第26話 自分の父がキ〇呼ばわりされるのは中々に効きますの
結局グラントお父様へのご挨拶はアクアルお姉様からの提案で、ダンジョンに修行に行っていたわたくし達3人だけでなく、グレンお兄様とマリアお母様もご一緒する事になりましたわ。
人数が増えたので面会は執務室ではなく食堂でお茶でもしばきながら行う事になりましたの。
わたくしとしてもそっちの方が肩肘張らなくて済むからよきですわね。
◇
部屋で少し休息をとった後で食堂に行く道すがらロゼとお姉様と合流、そのまま食堂に入室するとお兄様とお母様、そして黒髪黒目で髭を綺麗に切り揃えた軍服の上から黒のコートを羽織った偉丈夫、グラントお父様が家令のスバセが淹れたやっすい原価のコーヒーを啜ってましたわ。
わたくし達の入室に気付いたお父様は席を立つと大柄な体格に見合わぬ無駄のない動きでまっすぐこちらまでやってきましたの。
お父様はわたくしの父なだけあってかなりのイケオジですけれど、軍服を押し上げる程に盛られた筋肉と、お兄様の1.5倍はある肩幅、無愛想な目つきも相まって中々に迫力がありますわね。
「ご機嫌よう、お父様」
「久しぶりね、父さん」
「ご無沙汰してます、御当主様」
「うむ、3人とも見違えたな。それでこそ我がバレスチカ家の一員よ」
それぞれの挨拶に対して深く頷くお父様。
バレスチカ家至上主義、バレスチカファーストを信条としている彼にとって、こうしてダンジョンから帰還したわたくし達の成長をその目にするのが嬉しいのでしょう。
立ち振る舞いだけを見るなら立派な当主にしか見えないお父様ですけれど、実際には中々にやべーやつですの。
何せ原作ゲームの『ふぉーみら』において彼は投獄されたわたくしを救い出す際、自分が団長として手塩をかけて育ててきた騎士団員を全員、ついでに陛下を容赦なくぶち◯してますものね。
彼が四天王(3人)としてシャルロット達と相対した時の会話でのキレっぷりも相当アレで、ユーザーからはキチ親父と呼ばれてましたわ。
バレスチカファースト、ここに極まれりですの。
わたくしが原作でのお父様の事を回想してる間にお父様はお姉様と向き合ってましたわ。
何か仰りたい事でもあるのかしら。
「強くなったなアクアルよ。冒険者協会には我からSランク昇格試験への推薦状を出しておこう」
「私が父さんと同じSランクに……?」
「うむ。戦いの経験値さえ除けば今の貴様と我にさほど差はない。我の力を超えるのもそう時間はかからぬだろう。精進するがいい」
「私が父さんを……分かったわ。Sランクへの昇格試験、やってみる!」
感極まったように決意するお姉様。
今の話とは特に関係ありませんけれど、一人称が『我』って結構インパクトありますわよね。
「ロゼよ」
「は、はい!」
「地力を大きく上げたようだが、力に振り回されるようでは2流以下だ。それをゆめゆめ忘れるな」
「仰るとおりです、御当主様……」
続いてお父様はわたくしのロゼに話しかけたと思ったら、なんか彼女に対してくっそ偉そうにマウントをとってきやがりましたわ。
その切り揃えたお髭、一本一本引っこ抜いてやろうかしら?
「だがそれだけの地力があれば我らがバレスチカ家の一員を名乗るに相応しいとも言える。ロゼ、貴様には名誉バレスチカの称号をくれてやろう」
「……!?ありがとうございます、御当主様!」
「よく頑張ったわねぇ、ロゼちゃん」
お父様から直々にバレスチカ家の一員として認められた事で感情が昂り涙ぐむロゼ。
そんなロゼをお母様が優しく微笑みながら抱きしめましたわ。
ちなみにこの名誉バレスチカとやらについてですけれど、家族かそれに連なる者なら誰でもあっさり貰える割と超適当な称号ですの。
具体的にはマリアお母様はお父様と交際を始めた際に、リーリスお姉様(お兄様の婚約者でお姉様の親友)はお兄様との婚約が決まり、お父様と初顔合わせした際に貰ってますわ。
お母様とリーリスお姉様。
この二人は持ち合わせている武力などほぼ皆無で、つまりさきほどお父様が言ったロゼの地力云々はただの建前に過ぎませんの。
おそらく、ロゼがバレスチカ家の養女に決まった瞬間から彼女に名誉バレスチカ(笑)の称号を渡す事は決まっていた筈ですわ。
まぁわざわざ指摘するのも何ですし、口に出すのはやめておきますの。
だって、わたくし。
空気が読める淑女ですものね。
で、最後にお父様はわたくしの方へ視線を向けましたわ。
「リリアーゼ、貴様はこれまで通り好きにせよ」
「心得てますわ、お父様」
「うむ」
……。
『いや、終わりかい!』と普段のわたくし達を知らない方が見れば突っ込みたくなるかもしれませんけれど、わたくしとお父様の会話は大体いつもこんな感じですの。
力ある存在であるわたくしは何をしても許される、というよりわたくしを止められる存在はないのだから、全て自分の責任で行動しろと言うのがお父様の方針ですわ。
厳密に言えば王国騎士団長であるお父様本人だけはわたくしを止めるに値する力を持っていたものの、今回のダンジョン探索でわたくしの力が大きく増した事も相まってそれすら不可能になり、本当の意味でわたくしを止められるのはわたくしだけという事になった訳ですわね。
ま、前世の記憶を思い出したわたくしが原作ゲームのような迂闊な行動をする事はあり得ないので心配するだけ損な話ですわ。
◇
挨拶を終えたわたくしはそのまま席に座り、スバセが淹れてくれたコーヒーを啜りつつ、安物のスコーンをボリボリと頬張ってましたわ。
ダンジョンでかき集めたドロップ品を売って作った資産を提供したらお菓子のグレードも上がるのかしら?と一瞬考えたものの、たぶん食事内容は変わらずに備えに回されて終わりな気がしますわね。
なら自分で好きに使った方が有意義というものですわ。
「してアクアルよ。我に話したい事とはなんだ?」
一服して話を切り出すお父様。
そう言えばさっきお姉様は話があるとか言ってましたわね。
「えっと、それがね……」
話を振られたというのにお姉様は何故か言いづらそうにチラチラとお父様とお母様の様子を伺ってましたわ。
わたくしとしてはせっかく屋敷に帰ってきた事ですしロゼにセクハ––––ではなくフォーチュン学園の入試の勉学を仕込みたいところなので、さっさと終わらせて欲しいところですの。
そして、1分ほどまごついたお姉様がようやく口を開き––––
「ダンジョン内でレイライトと遭遇したの」
その瞬間、平和だったお茶の間が凍り付きましたわ。
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サブキャラクター、グラント・バレスチカのイメージ(AI絵)です。
活動報告にちょっとした設定が載せてます。
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