第64話 まな板に乗せられた魚のような物ですの
△△(side:リリアーゼ)
「どこに行こうとしてるんですの?」
レイライトをバレスチカ家に連行してから5日目。
時刻は深夜2時。
わたくしは塀を越えてここを出て行こうとする真っ白な少女の背に声を掛けましたわ。
バレスチカ家の門の前には一応門番を置いているとは言え、そもそも支えている使用人の人数もさほど多くはない現状。
大半の使用人が眠りについている間にこうして門を避けて直接塀を乗り越えていけば、誰にも悟られずに外に出る事が可能なのですわ。
まぁ、常時戦場思考のグラントお父様辺りは敢えてレイライトの好きにさせる為、彼女が出て行こうとするのをわざと見逃した可能性もありますけれど。
わたくしに呼び止められたレイライトはゆらりと背を翻すと、生意気にもこのわたくしをキッ、と睨みつけてきやがりましたの。
うふふ、つい先日までわたくしとまともに目をあわす事すらできなかったのにいじらしいですわね。
その健気でささやかな反抗心に、わたくしは肌が冷える深夜だというにも関わらずムラムラしてきましたわ。
「仕切り直すのよ。ここにこのまま居て、あなたの顔を見ていたらどんどんおかしくなる。レイはリリアーゼなんかに負けてないし絆されてもいない。もう一度やり直して、あなたを貶めて、今度こそあなたをレイの前に這いつくばらせてやる」
「ぷっ……!」
「何がおかしいの!?」
つい吹き出してしまったわたくしに対し、プルプルと震えながら激昂するレイライト。
うふふ、必死に反抗心を揺り起こして、なんとか敵対の意思を示して、実に可愛らしいですわね。
今のあなたなど、もはやまな板に乗せられた魚のような物ですの。
これもわたくしが数日かけて調教してきた成果が出てきたという物ですわ。
「いいえ、何も?……それで、あなたはここを離れてどこに行くんですの?もしかしてまた学園の屋上で野宿でもするおつもり?」
「そ、それは……」
わたくしに今後の身の振り方を問い詰められて、明らかに狼狽するレイライト。
できませんわよねぇ?
この数日間、あなたは美味しい食事に質の良い睡眠、そして優しいマリアお母様にベッタリで過ごしてきましたもの。
大切に飼われてきたペットが今更野生に戻るなんて不可能なのですわ!
「わたくしと賭けをしなさいな、レイライト」
そう言いつつ、わたくしはレイライトの下へと歩みを進めましたわ。
レイライトは側に近寄ってきたわたくしから遠ざかるように一歩下がりましたけれど、構わず距離を詰めてやりますの。
「賭けって何よ」
わたくしを睨みつけようとするも、頬を赤く染めて目を逸らしてしまうレイライト。
しっかり調教が効いてますわね。
自分でも気付いていないようですけれど、あなた素質ありますわよ?
「1年程前にあなたがわたくし達に対してボスをけしかけてきやがりました(第20話参照)あのダンジョン、『最果ての回廊』があったでしょう?あそこなんですけれど、今はわたくし達バレスチカ家が貸し切りにしてますの」
実はこうなる事を見越して、わたくしはお父様伝いにアーサー陛下に『最果ての回廊』の管理権を一時的に譲渡してもらうよう脅––––お願いしていたのですわ。
「あそこなら邪魔は入りませんの。わたくしとあなた、正々堂々と戦闘で決着を付けるのですわ。賭けの内容は負けた方が勝った方に従う、子供でも分かるシンプルな物ですの。この数日間、お母様のお胸にしがみついて甘えてきたお子ちゃまのレイライトでも理解しやすいでしょう?」
「っ!?バカにして!」
わたくしの挑発にその可愛らしい顔を憤怒の表情に歪めて、まんまと乗ってきましたわね。
わたくしも屋敷に戻ったら早くお母様のお胸に飛び込んでおぎゃりたいのですわ。
「ギャラリーも必要ですわね。お母様は流石に危険だから除外するにしても、お父様にお兄様にお姉様、そしてロゼ。ついでにあなたの後輩であるシャルロットにもあなたが無様にわたくしに負けて、◯奴隷に堕ちるところを見せつけてやるのですわ」
「〜〜ッ!!?」
ずっと憎んできたわたくしにおちょくられたのがよほど悔しかったのか、レイライトが地団駄を踏み始めましたわね。
力加減ができないのか地面にちょっと亀裂が入ってしまいましたし、屋敷が倒壊しても困るので駄々をこねるのはほどほどにして欲しいですの。
「リリアーゼ!レイはあなたの事、絶対に許さないよ!!あなたを倒して屋敷から追い出して!ママをレイだけのママにして!お姉ちゃんをレイだけのお姉ちゃんにして!メイドちゃんをレイだけのメイドちゃんにしてやる!!!」
真夜中にキャンキャンとうるせーですわね。
ま、作戦通りに事が進んでるから良しとしますの。
「勝負は明後日。1日時間を上げるから今のうちに準備しておきなさいな」
ちゅっ。
「なっ!?」
レイライトの腕を掴んで抱き寄せると、前より少しだけ肉のついた彼女の柔らかい頬に口付けしてやりましたわ。
ここに連れてくる際にやった百合乱暴の時のように唇を奪ってやる事も考えましたけれど、楽しみはあとにとっておきますの。
その方がわたくしのモチベも上がるという物ですわ。
「それではご機嫌よう」
踵を返して屋敷の方へと歩みを進めるわたくし。
うふふ、さっきから笑みが抑えきれませんの。
早くレイライトをぶち◯して、ロゼと一緒に3◯したいのですわ!
屋敷の扉を開ける直前に振り返ると、呆然としていたレイライトがハッと気付いたように身を翻して、塀を飛び越えて行くのが見えましたわ。
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効いてる効いてる(煽り)
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