第44話 お姉様令嬢の『あててんのよ』は破壊力がありすぎです
「えぇ、そうなんです。アクアル様はご入学されてから今までずっと全教科満点を維持されていて、一度たりとも首席の座を取り逃がした事がないんですよ。ですから第一学年首席のシャルロット様にはいらぬご心配かもしれませんが、もし授業で分かりにくいところがあればアクアル様を頼られる事をお勧めします」
「ずるずる……はぁ〜、やっぱりアクアル先輩は凄いんですねぇ」
「そ、そんな大した物じゃないわ。それにシャルロットちゃんならきっと自力で首席の座を維持できるわよ」
主にリーリス先輩から振られるお話に相槌を打ちながら食事を進めていきます。
豚骨ラーメン美味しい。
原作みたいにお弁当を作って持ってくる事も考えたけど、お金はアンサム家と神殿から経費が出るし、やっぱり楽できるところは楽したいですよね。
ちなみに他の方の食べているメニューについてですけど、アクアル先輩とリーリス先輩は白パンにコーンスープにサラダ、鮭のムニエルとスタンダードな洋食。
リリ様とロゼさんはラーメンを食べてる私が言うことじゃないかもしれませんが、キングダム王国は一応中世ヨーロッパ風の国だというのに何故か牛丼を食べてました。
特にリリ様は牛丼のトッピングに山盛りのチーズをかけていて、一般的なご令嬢が食べる食事とは一線を画しているように見えます。
それでいて大きめなスプーンを使い、品よく優雅に口に運んでおられるのだから美人は何をやっても様になるというやつなのかもしれません。
「はい、アクアル様は凄いんです!それにあたしがアーゼちゃんと一緒にダンジョンで修行してた時も、ずっと側で守ってくれましたし、とっても優しいんですよ!」
「もう、ロゼったら……。姉が妹を守るなんて当然の事じゃない」
「へぇ〜、姉妹仲がいいんですねぇ」
リーリス先輩に続き、アクアル先輩について言及するロゼさん。
彼女はリリ様と、あと方向性は違うけれど腹違いの姉であるマーズ様ぐらいにしか興味がないと思ってたから、なんだか意外です。
それにしても原作だとリリ様とアクアル先輩の関係は百合乱暴(控えめな表現)されたってデマが学園で流れてた程度で実際はどんな物かよく分かってませんでしたが、一緒に修行した経験があるって事はかなり良好な仲のようですね。
ひょっとしてアクアル先輩と仲良くなればリリ様との仲を取り持ってたりしてくれるかもしれません。
私が情報を整理しつつそんな打算的な事を考えてると––––
バン!
突如、先程まで静かにしていたリリ様が不機嫌そうに机を叩き鳴らしました。
「まったく、じれったいですわね。わたくしがちょっとやらしい雰囲気にして差し上げますわ!」
???
やらしい雰囲気に……って唐突に何を言いだすのこの人?
「アーゼちゃん、もう少し段階を––––」
「シャロ様?」
止めようとしたロゼさんを無視して、私にどことなく人の悪そうな笑みを向けてくるリリ様。
なんでしょう?
ロクでもない事が起こる気しかしません。
「アクアルお姉様はあなたにほの字なのですわ。ですからもっとお姉様と仲良くして差し上げてくださいな?」
「ちょっとリリアーゼ!何を言ってるの!?」
え?……え?
アクアル先輩が私の事を?
そりゃ確かに原作では選択肢次第で先輩とデートする事もできましたけど!
「アクアルお姉様は毎晩あなたを想って致しているのですわ。学園でも屈指のモテ女であるお姉様から求められるなんて、シャロ様も隅におけないですわね」
「やめて!私はそんな事してるなんて言った事ないでしょ!」
「うふふ。でも致してはいるんでしょう?もっと素直になりなさいな、お姉様」
真っ赤になってしまったアクアル先輩を、リリ様はいい獲物を見つけたと言わんばかりに弄り倒します。
……ほんとにアクアル先輩は私の事が好きなの?
