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ダンジョン・ストリーマー ~ヤンキーオタク、伝説の底から這い上がる~  作者: 沼口ちるの


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序章:日常の崩壊と「穴」の出現

西暦2035年。人類の日常は、突如として出現した「ホール」によって一変した。世界各地に、黒く歪んだ異形の穴が空き、中からは未知の魔物が出現したのだ。しかし、この終末的な事態は、意外な形で人類に受け入れられていく。


穴の内部は「ダンジョン」と呼ばれ、そこから採れる素材は新たな資源となり、特に魔物を倒すことで稀に入手できる「コア」は、人間を強化する特殊な能力を持つことが判明した。そして、このダンジョン探索が、新たなスポーツ、いや、新たなエンターテイメントとして世界を席巻することになる。


それが、「ダンジョン・ストリーミング」だ。


1. 配信登録年齢、16歳の壁

「はぁ〜……くっそ、あと半年かよ」


高校一年生の門田龍人もんだりゅうじんは、自宅の古びたゲーミングチェアに体を預け、額に手を当てて天を仰いだ。


彼の部屋の壁には、特大ポスターが貼られている。それは、現在の世界ダンジョン・ストリーミングランキングのトップを走る、「紅蓮の剣王ぐれんのけんおう」こと、カガリ・A・ライトニングの勇姿だ。


龍人の外見は、見るからに"ヤンキー"だった。金髪をリーゼント風に固め、耳には大ぶりなピアス。制服は着崩し、目つきは鋭い。が、その口から出るのは、今しがた口にしたような、ひどく"オタク"的な愚痴だった。


愚痴の原因は一つ。


「ダンジョン入場及び、ストリーミング配信登録は、16歳から」という厳格なレギュレーションだ。龍人は現在15歳。誕生日を迎えるまで、手をこまねいているしかなかった。


「ちくしょう、このままじゃ『紅蓮の剣王』がレベルカンストしちまう!早く俺も『次元渡りの龍神ディメンション・ウォーカー・リュウジン』として世界に降臨しねーと……」


龍人は、ダンジョン探索を、ただの金稼ぎや名誉のためだとは思っていない。それは、彼の愛してやまないファンタジー世界への参戦であり、自分だけの冒険なのだ。彼は、ダンジョン・ストリーミングを、リアル版のMMO(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)として捉えていた。


その時、ドンドンドン!と激しいノックと共に、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。


「龍人!あんた、またゲームの世界に引きこもって!今日、学校終わったらすぐにバイトって約束でしょうが!」


入ってきたのは、幼馴染の姫宮彩美ひめみやあやみだ。彼女もまた、龍人に負けず劣らずの強烈な外見。茶色に染めた髪をゆるく巻き、目元はアイラインでバッチリと決め、制服のスカート丈は極限まで短い。世間一般でいうところの"ギャル"である。


「うっせーな、彩美!今、俺は、人類の未来、いや、俺の『伝説』の構想を練ってたところなんだよ!」龍人は反射的に反論する。


彩美は、部屋の隅に積まれたアニメBDブルーレイディスクの山と、特撮フィギュアの陳列棚を一瞥し、深くため息をついた。


「はいはい、伝説ね。あんたの伝説より、まずは生活費でしょ。いい加減、この部屋のフィギュアとか、魔物の討伐報酬で買い揃えるようになりなさいよ」


「……ぐっ」


その言葉は、龍人の痛いところを突いた。彼が欲しがっている高額なダンジョン素材や配信機材、そして何より「コア」を手に入れるには、莫大な初期投資が必要だ。今の龍人は、ただの高校生であり、探索者として登録できない以上、バイトで地道に稼ぐしかない。


彩美は、そんな龍人の葛藤を知りながらも、表情をすぐに穏やかにした。


「ま、でも、もう少しだね。龍人がダンジョンに潜れるようになったら、アタシ、ちゃんと回復アイテムの差し入れくらいはしてあげるから」


そう言って笑う彩美の姿は、見た目の派手さとは裏腹に、どこか古風で優しい。彼女は、ヤンキーの皮を被ったオタクである龍人の、「伝説」を夢見るロマンチストな本質を理解している数少ない人間だ。彩美自身も、ギャルの見た目ながら、心の中では白馬の王子様が現実に出現することを密かに願う、少女漫画のヒロインのようなロマンチストな側面を持っていた。


「おうよ!そん時は、俺が稼いだ金で、お前に最高級の『祝福のティアラ』でも買ってやるから待ってろ!」龍人は、いつもの調子を取り戻し、ニヤリと笑った。


2. 配信開始、そして『モブ』の洗礼

誕生日を迎え、龍人は早速、ダンジョン・ストリーミングの公式ウェブサイトから登録を済ませた。登録名は予定通り『次元渡りの龍神』だが、検索に引っかかりやすいようにアカウント名は『Ryujin_DM』とした。


