第70話 全部奪われてしまいましたわねぇ
「レイライト、あちらの方をご覧なさいな」
「何を––––っ!?」
わたくしが指した方向を見て驚愕するレイライト。
そこには既に『アビス・スパイラル』の精鋭を討伐し終えたグラントお父様を始めとするバレスチカ家四天王(ロゼ含む)、おまけに腰を抜かしてアクアルお姉様に支えられているシャルロットがいましたわ。
わたくしが先程レイライトを倒しきれない事を分かっているにも関わらず【葬黒】を使ってまで地上に引き摺り下ろしたのも、全てはこの為ですの。
上空で戦っていたら彼らの顔なんて分かりませんものね。
「ほら、見てみなさい。あなたの後輩であるシャルロットのあの無様な姿を。あなたの恐ろしさのあまりに腰を抜かしてガタガタと震えていらっしゃるわ。実に可哀想だと思いませんこと?あなたを助けようとわざわざ学園から駆けつけたにも関わらず、強大な魔物をけしかけられて◯されかけたんですもの」
シャルロットが怯えているのはたぶん【葬黒】を使って自分の先輩をボコボコにするわたくしの姿を見ての事だと思いますけれど、当然そんな事を教えてやる義理はありませんわ。
「だ、だから何!後輩ちゃんなんて勝手にビビってればいいじゃない!」
思ったより過剰に反応してきましたわね。
レイライトは学園でシャルロットをハメようとした(◯的な意味ではありませんわ)とはいえ、目をかけてきた後輩から怯えられるのは結構クる物があるのかもしれませんわ。
もっとも、彼女を追い込む茶番劇の本番はここからなのですけれど。
「ご覧なさい。アクアルお姉様とグレンお兄様のあの不安げな表情を。わたくし達の戦いを見届ける為に来たのに危うくぶち◯されそうになったんですもの。レイライト、もはやあなたは彼らにとって妹ではない、もっと恐ろしい別の何かですわ」
「あ……ち、違うの!レイはそんなつもりじゃ……」
顔面蒼白になるレイライト。
わたくしがお父様達を連れて行くと言えば、戦いに妨害が入る事を嫌ったレイライトが彼らに魔物をけしかけてくる事は容易に想像つきましたわ。
ちなみにお姉様とお兄様のあの表情ですけれど、おそらくつい先程までぶっ倒れてたレイライトを心配してるだけだと思いますの。
もちろんそんな事は教えてやりませんわ。
「ご覧なさい、グラントお父様のあの蔑んだ表情を。あなたの事を心底軽蔑していらっしゃいますわ。もう二度とあなたの事をバレスチカ家の一員とは認めないでしょうね」
「あ、あぁ……」
己の行動がいかに浅はかであったか自覚して愕然とするレイライト。
彼女が家でお父様と話しているところは殆ど見た事はないですけれど、それでも当主に見限られるという事がどれだけ致命傷であるか想像するのは容易いでしょう。
なお実際にお父様がレイライトを見限る事はないでしょうし、そもそもあの人は元からあんな顔ですわ。
「この戦いが終わったらお父様達は真っ先にマリアお母様に今日の事を報告するでしょう。そうなったらあのお優しいお母様はあなたを受け入れてくださるのかしら?……もうお母様のお胸に甘えられないですわねぇ」
「やだ……やめてよぉ……」
レイライトはとうとう頭を抱えてベソを描き始めましたわ。
まぁ、彼女の気持ちは理解できますの。
わたくしも昔ロゼを椅子にしているところをお母様に見られて泣かれた時は、この世の終わりだと思いましたもの。
……ふぅ。
それにしてもやはり美少女の泣き顔は健康にいいですわね。
それがわたくしと同等の超絶美少女の物ともなれば格別ですわ。
「レイライト。あなたは前にわたくしに対して、『あなたを貶めて、今度こそあなたをレイの前に這いつくばらせてやる』と、そう言ってましたわよね?それが今ではどうですの?」
レイライトの泣き顔を見ていたら自然と口角が釣り上がってきましたわ。
せっかくですからこの美しいわたくしのとびっきりの笑顔を、あなたにプレゼントして差し上げますの。
「うふふ、せっかく手に入れた優しい家族も全部奪われてしまいましたわねぇ。お可哀想に」
「––––リリアーゼ」
『聖剣センチュリオン』を両手に持ち、わたくしの方へ向けてと突き出すレイライト。
「リリアーゼ・バレスチカぁっ!!!」
激昂し、怒りのまま練り上げた魔力を『聖剣センチュリオン』の切っ先に収束させる純白の少女。
バチバチと火花を放つその強大な光の魔力はあっという間に彼女の姿を覆い隠す程に巨大な物となり、その余波で放たれる風圧はもはや大嵐と呼ぶに近いレベルとなっていましたの。
ようやく来ましたわね。
レイライト最強の必殺技。
【星砕く砲撃】が。
「リリアーゼ。もうあなたに期待する事なんて何もない」
最強を自負するわたくしですけれど、唯一正攻法では勝てない相手がいましたわ。
それが彼女、わたくしと同等のスペックを持つ上に圧倒的に優位な光属性の魔力を操る少女。
レイライト・バレスチカ。
「あなたと話す事なんて、もうないの。その減らず口は黄泉の国で好きなだけ叩けばいい」
だから彼女がこうしてわたくしに殺意を抱く程に精神的にも肉体的にも追い詰め、全力の一撃を放たせる必要があった。
「聖王の力の前にひれ伏せっ!【星砕く砲撃】ァッ!!!」
ゴオオオオオッ!!!
凄まじい轟音を響かせながら迫りくる破壊光線。
その名の通り星を砕く、とまで言うのは流石に大袈裟でしょうけれど、それでも軽く一つの山ぐらいは消し飛ばせるであろう圧倒的質量。
放たれたそれをわたくしは––––
「甘いんですわよ!!!」
ザンッ!!!
収納鞄から取り出した黒い刀身の短剣、『影月』によって切り裂き、消滅させましたわ。
「は?」
わたくしを◯すつもりで放った一撃をあっさりと掻き消された事でレイライトは『聖剣センチュリオン』を前に突き出したまま呆然としていましたわ。
その顔に浮かぶのは全魔力を込めた必殺技を無効化された絶望か、それとも憎い相手とはいえ人を◯さずに済んだ事による安堵か。
まぁそんな事はどうでもいいですの。
『影月』。
この黒の刀身の短剣は『最果ての回廊』第14階層ボス、【処刑者キルリス】がドロップする金属を使って造られた、普段はロゼに持たせている二振りの魔剣なのですわ(第49話参照)。
わたくしが手にしているのはそのうちの一本。
そしてその効果は––––
『相手の魔法を斬る事で消滅させる』
「終幕ですわ」
「––––っ!?【障壁】!」
飛びかかるわたくしに対してレイライトは健気にも力を振り絞って薄い【障壁】を張りましたわ。
もちろん、そんな物でわたくしの行く手を阻むなんて不可能ですの。
「令嬢パンチ!!!」
『竜爪』を装備したわたくしの拳は【障壁】をやすやすと打ち砕き––––
そのままレイライトのお腹に突き刺さり、貫通しましたわ。
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ラスボス戦、決着!
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