オタクに優しいギャルが義理の姉になった!?
「ねえねえ来音、今からリップガーデンの新色買いに行かね?」
「駅前の店にちょっとだけ入荷してるらしいよ~」
「おっ、マジで!? 行く行くー。あれ超ーカワイイもんねー」
とある放課後。
昇降口を出たところで、二年の加藤来音先輩を中心としたギャルグループがたむろしていた。
今日の加藤先輩もギンギンに陽キャオーラが出ており、何とも眩しい。
加藤先輩は読モをしていて、何度も雑誌に載ったことのある超絶美人なので、うちの学校で知らない人はいない有名人だ。
だが、キラキラした金髪にピアスだらけの耳、そしてゴテゴテのネイルアートといった風貌は、俺みたいなオタクには二次元の人間にしか見えず、あまりリアリティがない。
まあ、俺と加藤先輩の人生が交わることなど生涯ないのだろうから、実質別次元の存在みたいなものなのだが。
ただ、加藤先輩が鞄に付けているボロボロの猫のキーホルダーだけは、華やかな加藤先輩のイメージとはギャップがあり、何とも浮いていた。
「フフ」
「……?」
その時だった。
加藤先輩が天使みたいな朗らかな笑みを、俺に向けてきた。
んん??
「ホラ来音、おいてくよー」
「あーん、待ってよー」
ギャルグループはワイワイ騒ぎながら、俺の視界から消えて行った。
な、何だったんだろう、今の……?
「あっ、緒多倉君、今帰り?」
その時だった。
クラスメイトで、俺の唯一のオタク友達である静川さんに声を掛けられた。
化粧っ気のない良い意味で素朴な顔立ちに、メガネに黒髪の三つ編みといった静川さんの容姿は、加藤先輩と違って、実に馴染み深い。
実家のような安心感。
「うん。静川さんも?」
「うん! ちょうど日直が終わって。……よ、よかったら、一緒に帰らない? 昨日の『きゅらどら!』の感想も語りたいし」
「ああ、いいね!」
『きゅらどら!』は、今期の覇権と言っても過言ではない、話題のアニメだからな。
吸血鬼の男の子と人間の女の子のラブコメというベタな設定だが、それだけに大手制作会社の手腕が遺憾なく発揮されている名作。
俺も誰かと、感想を語り合いたいと思っていたところだ。
「やった! やっぱり私、オープニングが神だと思うの!」
「ああ、サビで主人公とヒロインが二人で踊るのは王道だけど、こういうのでいいんだよってなるよね」
「それ!」
こんな感じで、俺の人生は平凡ながらもそれなりに楽しく、特にこれといった不満もないものだった。
「なあ正宗、大事な話があるんだが」
「え?」
その日の夜。
いつものように父さんと二人で晩御飯を食べていると、おもむろに父さんが神妙な顔になった。
これは――。
この時俺は、ある種の予感がした。
「うん、何?」
「……父さんな、再婚しようと思うんだ」
「……!」
……やっぱり。
「そっか。最近珍しくお洒落して出掛けることが多いから、怪しいなとは思ってたけど」
「ハハ、バレてたか」
「……おめでとう、父さん。俺は祝福するよ」
俺が十歳の時に母さんを病気で亡くして以来、ずっと男手一つで俺のことを育ててくれたもんな。
きっと天国で母さんも祝福してくれてることだろう。
「……ありがとう、正宗。というわけで、早速週末に相手のご家族と顔合わせしたいと思ってるんだが、正宗は予定空いてるか?」
「あ、うん、俺は大丈夫だけど」
「そうか、よかった」
顔合わせ、か……。
俺に、新しい家族が出来るのか。
これまた二次元の話みたいで、何とも実感が湧かないな。
そして迎えた週末。
広々とした料亭の個室で、俺は父さんの再婚相手の女性を、父さんから紹介された。
「正宗、こちらが加藤さんだ」
「はじめまして。孝治さんとお付き合いさせていただいてる、加藤千秋といいます」
「は、はじめまして。正宗です。父がいつもお世話になってます」
「うふふ、正宗君のことは、孝治さんからいつも伺ってるのよ」
「あ、そうですか」
父さんめ、余計なこと言ってないだろうな。
千秋さんは着物姿が実に様になっている、超絶美人だった。
こう言っては何だが俺に似て極めて平凡な(いや、俺が似てるんだが)父さんのどこに惚れたのか、甚だ疑問ではある。
ただ、千秋さんの顔、どこかで見たことがあるような?
