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不幸な観測者Sheet7:エピローグ

年が明け、1月半ばの水曜日。

チーム『エクセレンター』いつものメンバーが揃っていた。

川口からの招集…というと堅苦しいが、報告があるので育美と薔薇筆の都合が付けばとの話だ。


皆んなで乾杯を済ませた後で川口は切り出した。

「早速だけど、昨年末の忘年会での石森の話。後日談というか本人からは『ちゃんと片付いた』としか聞かされてないんで特に言える事はないんだけど…」

「えー、わざわざ集まったのにそれだけ?」

アキラが愚直るが自分の店に居る人間は"わざわざ集まった"ワケではないだろう。

「犯行の動機すら教えてもらえなかったんですか?」

薔薇筆が食い下がる。


「女性関係のトラブルらしいとしか。ホントにそれ以上詳しい事は聞かされていない。言えない事情は皆んな分かってるだろ?まぁそれでこれを預かってきた」

川口は胸の内ポケットから封筒を取り出した。

「御代官様、まさかそれは山吹色の…」

「アキラ、お主も相当のワルよのう…つうか食事券だけどな」

封筒から出されたそれは高級焼肉店のお食事券だった。

「ヤツからは念を押されたが、あくまでこれは忘年会に誘ってくれたお礼であって、捜査協力とか口止め料とかそういう類いのものじゃないって事だ。」


「要するに石森さんの自腹って事?えっ、ちょっとコレ何枚あるの、全部一万円の金券だよ!」

驚くアキラ。

「この店、ヤツの実家だから適当に工面してもらったんだろ。だから気兼ねせず四人一緒でもペアで半分ずつでもいいから好きに使ってくれ」

「え?四人って、グッさんは?」

アキラが券を数えながら聞く。

「俺はこないだこの券もらった時にたらふくご馳走になってるから大丈夫。」


「ありがとうグッさん。じゃあ、どうする育美さん?」

「一回じゃ使い切れないほどあるみたいですし、今度の休みに四人で行って残った券を分けましょうか。…ペアで」

最後は聞き取れないほど小さな声だった。


『エンター』からさほど遠くない、歩いても行ける距離にその高級焼肉店はある。

あまりに敷居が高く、来店は四人とも初めてだった。


「しかしエルフのエルさんが肉好きとは意外でしたね。てっきりベジタリアンだとばかり…」

薔薇筆が言う。アキラの聞き飽きた定番の流れだ。

エルもまたかと思いながら、お決まりの台詞を口にする。

「だいたいこの世界のファンタジーが変なんですよ。なんで肉食べない種族のくせに狩猟の弓が得意なんですか」

「それもそうですね。ちなみにエルさんも弓が得意です?」

あるある質問その二である。

「私はやった事ないです。ついでに先回りして言いますと、そこそこ畜産業も栄えてましたから狩猟で生計立ててる人はごくわずかでした」


「あの二人、何だかんだ楽しそうだな」

アキラが育美に囁く。

予約席は広めの掘りごたつ式の個室だったため、時おり合コンっぽいノリで席替えしてた。

今はエルと薔薇筆、アキラと育美という組み合わせで隣り合わせになっていた。

「妬けますか?」

育美が悪戯っぽく言う。

「ん?肉?追加で焼く?」

ボケるアキラ。

「違います」

「ごめん、分かってる。育美さんの方こそどうなの?エルに取られないって絶対の自信でもあるの?」

「うーん、どうでしょうか。ペンちゃんが浮気性かは知りませんけど…少なくともエルさんがアキラさん以外の人とどうにかなるのは想像出来ませんねぇ…」

「あー、そんなもんかな…俺やっぱ追加で肉焼くわ!」

アキラは照れ隠しなのか、せっせと肉を焼き始めた。

本人に自覚があるか定かでないが"バラ肉"だけは避けていた。


〈完〉

今回も最後までお読み下さりありがとうございました。

育美さん、フリーじゃなくなっちゃいましたね。

作者のフリック入力する指を払い除けての暴走ですw

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