第65話 先輩を助けたいのは私も同じですから!
△△(side:シャルロット)
類稀なる才覚と慈愛に満ちた高潔な精神を持って沢山の人々を救ってきた、私にとっては最も尊敬する聖女としての大先輩(年齢は同じだけど)であり、前世でプレイした乙女ゲーム『ふぉーゅん⭐︎みらくるっ!』ではラスボスを務めていた純白の少女。
聖王レイライト。
一週間前、リリ様が気絶した彼女をバレスチカ家へと連れ帰るのを見送った際、私は自分が何もできない事に無力感を感じながらも、どこか安堵していました。
もう誰も傷付かなくていいんだって。
1ヶ月程前に私がバレスチカ家の人達と話し合った事で知った、レイライト先輩が先代の枢機卿達によって◯的搾取されていたという悍ましい事実。
どうしてあれほどの功績を残してきた立派な方が……いえ、だからなのでしょうか。
レイライト先輩は平民として生まれ、アンサム伯爵家に引き取られて教育を受けてきた私とは違い、生まれた時から神殿というある種閉鎖的な環境で育ち、一般人とは隔絶した価値観を植え付けられてきました。
普通ならおかしいと気付くであろう事を、これも聖女として高みにのぼる為の試練だと騙されてきたんです。
そしてもう一つの不運。
彼女が枢機卿を殺害し、神殿を離れた後に起きた諸々の出来事のタイミングも良くありませんでした。
バレスチカ家当主であるグラント子爵が事件に関わった者達を族滅し、聖女に危害を加えるなと脅した事で残された神殿の人達はバレスチカ家を恐れ、当時聖女見習いであった私をまるでお姫様のように扱うようになったんです。
これをレイライト先輩が知ったのなら、そりゃあ私を憎むのも無理はないでしょう。
『なんであの子だけ大切にされてるの?』って。
原作で彼女がリリ様だけでなく、私の事も恨んでいたのにはこういう背景があったのです。
というか、この事に加えてレイライト先輩は前世の記憶を取り戻した私がゲームの知識を活かしたボス連続狩りを行っていたところまで見てるんですよね。
きっと自分が指導していた時、私が故意に手を抜いて負担を押し付けていたと考えているに違いありません。
それ込みで考えると彼女の私への恨みは原作の比ではないと言えます。
原作と違い、レイライト先輩が私に直接感情を怒りの方向へと誘導する魔法をかけてきた事にも納得です。
誰よりも多くの人々を救ってきたにも関わらず、尊厳を傷付けられ、本来憎みたくないであろう双子の片割れや一生懸命指導してきた後輩を憎まざるを得なくなっていた孤独な少女。
そんな彼女も本当の家族であるバレスチカ家の元に帰る事ができればきっと新しい人生を歩み始める事ができる筈だと、そう思ってたのに。
◇
「なんで私はここにいるんでしょう?」
現在私は馬車に揺られて高難度ダンジョン、『最果ての回廊』へと向かっていました。
『最果ての回廊』へ向かう理由なのですが、そこで待ち受けるレイライト先輩とリリ様が武力による喧嘩で決着を付ける為だそうです。
どうして一度捕えたにも関わらず結局戦うハメになってるんですかね?
