第17話 女主人公が負けると敵に◯されちゃう乙女ゲームって何ですの?
△△(side:リリアーゼ)
「はぁっ!」
気合いの入った掛け声と共に赤い表皮をした豚面の魔物、レッドオークの喉笛をロゼの装備したミスリル製の二刀短剣が引き裂きましたわ。
すると、きったない血反吐を撒き散らしたレッドオークはドロップ品である魔石を残して塵へと掻き消えていきましたの。
相手が消滅したのを確認したロゼは一呼吸してから構えを解きましたわ。
これで戦闘終了ですの。
「ロゼ、怪我はありませんこと?」
戦闘を終えたロゼに声を掛けましたわ。
ダンジョンに入って今日は二日目。
昨日で大量の魔力を身体に取り入れ、基礎能力があがったロゼですけれど、本人の希望もあって早速実戦での訓練をさせてますの。
「はい!ありがとうございます、アーゼちゃん、アクアル様。お二人のおかげで安心して戦えます!」
とは言っても今のように1対1の状況にでもならなければ流石に任せられませんわ。
なので魔物が複数出てきた場合はわたくしとお姉様で間引いてやってるわけですわね。
「ふん、あなたは鈍臭いのだからこのぐらいは接待してやらねーと見てられないのですわ」
「そう?昨日の今日にしてはいい動きしてると思うけど?さっきの豚の喉を掻っ捌いた時の思い切りも良かったし、敵に容赦がないのは好印象だわ」
ちょっと、わたくしが憎まれ口叩いた直後に素直に褒めてるんじゃねーですわよ、お姉様!
なんですの?
もしかしてほんとにロゼを狙ってるんですの!?
「あたしはその……早くアーゼちゃんの力になれるよう頑張りたいですから」
そう言ってロゼは照れたように頬をかきつつ、わたくしに媚びを売ってきましたわ。
かーっ、なんて卑しい女ですの!
わたくしはそういうの大好物ですからこれからは毎秒やりなさいな!
「なんだか暑くなってきたわ。……それにしても対内魔法だったかしら。公爵家も大きな魚を逃したものね」
パタパタと手で首元を扇ぎつつ、お姉様がロゼの常時使用している魔法、対内魔法について言及しましたわ。
対内魔法。
それは魔力を使って世界に干渉し、炎やら水やらを生み出す対外魔法の対となる魔法であり、その実態は身体の中で魔力を循環させ、その機能を飛躍的に上昇させる、そんな技術ですの。
簡単に言えば自己強化の魔法ですわ。
対内魔法は魔力がある者は皆、無意識のうちにそれを使っているのが普通でこれによって一見か弱い令嬢が筋骨隆々の大男を投げ飛ばす。
そういった事例も珍しくないのですわ。
ちなみに対内魔法、対外魔法は原作ゲームでは特に説明されていない概念ですわね。
レベルを上げる事をこの世界では魔物達の魔力を取り込むと表現してるのと同じで、なんでゲームの登場人物達はそんなに身体能力が高いのか、その理由付けのような物なのだと思いますわ。
で、話を少し戻すとロゼは対外魔法を使えず、代わりに対内魔法を非常に高い精度で使いこなせる体質なんですの。
その特徴は原作ゲームにも反映されていて、ロゼは時たま起きるリリアーゼとの半分お遊びのような戦闘において彼女と一緒に登場し、高い敏捷性で何度も行動順を自分に回しながら中々の攻撃力でひたすら通常攻撃してくるという、くっそ地味ながらも普通に強い戦術を使ってきますわ。
なのでプレイヤーはリリアーゼ戦で厄介なロゼを一番最初に排除しようと考えるのですけれど、残念な事にそれは開発者の仕組んだ罠。
ロゼを先に倒す(もちろん死んではいませんわ)とリリアーゼがキレて本気を出し、主人公であるシャルロットや攻略対象をガチでぶち◯しにきますの。
リリアーゼが本気を出してない時に負けても話は問題なく進みますけれど、本気を出した後に負けるとゲームオーバーになる事からおそらく本当にぶち◯されてると思いますわ。
まぁ、シャルロットに関してはぶち◯されるのではなく、ぶち◯されてる可能性の方が高い気もしますけれど。
というか実際、のちに発売された18禁版ではぶち◯されてましたわね。
乙女ゲームなのにディーエ◯サイトで2000円ぐらいで売ってそうな女主人公が負けると敵に◯されちゃうRPGばりのノリでリリアーゼに◯されるシャルロットが不憫でなりませんわ。
わたくしにとってはただの役得でしかないので望むところですけれど。
話が逸れましたわね。
とにかくリリアーゼ戦ではリリアーゼを集中攻撃して倒すのが鉄板。
リリアーゼを倒せばロゼは彼女からそうしろと言われているのか、勝手に降参するといった具合ですわ。
やり込み勢なんかはこの本気のリリアーゼを倒す事に意義を見出したりもしてましたけれど、大体はロゼとリリアーゼのHPを調整し、ロゼを倒してリリアーゼが本気を出した後、すぐさまリリアーゼを倒すという戦術が使われてましたわね。
わたくしからしてみれば、チャレンジャー気取りするならそんなせせこましい真似をせず、HPが万全な状態で本気を出したリリアーゼを倒してみろと思わなくもないですわ。
◇◇
日付が変わってダンジョンに入ってから3日目。
現在いる場所は第4階層、ボス部屋前。
2日目時点でロゼは最低限動けるようになったと判断できたので、レベル上げも次の段階に入ったという訳ですわ。
「ねぇ、リリアーゼ。本当にやるの?ここには兄さんも父さんもいないのよ?」
「くどいですわよ、お姉様。たかがボスの1匹や2匹。わたくし一人で充分ですわ」
いつもわたくしに対してくっそ生意気な口を叩いてくるアクアルお姉様が珍しく弱気になってますわね。
そんな彼女をわたくしは凛として一喝しましたわ。
まぁ、前にここのボスを倒した時はわたくし、グラントお父様、グレンお兄様、アクアルお姉様の4人パーティだったので不安に感じるのも分からなくもないですの。
とはいえ、この程度の障害ぐらいあっさり突破できないようであればロゼの、そしてわたくしの超強化などまた夢の夢。
「ロゼ、何があっても前に出てくるんじゃないですわよ?あなたはただ隅っこでガタガタ震えながら身を守ってればいいのですわ。……フリじゃありませんことよ?いいですわね、絶対に出てくるんじゃねぇですわよ!」
「は、はい!あたしはアーゼちゃんの勝利を信じて待ってます!」
ここで待たせておければそれが一番いいのですけれど、残念ながら魔物の魔力(経験値)を取り込むにはある程度近くにいないといけないので仕方なくロゼもボス部屋行きですわ。
とはいえこれで一番の不安要素への釘刺しも終わった事ですし、あとは獲物を粛々と刈り取るのみ。
わたくしは目の前の扉を開け放ち、すぐさま戦闘態勢に入りますの。
さぁ、ボス戦の開幕ですわ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここぞとばかりにエ〇シーンを突っ込まれる系原作主人公。
話だけ良く出てくるシャルロットは2章から登場の予定です。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
もし宜しければブックマーク、評価、レビュー、ご感想、リアクション等をして頂けると作者のやる気が爆上がりしますので、少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は宜しくお願い致します。




