていて心地よい。しかし、このダンジョン配信の世界に必要なのは、虚無だ。


そのコメントを読み上げた直後、龍人たちがいるダンジョン入口の通路の空気が、急激に冷え込んだ。


「なんだ、この冷たい空気は……」龍人の体が本能的に警戒態勢に入る。


その冷気は、龍人たちが待ち受けている最奥の広場からではなく、彼らの背後、つまりダンジョン入口から来ていた。


「龍人!後ろ!」彩美が叫ぶ。


龍人が振り向いた瞬間、ダンジョン入口の光を背負い、黒いフードとマスクで顔を覆った人影が立っていた。全身の装備は、まるで周囲の闇を吸収しているかのように、一切の光を反射しない。それが、Phantom Zero 幻影のゼロだった。


「お、お前が……」龍人が言葉を発する前に、ゼロは龍人たちに目もくれず、最奥の広場へと向かって、幽霊のように通路を通り過ぎていった。


「待て!何者だ!」龍人は追いかけようとするが、彩美が龍人の服を強く掴んだ。


「龍人、ダメ!あの人、規格外よ!アタシの第六感が、逃げろって叫んでる!」


龍人はその冷徹な気配に抗えず、立ち尽くした。


数秒後、最奥の広場から、爆発的な熱波が襲ってきた。カガリの紅蓮の力が放たれた証拠だ。


そして、その熱波の後に、カガリの叫び声が響いた。それは、優雅な騎士の悲鳴ではなく、絶望と驚愕に満ちた、一人の人間の叫びだった。


「なっ……!私の剣閃を……!見破っただと!」


その叫びが途切れると同時に、全ての音が消えた。熱波も冷気も消え、広場は異様な静寂に包まれた。


龍人と彩美は、恐る恐る広場へと足を踏み入れる。


広場の中央には、紅蓮の剣王カガリが、最高級の装備を纏ったまま、地面に倒れ伏していた。彼の胸には、小さな穴が一つ開いており、周囲には血痕一つない。まるで、彼の存在そのものが、この世界から『消去』されたかのようだった。彼の傍らには、彼の剣が鞘から5センチ抜かれた状態で、虚しく転がっていた。


そして、その死体の横に、Phantom Zeroが立っていた。


ゼロは、龍人に視線を向けた。そのマスクの奥から聞こえてきた声は、無機質で、感情を一切感じさせない。


「貴方のロマンは、現実には成り得ない。紅蓮の剣王も、この世界の『虚無』の前では、ただの幻想だった」


そう言い残すと、Phantom Zeroは、まるで最初からそこにいなかったかのように、空間に溶け込むように姿を消した。


龍人は、立ち尽くしたまま、声も出なかった。ランキング1位、カガリ・A・ライトニングは、彼のロマンを否定した男は、一瞬にして、『虚無』によってこの世界から消去されたのだ。


彼の配信画面には、ショッキングな光景と、10万人を超える視聴者数、そして、


『速報 紅蓮の剣王 カガリ A ライトニング 死亡』


というテロップが表示されていた。


龍人は、折れたブレードを見つめた時以上の、『現実』の冷たさに、全身を硬直させていた。

テメェら!見ただろ!


なんだ、あれは!紅蓮の剣王カガリが、Phantom Zeroとかいうヤツに、一瞬でぶっ殺されちまった!俺のロマンがカガリに勝つ前に、カガリが『虚無』に喰われちまったんだ!


チクショウ!あれが1位の末路かよ!ロマンだの効率だの、全部ぶっ飛ばして、『虚無』が全てを終わらせやがった!


しかも、カガリは、俺をボコボコにした時と同じように、剣を5センチ抜いた状態だった。あの紅蓮の剣閃が、Phantom Zeroには全く通用しなかったってことかよ。俺たちが追いかけていた現実の壁が、一瞬で塵になった。


あのPhantom Zeroのヤツ、『ロマンは現実には成り得ない』だとか、『虚無が幻想を喰らう』だとか、厨二病のレベルが俺より遥かに上じゃねぇか!


これでランキングはグチャグチャだ。1位の座が空いた。だが、俺はそんなことどうでもいい。俺のロマンを否定したヤツを倒す前に、そいつが消えちまった。


俺の新たな目標は、あのPhantom Zeroだ。あの虚無を、俺の『次元渡りのロマン』で打ち破ってやる。この世界を虚無になんかさせてたまるか!


テメェら、俺の『幻影の虚無討伐伝説』から、絶対に目を離すんじゃねぇぞ!

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