第42話 姉の親友で兄の婚約者に手を出したら家庭崩壊まったなしですの
始業式が終わって学園での講義が始まる初日。
成績が特に優れた者達だけを集めた特Aクラスでの授業とはいえ、そもそも首席であるわたくしにとっては欠伸が出る程に簡単な座学でしたわ。
ロゼもわたくしが一年かけてセクハ––––指導した事もあって、ちゃんと内容を理解できているようですし、この分なら原作におけるわたくし達の破滅エンドを乗り越えた先にある、第2学年への進級の際も特Aクラスを維持する事は容易いですわね。
そして午前の講義が終わり、お昼休み––––
「リリアーゼ、ロゼ。こっちよ」
数多の生徒達でごった返す食堂、少し遠くから手を振ってわたくし達に声をかけてきたのはアクアルお姉様でしたわ。
生徒会長であるお姉様は熾烈な席争いが繰り広げられるこの食堂でもあらかじめ固定席を確保してもらえるという優遇措置がされており、彼女の妹であるわたくしとロゼもその恩恵に預かれるという訳ですの。
ちなみに原作のリリアーゼは適当に既に席を取っている生徒達に殺気を飛ばす事で追い払い、実質奪い取るという形をとってましたわ。
「お久しぶりです、リリアーゼちゃん。ロゼちゃん。ご入学おめでとうございます」
料理をのせたトレーを持ってお姉様が確保している席のところまで行くと、彼女の隣に座っているツーサイドアップに纏めた翡翠色の長い髪に同色の瞳、アクアルお姉様と似た色合いの暗めの蒼色のドレスに身を包んだ慎ましやかな雰囲気の美少女、リーリスお姉様が優雅に挨拶しながら迎えてくれましたわ。
「ご機嫌よう、リーリスお姉様」
「ご無沙汰してます、リーリス様」
「はい、ご機嫌よう。お二人とも、学園内で分からない事があったらなんでもお聞きくださいね。わたくしも微力ながらお力になれるよう努めますから」
淑女然とした立ち振る舞いでにこやかに微笑む彼女はまさに『令嬢』を体現したような方ですの。
リーリス・ペンデュラム。
原作ゲームである『ふぉーちゅん⭐︎みらくるっ!』においてはペンデュラム侯爵家のご令嬢で、攻略対象であるクラストの実の姉という立ち位置の人物になりますわね。
原作ではクラストルート以外ではほぼ関わる事のないキャラクターでしたけれど、わたくしの立場からすればアクアルお姉様の親友であり、グレンお兄様の婚約者でもある彼女はクラストなんかよりよほど関係性の深い人物だと言えますの。
だからこそ、原作で彼女とよい人間関係を築けなかったリリアーゼは自動的にクラストから敵視されてしまう事になったのですけれど。
あのメガネ(クラスト)は眼鏡をかけてるだけあってそれ相応に頭も回るらしく、卑劣かつ効果的な策を立ててシャルロットや他攻略対象と一緒にリリアーゼをハメた(性的な意味ではありませんわ)、実はそれなりに厄介なメガネなのですわ。
まぁ、今はあの出オチメガネの事はどうでもいいですの。
リーリスお姉様の話に戻りますわね。
リーリスお姉様は当時同学年首席で容姿も実力もズバ抜けていたアクアルお姉様にほの字で、アクアルお姉様が男女問わず恋人募集中だと名言した際に真っ先に告りにいった中々にアグレッシブなご令嬢でしたわ。
ちなみに想いを告げられたアクアルお姉様についてですけれど、ご令嬢としてはほぼ完璧なリーリスお姉様からの告白に三日三晩悩み、最終的には未来の出会いに賭ける事を決めて泣く泣く断ったそうですの。
とりあえずキープしておいて、なんなら両取りしてしまえばいいものをアクアルお姉様ったら真面目ですわね。
ですがそれでへこたれないのがリーリスお姉様でしたわ。
彼女は振られた後も疎遠になる事もなくアクアルお姉様に関わり続け、信用を勝ち取りついに親友の座に収まったのですわ。
現在では生徒会長たるアクアルお姉様の補佐たる生徒会副会長の立場にいる事から、まさにお姉様ガチ勢といったところですの。
で、もう一つのリーリスお姉様の立ち位置であるグレンお兄様の婚約者に収まった件についてですけれど、これはパートナーを探す目的で社交会に参加していたお兄様の事を心配したアクアルお姉様が、彼が変な女にひっかからないようリーリスお姉様に見守ってて欲しいと頼んだ事がキッカケですわね。