「それにしてもあの子ったら、まだ着かないのかしら。くれぐれも時間通りには来なさいって言っておいたんですけど。いつまでも服選びが終わらないから、私だけ先に家を出たんです」
「ハハ、まあ年頃の女の子なんだから、そんなものじゃないかな」
そうなのだ。
千秋さんの連れ子は女の子らしいのだ。
しかも歳は俺の一個上らしい。
つまり俺に、義理の姉が出来るのである。
これまた二次元でしか聞いたことのない展開に、未だに現実感がない。
「いやー、遅れてマジすいません! 電車がメッチャ混んでて!」
「――!」
その時だった。
勢い良く襖を開けて、一人の若い女性が入って来た。
こ、この人は――!?
「もう、電車は混んでても時間通りに来るでしょ。あなたがもたもたしているから遅れたって、お二人にはバラしたわよ、来音」
「アハハ、勘弁してよママー。――あっ、君、アタシと同じ学校だよね!」
「あ…………はい」
それは他でもない、あの加藤来音先輩だった。
……マジかよ。
「こちらが娘の来音です。来音、こちらが緒多倉孝治さんと、正宗君よ」
「はじめまして、緒多倉孝治です。千秋さんにはいつもお世話になってます」
「あ、正宗、です」
どうしよう。
まだ頭が追いつかない。
まさか加藤先輩が、俺の姉になるなんて……。
「どうもー! どうかママのことよろしくね、パパ!」
「――! ハハ、ありがとう」
早速のパパ呼び!?
流石陽キャ……、距離の詰め方マッハだな。
お、俺も千秋さんのこと、母さんって呼んだほうがいいのかな……?
「まーくんもよろしく! アタシのことは、お姉ちゃんて呼んでいいからね!」
「っ!?」
加藤先輩が俺の右手を、両手で包み込むようにギュッと握ってきた。
ふおおおおおおお!?!?
何このラノベみたいな展開???
いきなり『まーくん』て呼んでるし……。
もしかして俺は、長い夢でも見ているのか……?
「まーくーん、入っていいー?」
「――!」
そして引っ越し当日。
新たに四人で暮らす新居に越して来た俺たちだが、俺が自分の部屋の整理を一通り終えたタイミングで、来音さんがノックしてきた。
「あ、はい、いいですけど」
「えへへ。おー、すごーい! まーくんの部屋、本がいっぱいだね!」
来音さんはタンクトップにホットパンツという、実に布面積の少ない格好をしていた。
来音さんの抜群なスタイルがこれでもかと強調されており、何とも目のやり場に困る。
これから毎日こういう生活が続くのかと思うと、俺のメンタルがもつか甚だ心配である。
「あ、あまり見ないでください……。恥ずかしいんで」
「えー、いいことじゃーん。アタシなんて、小説はほとんど読んだことないし。ファッション誌はいろいろ読んでるけどさ」
まあ、来音さんはそうですよね。
読モをやってるくらいですし。
それにしても、ギャルってオタクに対して偏見があるものだと思ってたけど、来音さんはそうでもないのかな?
オタクに優しいギャルって、二次元の中の存在じゃなかったのか……。
「ねえねえ、よかったらアタシでも読めそうな小説貸してくれない? まーくんオススメのやつ!」
「お、俺のですか?」
ううむ、これは難問だな。
ギャルゲーだったら、選択肢次第でルート分岐するやつだ。
果たしてどれが正解だ……?
