第43話 学生のお昼休みは大切な時間なんです!
トレーの上に料理をのせて空いている席、というよりはおそらく攻略対象達の姿を探してうろついているであろうシャルロット。
どうせ好みの男(攻略対象)の吟味でもしているのでしょうけれど、残念ながらわたくしはあなたの思い通りにさせる気なんざ微塵もありませんの。
原作、『ふぉーちゅん⭐︎みらくるっ!』においてこの昼休憩は重要な意味を持つ時間なのですわ。
熾烈な席の取り合いが発生する食堂において、主人公であるシャルロットは攻略対象と相席して一緒に食事を取る事で好感度を稼ぎ、それぞれのルートに入る足掛かりとするのが基本中の基本。
ですけれど、これはゲームではなく現実。
心の底でどう思っているかはともかくとして、互いに愛称で呼び合う友人となったわたくしから一緒に昼食を取らないかと誘われたら?
果たしてあなたはそれを断ってまで、ロクに面識もない男共に相席をお願いするという非常識な行動が取れるのか、実に見ものですわね。
△△(side:シャルロット)
うーん、どうしよう。
トレーの上に昼食、好物の豚骨ラーメンをのせた私は目当ての人物がいる席を探してました。
前世の記憶にある原作ゲームでは昼休憩中に攻略対象の男性と相席する事で好感度を稼ぐのが常套手段でした。
ですが、私は攻略対象である三人の誰とも恋人関係になるつもりはありません。
もちろん彼らが素敵な人達である事は分かっているのですが、それでも––––
「やっぱり諦めたくないよ……」
前世の私が大ファンだった、大ボス悪役令嬢のリリ様。
実際にあった彼女は想像してたよりずっと美人で、華麗な方で、性格はちょっと……想像からかなりかけ離れたように感じたけれど、それでもお友達になる事はできました。
既にロゼさんと恋人になってたのは痛手だったけれど、それでもまだ可能性が潰えた訳じゃないと信じたい。
だからこそリリ様が座っているであろう席を探しているのですが。
「見つからないなぁ」
食堂のスペースにある席は基本的に4人用と6人用で、リリ様はたぶんロゼさん以外と相席する事なんてないだろうから、きっと4人用の席を使ってるはず。
だけど、4人用の席全てを確認してもリリ様の姿を見付ける事はできませんでした。
「……外で食べようかな」
戦闘要素に重きを置いている原作、『ふぉーみら』はクリアするのに攻略対象との好感度は必ずしも必須ではありません。
誰の好感度も上げたくない時は外にあるベンチで昼食を頂く事もできるのです。
もちろんここは現実なので、あとでトレーと食器を返しに来る必要はありますが。
仕方なく私が食堂を出ようとしたその時––––
「シャロ様?よろしければお昼をご一緒して頂けませんこと?」
食堂の一番奥にある窓際の、6人用の席。
そこからハッキリ通る綺麗な声で、意中の人物から名を呼ばれました。
◇
お呼ばれした席にはそれぞれ対面に2人ずつご令嬢達が座っていました。
片方にはリリ様とロゼさん。
そしてもう片方には––––
「初めまして、シャルロット様。わたくしは学園で生徒会副会長を務めているリーリス・ペンデュラムと申します。新しい聖女たる貴女に会えて光栄ですわ」
攻略対象の一人であるクラスト様の姉君で、ツーサイドアップに纏めた翡翠色の長い髪に同色の瞳、蒼色のドレスを身に纏う、大らかな雰囲気のリーリス先輩。
確かこの人はリリ様の事をかなり怖がっていた筈だけど、平気なんでしょうか?
