第13話:二度目の惨敗 0.5秒のロマン砲を砕いたクレーンの罠
門田龍人こと『Ryujin DM』は、『闇属性 反動制御ブレード』を手に、姫宮彩美を伴い、再びカガリの私設ダンジョンの最奥へと進んだ。カガリが仕掛けた天井のクレーンの罠は知っている。しかし、龍人はその罠をロマンで乗り越えるつもりだった。
「紅蓮の剣王!テメェの卑怯な罠なんか知ったこっちゃねえ!俺の進化したロマン砲で、テメェの現実をぶっ壊してやる!」
奥で待っていたカガリは、優雅に微笑んだ。
「貴方の姉から情報を得たようですね。しかし、知っていることと対処できることは違いますよ」
龍人が構える。0.5秒の短縮に成功した『闇属性 八卦羅斬』は、もはやカガリの即時解析にも対応できるはずだ。
「いくぜ!『闇属性 八卦羅斬ッ―― 空中突破!』」
龍人は、天井を避け、地を這うような低い姿勢でカガリに突進する『低空ロマン砲』を放った。
しかし、その瞬間、カガリは動かなかった。彼が指を鳴らすと、天井の古びた大型クレーンが、龍人の頭上を通り過ぎ、龍人の視界を完全に覆うように、巨大なコンテナを急降下させた。
ガシャン
コンテナは龍人の3メートル手前の地面に激突し、爆発的な砂煙と金属音を立てた。龍人は、突進の最中に視界を奪われ、一瞬にして方向感覚を失う。
「なっ!視界を!」
龍人のロマン砲は、目隠しされたことで、方向がわずかにズレ、カガリの遥か横を通過し、岩壁に虚しく叩き込まれた。
「戦術的視界遮断です。貴方のロマン砲は、視界と音に頼りすぎている」
カガリは、龍人が体勢を立て直す隙を与えなかった。
「そして、その反動制御ブレードも、私の計算の範疇です」
カガリは、再び剣を5センチ抜いた。
「紅蓮の剣閃 二の太刀」
その一瞬の動作は、龍人ではなく、彼の隣にいた彩美が持っていた回復ポーションのケースを狙った。ポーションケースは、全てが細かく切り刻まれ、中身のポーションが地面に飛び散る。
「彩美!」龍人が叫ぶ。
カガリは、剣を鞘に戻しながら冷たく告げた。
「戦闘不能です。貴方の聖女のロマンは、貴方の防御の要であると同時に最大の弱点。回復手段を失った貴方は、もはや戦えません」
龍人の体力はゼロではないが、回復手段の消滅とロマン砲の空振りによって、戦意を完全に喪失した。彼は二度目の惨敗を喫した。
龍人が、折れたブレードではなく、砕かれたポーションの残骸を呆然と見つめていると、背後から冷たい声が響いた。
「見事に負けたわね、龍人」
姉の門田優子が、再び姿を現した。彼女は、地面に飛び散ったポーションの残骸を一瞥する。
「カガリは、貴方のロマンを理解した上で、それをダンジョンの構造とパートナーの存在で潰してきた。これが、ソロ探索者とパーティー探索者の視野の違いよ」
優子は、龍人の肩を突き飛ばした。
「貴方は、目の前の敵に勝つことしか考えていない。だから、天井のクレーンに気を取られ、コンテナの音と砂煙で視界を奪われるという、連鎖的な罠に気づけなかった」
龍人は、何も言い返せない。優子の言う通り、カガリの策略は、彼のロマン砲の対策であると同時に、彼の視野の狭さを突いたものだった。
「チクショウ……じゃあ、どうすればいいんだよ!俺は、このロマンを捨てるつもりはねぇ!」
「ロマンを捨てろとは言っていない。ロマンを、ダンジョンの構造全体で制御しろと言っているの」
優子は、龍人に向かって、短剣を投げつけた。龍人は反射的に短剣を掴む。
「明日から、私の特訓を受ける。私の特訓は、『ロマンを捨てないための特訓』よ。貴方の視野を、私と同じ、孤独なソロ探索者の視野にまで広げる」
「姉ちゃんの特訓だと?何をやるんだよ!」
優子は、龍人を冷たい目で見つめ、簡潔に言った。
「目隠しをして、このダンジョンを五周。そして、クレーンの駆動音だけで、その軌道を予測しなさい。貴方のロマンを、ダンジョンの仕掛けすらも利用できる武器に変えてやる」
龍人は、その常識外れの特訓内容に、思わず背筋を凍らせた。だが、カガリに二度も惨敗した屈辱が、彼の心を突き動かした。
「上等だ!姉ちゃん!その特訓で、俺のロマンを最強の武器に変えてやる!」
テメェら、見たか!二度目の惨敗だ!マジで最悪!
カガリの野郎、俺のロマン砲を天井のクレーンで目隠ししやがった!しかも、彩美の聖女ポーションを切り刻むとか、マジで卑怯な野郎だ!
0.5秒短縮に成功したのに、視界遮断で空振りとか、俺のロマンはどこまでギャグのオチになるんだよ!悔しすぎる!
だが、姉ちゃんの優子がまた現れて、俺の視野の狭さを指摘しやがった。カガリの策略は、俺のロマンを潰すための連鎖的な罠だったってことだ。チクショウ、俺は目の前の敵しか見てなかった。
そして、姉ちゃんの特訓だ!目隠しして、ダンジョンを五周とか、頭がおかしいだろ!でも、これが『ロマンを捨てないための特訓』なら、受けて立つ。
カガリ!見てろよ!俺のロマンは、テメェの策略と実力と、このダンジョンの仕掛け全てを巻き込んで、伝説になるんだ!姉ちゃんの特訓で、俺は『視野の広いヤンキーオタク』になって、テメェに三度目の正直を叩きつけてやる!




