不幸な観測者Sheet3:カミングアウト
「IoTドア、スマホや音声で施錠や解錠の出来るドアだったんじゃないですか?」
「えっと"バラフデ"さんでしたっけ。お察しの通りです。驚いたな…」
石森は言葉を失った。
「こりゃ、彼にメンバー加入を要請するしかねぇな。育美さん、勧誘してよ」
川口が薔薇筆と育美に向かって声を掛ける。
「僕は別に構いませんよ。というかこちらからお願いしたいくらいです。もし育ちゃんが嫌じゃなかったら…ですが」
薔薇筆が育美の方を伺う。
アキラと川口が顔を見合わせ、互いに口パクだけで(イクチャン)と繰り返した。
「私からもお願いします。ペンちゃ…彼をメンバーに加えてください」
育美は薔薇筆の普段呼びに釣られながら返事をした。
「あー、普段は"ペンちゃん"って呼んでるんだ」
川口のツッコミに顔を真っ赤にする育美。
「あのぅ…お話の途中でこんな事言うのも心苦しいんですが…」
育美が遠慮がちに切り出す。
薔薇筆の方にチラと目配せして、彼が頷くのを確認すると、
「実は私たちお付き合いしてます」
「うん、知ってる」
と、アキラ。
隣で何度も首を縦に振るエル。
「育美さんさぁ、俺が何で今日ゲスト連れて来る様にしたか分かってる?そろそろ報告あってもいいかなって思ったからだよ」
川口が言う。
隣で聞いてた石森は、
「事情はよく分かりませんが、なにはともあれおめでとうございます。急に川口から連絡あって、何で自分に今日声が掛かったのか不思議だったんですが合点がいきました。」
「育美さんだけゲスト連れて来るって変だからなぁ」
アキラが言う。
「えーっと、これもアレかな…"かませ犬"?」
エルが爆弾を投下した。
「!」
アキラと川口、そして育美の目が点になる。
石森は事情が掴めず呆然としている。
「すまん石森、説明は後でする。エルちゃん、この場合はかませ犬とはちょっと違うぞ。どっちかって言うと"あて馬"ってやつだな」
「グッさん、何ワケの分かんない事言ってんの!全然フォローになってないし!それとコレ"あて馬"であってんのか?」
アキラが慌てて口を挟む。
「石森さん、ホントごめんなさい。ウチらこうやってどんどん脱線しちゃうんで。お話の続きお願いします。グッさんもエルも口チャックな」
アキラが仕切る。
石森は苦笑いをしつつドリンクで口を湿らすと、咳払いを一つしてから語り始めた。