初心者でも読みやすく、且つ楽しめるものといえば……。
――よし、やはりこれかな。
「では、これなんかどうでしょう。今アニメでやってるやつの、原作なんですけど」
俺は『きゅらどら!』の原作小説の一巻を差し出した。
『きゅらどら!』はポップな文体で話もわかりやすいし、それでいて確実に面白い名作。
ラブコメだったら女性でも楽しめるだろうしな。
「へー、そうなんだー! えへへ、ありがとね! 読んでみる!」
「――!」
来音さんは『きゅらどら!』を宝物みたいにギュッと抱きしめながら、ヒマワリみたいな笑顔を浮かべた。
――あれ!?
この瞬間、俺の心臓がトクンと一つ跳ねた。
な、何だ、今の……?
不整脈……?
「でも、前から言ってるけど、アタシのことはお姉ちゃんて呼んでってばー。あと、敬語もやめてほしいなー。アタシたちは、もう姉弟なんだからさ!」
「――!?」
来音さんが、鼻と鼻がつきそうなくらい距離を詰めてきた。
ふおっ!?
陽キャにはパーソナルスペースという概念がないのか!?
これだから陽キャはッ!
「あ…………はい。ぜ、善処、します」
「アハハ! まあいいけどね!」
来音さんは鼻歌交じりに部屋から出て行った。
これは……先が思いやられるな。
「まーくーん、一緒に学校行こ!」
「――!」
そして週明けの月曜日。
俺が玄関から出た直後、後ろから来音さんが物凄い速さで駆けて来て、俺の左腕に抱きついてきた。
ヌッ!?!?
お、俺の左腕に、異様にムニムニしたビーズクッションみたいな謎の物体が当たっている……!!!
「く、来音さん、マズいですよ!」
「えー? 何がマズいのー? アタシたちは姉弟なんだから、これくらい普通でしょ?」
そうかな????
姉弟って腕を組みながら登校するものなのかな????
「あっ、そーだ! そういえば『きゅらどら!』の一巻読んだよ! あれメッチャ面白いね! ヒロインの女の子超ーカワイイし! また二巻も貸してよ!」
「……! あ、はい、いいですけど」
おぉ……もう読んでくれたんですね。
「まさか校長の正体が『ブリーフ脱税仮面』だとは思わなかったわー! メッチャ笑ったよ! アハハ!」
「ああ、あれは衝撃でしたよね!」
くうぅ!
この自分が勧めた本の感想を聞ける喜びは堪らないな!
オタクをやってて、一番気持ちいい瞬間だよ!
――こうして俺と来音さんはゼロ距離で『きゅらどら!』の感想を語り合いながら、学校へと向かったのであった。
来音さんの鞄には、今日もボロボロの猫のキーホルダーが揺れていた。
「お、緒多倉、君……!?」
「――!」
が、校門の手前くらいまで来たところで、今日も偶然静川さんと出会った。
俺は毎日登校する時間はまちまちなのだが、何故かいつもこの辺で静川さんと会うのだ。
「あ、ああ、おはよう、静川さん」
だが、今日は来音さんに抱きつかれているので、何とも気まずい。
「んんー? この子、まーくんのお友達?」
「あ、はい、クラスメイトの静川さんです、来音さん」
「え? え? え?? まーくん?? 来音さん?? ど、どうして緒多倉君と、加藤先輩、が……???」
静川さんは頭に疑問符を65535個くらい浮かべている。
ああ、そっか。
「ごめん静川さん。そういえば言いそびれてたんだけど、実は俺の父親が最近再婚してさ。その再婚相手のお子さんが、来音さんだったんだよ」
「そうそう! つまりアタシはまーくんのお姉ちゃんってわけ! これからもうちのまーくんをよろしくね、静川ちゃん!」
「そ、そんな……!! つまり二人は一つ屋根の下で一緒に暮らしていて、うっかりお風呂を覗いちゃうイベントとか、緒多倉君が朝起きたら何故か隣に加藤先輩が寝てるイベントとかをこなしてる……ってコト!?」
「静川さん??」
流石にそんなベタなイベントは今のところ起きてないよ!?