そして頼みを引き受けたリーリスお姉様はお兄様を一目見た瞬間恋に堕ち、全力で彼を口説き落として婚約者の立場を勝ち取ったという訳ですわ。
なんか完全にミイラ取りがミイラになってますわね。
とはいえリーリスお姉様がグレンお兄様に惚れたのも理解はできるのですわ。
わたくしの容姿や性格がどちらかと言えば、血も涙もないグラントお父様似なのに対し、アクアルお姉様とお兄様はあのお優しいマリアお母様似ですものね。
なのでわたくしがついマリアお母様の大きなお胸に飛び込みたくなるのと同じように、リーリスお姉様もあの二人に依存したくなってしまうのかもしれませんわ。
さて、ここから先は邂逅したわたくしがリーリスお姉様から怖がられたり、前世の記憶を取り戻してから彼女の信頼を取り戻すべく接待してちゃん付けで呼んでくれる程度には仲良くなったりと、それはもう色々ありましたけれど、全部説明するのは面倒なのでこの辺りで割愛させて頂きますわね。
「リーリス?あまりその子に優しくすると、自分に好意があると勘違いしだすからやめた方がいいわよ」
お優しいリーリスお姉様からのわたくし達への気遣いに、くっそ無礼な事を言い出すアクアルお姉様。
お姉様はわたくしの事を何だと思ってますの?
「なるほど、確かにその可能性は考慮しきれていませんでしたね。ありがとうございます、アクアル様」
リーリスお姉様?
「流石にわたくしもリリアーゼちゃんはちょっと……」
……。
いずれリーリスお姉様もわからせなければならない時がくるかもしれませんわね。
あぁ、でもリーリスお姉様に百合乱暴(控えめな表現)してしまうと、アクアルお姉様とグレンお兄様が敵に回って、最悪寝首をかかれかねないので泣き寝入りするしかないのですわ。
なんて可哀そうなわたくし。
「ところでリーリス様がこの場にいらっしゃるという事は、リーリス様もアクアル様の恋の応援をされるという事で宜しいのでしょうか?」
わたくしが哀しみにくれている間にロゼがリーリスお姉様に、彼女がここにいる理由を尋ねましたわ。
彼女からしてみればアクアルお姉様はグレンお兄様と同等、一緒にいた時間を考慮すればお兄様を上回るぐらいには好いていてもおかしくはないと思うのですけれど、何か企んでいるのかしら?
「もともとアクアル様とはいつも昼食を共にさせて頂いていましたけれど、もちろんアクアル様とシャルロット様との仲は応援させて頂くつもりですわ。自分の大切な方の幸せが、わたくしの幸せですから」
「リーリス……」
にっこりと微笑みながらおそらく本気でアクアルお姉様の幸せを願っているリーリスお姉様。
そんなリーリスお姉様のお言葉に感激するアクアルお姉様。
かーっ!
いい子ちゃんすぎてヘドが出ますの!
そういうのも嫌いじゃないですけれど!
わたくしだったらお姉様とシャルロットの仲が上手くいったら百合の間に入って両方美味しく頂きますし、上手くいかなかったら傷心のお姉様を適当に慰めて、その大きなお胸を美味しく頂いてるところですわ。
「リーリス様が協力してくれるなら万全ですね!あとはアーゼちゃんの作戦通りにすればきっと上手く行きますよ!」
「わーってますわよ」
ちょうどいいところに今回のターゲットがノコノコとやってきましたものね。
わたくし達が談笑を始めて数分後、食堂に入室してきたツーサイドアップに纏めた金髪に同色の瞳、修道服を学生服に仕立て直したような装いの絶世の美少女、シャルロット・アンサムが料理をのせたトレーを持ってうろうろとしながら空いてる席を探していたのですわ。
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サブキャラクター、リーリス・ペンデュラムイメージ(AI絵)です。
活動報告にちょっとした設定が載せてます。
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