初めて潜るダンジョンは、自宅から電車で一時間ほどの場所にある、最も難易度の低い『緑の苔穴グリーンスライム・ケイヴ』だ。このダンジョンは、初心者向けのチュートリアル・ダンジョンとして知られ、出現する魔物も、ただ丸いだけのスライムや、動きの遅いロック・ゴーレム(ミニ)程度だ。


龍人は、バイト代をはたいて購入した最低限の装備――安物の革鎧と、ごく一般的なカーボン製のブレードを携え、配信機材も安価なスマートフォンとヘッドセットのみ。


初めての配信。視聴者数は……0。


「よし、『次元渡りの龍神』、いざ、冒険の始まりだ!」


龍人は、誰もいない画面に向かって、大げさにポーズを決めた。


視聴者リスナー諸君、聞け!俺が、この世界の真の『伝説』となる男、Ryujin_DMだ!まずはこの、『緑の苔穴』を、最速・ノーダメージでクリアしてやる!」


意気揚々とダンジョンに足を踏み入れた龍人だったが、開始からわずか5分で、彼は現実の厳しさに直面する。


カチャカチャカチャ……


龍人が初めて遭遇したスライムを、ブレードで一刀両断にしようと、アニメの必殺技のような大袈裟な動作で振りかざした、その瞬間。


彼の横を、すり抜けるようにして一人の男が通り過ぎた。


男は、全身に光沢のある最新のカーボンファイバー製スーツを纏い、片手には無駄のないデザインのレーザーエッジを持つ。彼は、スライムに向かって、一切の無駄な動作なく、「サクッ」と一突き。


10EXPの表示と共に、スライムは液状化して消えた。


男は立ち止まることもなく、軽やかに奥へと進んでいく。彼は頭に小型カメラを装着しており、その画面には『ザコ狩り配信:安定周回中!』の文字と共に、リアルタイム視聴者数3,500の数字が表示されていた。


男は、無言で、ただただ淡々と魔物を狩り、画面のコメント欄には、


「さすがレベリングの匠、作業効率が神」


「また新装備?金持ってんなー」


「今日も飯ウマですw」


といったコメントが、目にも止まらぬ速さで流れていた。


龍人は、その場に立ち尽くし、振り下ろす途中のブレードを止めた。


「あ、あいつ……モブ配信者じゃねーか……」


モブ、つまり、ランキング上位にも食い込まない、ただの『周回勢』。そのモブ配信者にすら、自分は大げさな動きで、あっさりと「効率」という名の現実を叩きつけられたのだ。


彼は、自分の配信画面を見下ろした。視聴者数は、依然として0。


その時、初めてのコメントが流れた。


AyamiHime: 「りゅーじん、なに突っ立ってんの?さっさと動かないと、バイトに遅刻するよ(ハート)」


彩美だった。龍人は、照れ隠しに大声で叫んだ。


「うっせー!これは『戦略的待機タクティカル・ホールド』だ!さあ、行くぞ!『次元渡りの龍神』の伝説は、ここからが本番だ!」


龍人は、誰も見ていない画面に向かって、再び走り出した。伝説の始まりは、誰も知らない、たった0人の視聴者からだった。

この物語は 現実世界にファンタジーが介入した世界を舞台とし その中でも特に エンターテイメントとしての ダンジョン ストリーミング に焦点を当てて描かれます。


主人公 門田龍人 は 外見と内面のギャップが彼の最大の魅力であり 武器となります。彼はダンジョンを単なるビジネスやゲームではなく 真の冒険の場として捉えており その純粋な 情熱こそが 多くの視聴者を惹きつける鍵となります。彼の行動原理は 常識や効率ではなく 自身が愛する物語の中の英雄像です。


ヒロインの姫宮彩美 は 龍人の暴走を止めつつも 彼の夢を誰よりも信じている幼馴染です。彼女が物語にどのように関わり 龍人の配信スタイルにどのような影響を与えるのかも 見どころの一つです。


序章では 龍人が探索者としての一歩を踏み出しましたが 現実のダンジョン攻略の厳しさと 既に確立された配信者たちの存在に直面しました。今後は 独自の視点や攻略法を確立し 視聴者の獲得 そしてトップランカーたちとの競争を通じて 龍人が自身の 伝説 を作り上げていく過程を描いていきます。


次章より 本格的に 門田龍人によるダンジョン攻略と配信戦争が幕を開けます。ご期待ください。

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