ちなみに『最果ての回廊』に向かう馬車はもう一つあって、そちらの方にはリリ様とアクアル先輩の兄であるグレン先輩と、彼女達のお父様であるグラント子爵が乗っています。
「大丈夫?シャロちゃん。やっぱり緊張する?なんだったら今からでも戻ってもいいのよ?」
私の隣にいるウェーブのかかった長い黒髪に黒の瞳、胸元を開けた蒼色のドレスを身に纏うお胸の大きな美少女。
つい先日私の恋人になったアクアル先輩が私の背中をさすりつつ声をかけてきてくれました。
香水を使ってるのか、少し甘い香りが鼻腔をくすぐり、ちょっとドキドキしてしまいます。
「いえ、レイライト先輩を助けたいのは私も同じですから!」
雑念を振り払うように、少し力を込めて返答しました。
場合によっては私だって戦いに参加する事になるかもしれないんだし、気を抜かないようにしないと。
「うふふ、その意気ですわシャロ様」
私の発言に応えたのは制服風の黒のドレスに身を包む、艶のある長い黒髪にパッチリと開いた黒の瞳を持つ超絶美少女。
現実でも原作ゲームでも変わらず、やべー女第1位の座を独占しているリリ様です。
「戦いを終えたわたくし達が5体満足で帰れるかは優れた治癒魔法の使い手であるあなたにかかってますもの。レイライトを救う為にも是非協力してくださると嬉しいのですわ」
「リリ様……」
双子の片割れの無事を願うリリ様を見て私は不覚にもちょっとだけジーンときてしまいました。
彼女が浮かべている笑みがなんとなく『にちゃあ』ってしてるのがちょっと気にはなりますが。
「シャルロット様がいれば百人力ですね!あたしも白アーゼちゃ……レイライト様を救う為に全力で頑張ります!」
続いたのはロゼ色の髪と瞳に丈の短いスカートのメイド服を着た、私達より少しだけ背が低い美少女。
原作とは違ってバレスチカ家の養女となったロゼさんです。
基本的にリリ様以外には興味を示さない印象の彼女ですが、レイライト先輩がリリ様と双子の関係である事もあってか、彼女を救う事に強い使命感を持っているように感じました。
どうしてかほんのりと頬を赤らめているのが気にはなりますが。
「……まぁ、あの子を力尽くで制御できるのはあなた達だけだろうし、これも仕方ないのかもしれないわね」
レイライト先輩を救おうと意気込むリリ様とロゼさんを見て、何故か頬を引き攣らせているアクアル先輩。
目的地に着くまでの間、4人で現地での各々の行動方針を相談しつつ、2時間後に馬車は『最果ての回廊』に到着しました。
◇
もう一つの馬車で来ていたグレン先輩とグラント子爵と合流し、そこから少し歩いて辿り着いた『最果ての回廊』はまさに巨大な岩山と言った風体で中央部には入り口となるトンネルが開いていました。
今はバレスチカ家が貸し切りにしているとの事で冒険者達の姿はなく……というかレイライト先輩の姿も見えません。
えっと、まさかレイライト先輩はダンジョンの中で待ち構えているとかそういう訳じゃないですよね?
ちょっとだけ心配になったその時––––
ズガアアンッ!!!
突如、トンネルの入り口が大きな音を立てて消し飛びました。
岩山の一部が崩れた事でその周辺は砂埃が舞い、極端に視認性が悪くなっています。
砂埃が晴れて視界が晴れたその先にいたのは––––
「レイライト先輩……」
真っ白な長い髪に神秘的な赤の瞳、ホワイトロリータのドレスを身に纏う、リリ様によく似た顔立ちの超絶美少女。
そしてその後ろには––––
「何あれ……?」
レイライト先輩の後ろには無数の魔物達が控えていました。
いえ、別にそれ自体は驚くべき事じゃないんです。
レイライト先輩が魔法で魔物を操れる事は聞いていましたし、リリ様との決戦を邪魔される事を嫌って彼女が私達に魔物をけし掛けてくる事も予想はできていました。
問題はその質です。
魔物達はみな黒のオーラを纏う影のような姿をしており、その中にはバレスチカ家の人々によく似たシルエットを持つ物もいました。
アレは……クリア後の高難度戦闘コンテンツである『アビススパイラル』に出てくる魔物達です!
「行きなさい」
無表情のレイライト先輩がこちらを指差し、小さな声で呟くと同時––––強大な力を持つ魔物達がこちらに向けてなだれ込むように襲いかかってきました。
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ラスボスlv99&高難度コンテンツ精鋭vs大ボス悪役令嬢lv99&四天王(補欠含む)lv99&原作主人公lv99
もうちょい早く投稿できるようになりたいけど仕事忙しすぎて気力ががが
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