私が混乱してる間に、気付けば騒ぎを聞きつけた野次馬に周りを取り囲まれていました。
外野の生徒達は『あのアクアル様が新入生を?』『俺、生徒会長のファンだったのに』『でもお二人とも美女同士で大変お似合いですわ』と、好き勝手言って噂しています。
な、なんでリリ様との仲を深めようとしてただけなのに、こんな事に……。
「アクアル様、ここは覚悟を決めましょう!……大丈夫です。ただお友達になりましょう、とお伝えするだけのお話ですわ」
「リーリス……。分かったわ」
リーリス先輩の言葉を受けて、半泣きになりながらもアクアル先輩は私に向き直りました。
一方、私は心臓がバクバクしてまともに身動きができなくなっています。
「その……ね?私、シャルロットちゃんを一目見た時から可愛いなって、もっと親しくなりたいなって想ってたの。だから、まずはお友達になってくれたら嬉しいわ」
その綺麗な黒の瞳を潤ませ、声を震わせながらも、アクアル先輩は健気に私への想いを伝えてくれました。
ど、どうしよう!
いや、普通なら断る理由もないし、むしろアクアル先輩みたいな素敵な人とお友達になれるなんてとても光栄な事ではあるんだけど、これ実質愛の告白ですよね!?
私が好きなのはリリ様なんだから断らなくちゃ!
で、でもそんな事したらアクアル先輩が傷付いて……!
あぁどうすれば––––
「お姉様。何故手を抜いていらっしゃるの?」
私がどう返事を返すべきか迷っているその時、リリ様がつまらなさそうな目でアクアル先輩を見下しながら会話に割り込んできました。
この混乱の原因となった彼女ですが、ここから一体何をするというのでしょうか?
「うぅ……これ以上どうしろってのよ。私にはこれが精一杯––––」
「言った筈ですわ。お姉様はもっとご自身の武器を活かしてシャルロットに迫るべきだと。思い出しなさいな、あなたの一番の武器を」
「……!」
ハッとしたように瞳を見開くアクアル先輩。
一番の武器って?
「シャルロットちゃん」
アクアル先輩は両手で呆然とする私の右手を取ると––––
「私と友達になって!あなたに好きになってもらえるよう、いっぱい尽くすから!」
ご自身の大きなお胸に、私の掌を押し付けたんです!
「!?」
完全に不意をつかれた上に、掌から伝わる瑞々しい弾力性のある柔らかさに驚き、指が痙攣してつい彼女のお胸を揉みしだくような形になってしまいました。
「んんっ……!」
アクアル先輩の桜色の唇から漏れる、艶っぽい喘ぎ声。
沈み込む指の感触に頭がぼーっとして、何も考える事ができなくなっていきます。
「お願いっ!なんでもするからっ!!」
な、なんでも?
お友達になったらアクアル先輩がなんでもしてくれるの?
––––もはや、私に抗う術は残されていませんでした。
「はいぃ……アクアル先輩のお友達になりますぅ……」
へろへろになった私の返事を聞いて、『わっ』と沸き立つ周りの観客達。
おそらく嬉しさのあまり涙を流しているアクアル先輩に、それを笑顔で祝福するリーリス先輩とロゼさん。
そして『お姉様はわたくしが育てた』とでも言わんばかりの後方彼女面でうんうんと頷いているリリ様。
最後に掌から伝わる快楽に負けて、ぼんやりとその光景を眺めている私。
こうして私ことシャルロット・アンサムは入学2日目にして年上のお友達、もとい恋人候補ができたのでした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
リリアーゼは一応ちゃんとお姉様の幸せを願ってます。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
もし宜しければブックマーク、評価、レビュー、ご感想、リアクション等をして頂けると作者のやる気が爆上がりしますので、少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は宜しくお願い致します。