ギャルゲーのやりすぎじゃない!?
これだからオタクは!
「アハハ! それ面白いね! 今度アタシもまーくんのお風呂覗いちゃおっかなー」
「来音さん!?」
俺が覗かれる側なんですか!?
それは流石に需要ないですよッ!
「あ……うぁ……あ……、脳が……脳が破壊されるうううううう!!!!」
「っ!? 静川さんッ!?」
静川さんは両手で頭を押さえながら、物凄い速さで駆けて行ってしまった。
えぇ……?
どうしちまったというんだ、静川さんは?
「アハハハハハ!! いやぁ、まーくんもなかなかに罪な男だねぇ」
「え?」
それは……どういう意味ですか、来音さん?
「まーくーん、一緒にお昼食べよー!」
「「「――!!」」」
そして迎えた昼休み。
来音さんが弁当箱を天高く掲げながら、俺の教室に入って来た。
お、おぉふ……、マジっすか……。
学校一の有名人である来音さんが名指しで俺のところに来たことで、俺と来音さんが姉弟になったことをまだ知らないクラスメイトたちは一斉にざわつき出し、「なんで加藤先輩が緒多倉と!?」とか、「まさかこの二人付き合ってる……!?」とか、「嘘だと言ってよバーニィ……」とか思い思いに呟きながら、俺のことをガン見してきた。
あーもう、こんなことなら、早めに俺たちが義理の姉弟になったことをみんなにも言っておけばよかった……。
「あれ? もしかしてまーくん、クラスのみんなにまだアタシたちのこと言ってないの? エヘヘ、最近アタシのママとまーくんのパパが再婚したから、アタシたちは姉弟になったんだよ! だからみんな、アタシの可愛い弟を、これからもよろしくねー」
「「「――!?!?」」」
来音さんがクラスメイトたちに、満面の笑みを振り撒きながらそう告げた。
か、可愛い弟、って……!
「う、うああああああああ!!!! 脳が……!!! 脳があああああああッッ!!!!!!」
「静川さんッ!?」
その時だった。
またしても静川さんが両手で頭を押さえながら、物凄い速さで教室から出て行ってしまった。
マジで今日の静川さんはどうしちゃったの???
「アハハ! 残念だったねぇ静川ちゃん。せめてあと一歩早ければねぇ」
「?」
来音さん?
どういう意味ですか、それ?
「あ、随分遅かったねぇ、まーくん」
「……!」
そしてその日の放課後。
昇降口を出たところで、来音さんが一人でポツンと立っていた。
いつものギャルグループは今日は一緒じゃないみたいだ。
「あ、はい、今日は委員会の集まりがあったもので」
「そっかそっかー、じゃあ帰ろっか!」
「っ!」
またしても来音さんは、俺の左腕に抱きついてビーズクッションを押し当ててきた。
も、もしかして来音さん、俺と一緒に帰るために、一人で待っててくれた、のか……?
くっ……!
「あの、来音さん……、言いづらいんですけど、そういうのは、やめたほうがいいと思いますよ」
「え? そういうのって?」
来音さんは本気でわかっていないのか、キョトンとした顔をしている。
そんな顔もまた可愛いのだから、タチが悪い。
俺の心臓がドクドクと早鐘を打っている。
「そうやってゼロ距離でベタベタしてくるのを、ですよ。いくら姉弟だからって、やっぱり普通はこんな風にはしないですよ。お、俺みたいな女性経験の浅い高校生男子は勘違いしそうになるんで、気を付けてください」
よし、言ってやったぞ!
これで少しは、来音さんもわかってくれるだろう。
「……うん、もちろんアタシだって、誰にでもこんなことするわけじゃないよ」
「…………え?」
く、来音さん……?
「ホント言うとね、アタシはずっと前から、まーくんのこと知ってたんだよ」
「――!」
なっ……!
