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おれたちが通う高校は成績順に、AからEの5クラスに分けられる。
「タキは何組?」
「A」
「すっげ、頭いいんだな!」
「馬鹿にしてる?」
「なんでだよ⁉︎ 褒めてるのに!」
「その態度」
横目なのに視線が鋭すぎる。声色も相まって、うっかりしていたら切り裂かれそうだ。おまえの前世は鍛冶屋か。
「ええ〜、マジでそんなつもりないんだけどな」
「はいはい」
「お、わかってくれた⁉︎」
「だから」
「そんなところも好きって?」
「うざ」
「ええー、ツレな〜い」
クネクネ身を捩らせたらゴミを見る目をされた。うん、なかなか悪くない。
どこの学校も休み時間は短い。チャイムが鳴る前に教室へ戻ろうとするタキにおれはまとわりついていた。
「ちなみに、おれは何組に見える?」
「E」
「そんなに頭悪そうかな⁉︎」
「そうだけど?」
「今日イチの笑顔ッ!」
「それで?」
「それで?」
「ホントは何組なワケ?」
「ああ! ねえ何組に見え」
「もういい」
「食い気味! ごめんって!」
(必ずツッコんでくれるからボケやすいんだよな)
やり過ぎたら嫌われる。気をつけて加減しないといけない。
「おれはC組だよ」
「普通」
「いいことだろ⁉︎」
「どーだか」
そうこうするうち、別れるところまで来た。
「A組はあっちか。じゃあまた!」
「また?」
「次の休み時間、遊びに行くから!」
「来なくていい」
「ってことは、来てもいい☆」
「来るな」
タイミングよくチャイムが鳴り響く。
「あ、じゃあそういうことで」
「ちょっと!」
抗議を背中で聴き流し、おれは自分の教室へと急ぐ。無理やり約束を取り付けた。口は悪いが、本気でイヤがっている感じはしない。だからきっと大丈夫だろう。
(本気だったらかなりマズいけどな)
頭を振る。おれは自分のポジティブ思考を信じることにした。