「シャルロット・アンサムです。至らないところも多々あると思いますが、どうぞ宜しくお願いします」
とりあえず無難に挨拶を返しておきます。
私が学園に入学する前に既に聖女認定&Sランク冒険者の資格を得ているように、きっと他の方も何かしら原作とは違う要素があってもおかしくはないのでしょう。
そしてそれはリーリス先輩の隣にいる方に対しても言えます。
「シャルロットちゃん!」
そこには原作『ふぉーみら』においてリリ様との決戦前に戦う中ボスの役割を担う四天王(3人)、ウェーブのかかった長い黒髪に同色の瞳、大きく胸元を開けた蒼色のドレスを身に纏う、私よりお胸の大きな美少女、アクアル・バレスチカ先輩がいらっしゃいました。
原作だとアクアル先輩と交流できるのは学園に入学してからに限られますが、私は既にSランクへの昇格試験で彼女と出会っています。
「また会えて嬉しいわ。……ずっと、会いたかったの」
頬を染めて、どことなくうっとりとしたような表情のアクアル先輩。
なんだろう?
もともと綺麗な人ではあったけど、前に会った時よりどことなく大人びて見えて、なんだかドキドキします。
「ありがとうございます、アクアル先輩。私も先輩と再会できて嬉しいです」
「!?」
私が挨拶を返すとアクアル先輩は何故か大きなお胸を手で押さえて机の上に突っ伏してしまいました。
……体調が悪いんでしょうか?
こっそり【診察】を使って確認させてもらいましたが、少し体温が高めな程度でどこも異常はないようです。
病気とかではないみたいで良かった……。
とにかく私も席につかないと。
席はアクアル先輩とリリ様の隣が空いているけど、私とリリ様は一応愛称で呼び合う仲になった事ですし、それにロゼさんとの差を埋める為にもここはリリ様の隣に――
「あら?流石はシャロ様ですの。わたくしが太股担当に任命しただけの事はありますわね。己の役割を全うしようとするその姿勢にこのリリアーゼ、誠に感服致しましたわ!」
「ちょっと、アーゼちゃん!こんな場所で……ひゃんっ!?」
「え?……え?」
わたくしがリリ様の隣に座ろうとすると、彼女が隣にいるロゼさんの黒タイツに包まれた太股を撫でている姿が目に映りました。
人が沢山いるこの食堂で行われるその異常な光景に、私は目が点になってしまいます。
呆気にとられる私をよそに、リリ様は私に向けて意地の悪そうな顔をして手招きしました。
「さ、シャロ様もこちらにいらっしゃい?あなたは何といっても太股担当ですからね。ロゼの5割増し、いえ50割増しで可愛がってさしあげますわ」
……。
私、こんな場所でされちゃうの!?
しかも50割増しってロゼさんの6倍酷い事されるの!?
あまりの衝撃にどうすればいいか分からなくなって立ち尽くしていると、リーリス先輩が机に突っ伏しているアクアル先輩の耳元に口を近付けて、何かを囁いているのが見えました。
リーリス先輩の言葉を受けたアクアル先輩はバッ、と起き上がると何かを覚悟したかのような目で私を見つめます。
「シャルロットちゃん。もしよかったら私の隣に来てくれないかしら?久しぶりだし、あなたのお話を聞きたいわ」
突如、私を自分の隣に座るよう誘ってきたアクアル先輩。
なんだか少し緊張されてるみたいですけど、どうしたんでしょう?
……あ、そうか!
先輩はきっと私の事を助けようとしてくれてるんだ!
緊張されてるように見えるのは、妹であるリリ様と敵対する可能性を恐れての事なんですね!
思えばアクアル先輩は初めて会ったSランク試験の時も何かと私の事を気遣ってくれましたし、平時であればとてもお優しい人柄なんでしょう。
リリ様やロゼさんはもちろんですが、この優しい人が原作のように悲しい結末を辿らないよう頑張らないと!
「はい!喜んで!」
こうして私は決意も新たに、アクアル先輩のご好意に乗っかる形でリリ様の痴か––––魔の手から逃れる事に成功したのでした。
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アクアル>シャルロット>リリアーゼ(ここまでが大きめな部類)>リーリス(普通)>ロゼ(それなり)
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