そ、それって、どういう……。
「まーくんが入学して間もない頃さ、アタシが無くしたこのキーホルダー、拾ってくれたのまーくんだよね?」
「……あ」
来音さんは鞄に付けている、ボロボロの猫のキーホルダーを俺に見せてきた。
な、なんで……。
あれは俺がこの高校に入学してから、数日後のことだった。
放課後に昇降口を出たところで、リボンの色的に二年生と思われるギャルグループがたむろしており、何やら騒いでいた。
「マジどうしよ―!」
「ちゃんと探したの来音?」
「何度も探したよー! でもどこにもないんだよ―!」
どうやらギャルグループの会話から察するに、金髪の一際可愛い先輩が、猫のキーホルダーをどこかで無くしてしまったということらしい。
「どうしよう、あのキーホルダー、アタシのパパの形見なのに……」
……なっ!
もしかしてこの人も、親を亡くしてるのか……。
……くっ!
居ても立っても居られなくなった俺は、一人でコッソリ学校中を探し回った。
そして陽も沈みかけたギリギリのところで、中庭のベンチの下に落ちていたボロボロの猫のキーホルダーを見付けたのである。
だが、既に金髪の先輩は帰っていたらしく、学校にはいないようだった。
俺は職員室に行き、金髪の二年生で来音という名前の生徒がいないか先生に訊いてみた。
すると先生は、加藤来音という読モをやっている有名な生徒に違いないというので、俺は代わりにキーホルダーを渡してくれるようその先生に頼み、学校を後にしたのである。
「次の日先生からこのキーホルダーを渡されて、思わず泣きそうになったよ! もう絶対見付からないと思って、半ば諦めてたからさ……。だからその拾ってくれた人にどうしてもお礼がしたかったんだけど、その人は名前も告げずに帰っちゃったらしくて」
ああ、別に、お礼がほしくてやったわけじゃないですしね。
赤の他人が勝手にキーホルダー探してたって言ったら、ストーカーだと思われそうで怖かったし……。
「でもね、その時思い出したの! アタシが昇降口を出たとこでキーホルダーを無くしたことを嘆いてるのを、妙に真剣な顔で聞いてる一年生の男の子がいたことに」
「……!」
ま、まさか、見られてたとは……。
「だからもしかしてと思って、その男の子のこと、コッソリ調べちゃったんだ」
「えっ!?」
来音さんはテヘっと舌を出した。
い、今何気に、凄いこと言いませんでした……?
「緒多倉正宗くんていう名前も、その時知った。しかもその緒多倉くんも、子どもの頃にママを亡くしてるって聞いたんだ。その時確信したよ、やっぱりキーホルダーを探してくれたのは、緒多倉くんだって」
「……来音さん」
来音さんは沈み行く夕陽を真っ直ぐに見詰めている。
その横顔がまるで絵画みたいに綺麗で、思わず俺は見蕩れた。
「そしたら何と緒多倉くんのパパと、私のママが再婚するってことになってさ! これはもう運命だと思ったよ! だから新しい弟に少しでも可愛いと思ってもらえるように、顔合わせの日に着てく服メッチャ悩んでたら、遅刻しちゃって……」
「あ、あはは……」
あの顔合わせの日の遅刻は、そういう訳だったんですか。
「だからね! 私はお姉ちゃんとして、全力でまーくんのこと可愛がるって、もう決めたから!」
「――!」
来音さんは天使みたいな満面の笑みを、俺に向けてくれた。
嗚呼……。
「うん、ありがとう、お姉ちゃん」
「――!! い、今、まーくん、アタシのこと、お姉ちゃん、って!」
「…………あ」
や、やっべ。
感極まって、思わず……。
「あ、ああああああああああ!!!!!!!! 脳が……、脳が焼かれるううううううううッッッ!!!!!!!!!!」
「「っ!?!?」」
その時だった。
いつの間にか俺たちの真後ろにいた静川さんが、またしても両手で頭を押さえながら、物凄い速さでどこかへ行ってしまった。
し、静川さーーーん!?!?!?
「アハハハハハ! ゴメンねぇ静川ちゃん。こういうのは、早い者勝ちだからさ」
「??」
だから来音さん、それはどういう意味なんですか??
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