低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 88
「どうだ?え?」
足を棒にして一日歩き回って豊川警察署に与えられた部屋に戻るとそこには私服のランが一人で茶を啜っていた。
「餓鬼は帰る時間だぞ」
ロビーで二人して伸びていた要とアイシャ。要の皮肉にもまるで答えずランは平然として茶を飲み続ける。
「いいんですか?私達はほとんど捜査に専念している状態なんですが・・・」
「いいんだよ。05式のデータ収拾はアタシとシャムで大概のことが済むからな。ベルルカン大陸の状況も平穏無事。まあ何かあったらアタシが署長に掛け合って何をしている場面だろうが帰ってきてもらうだろうからな」
ランの言葉に頷きつつそのまま要は自分の席に戻った。
「ちゃんとデータ落としとけよ」
「西園寺に言われることは無いんだが」
皮肉を言う要を一瞥するとカウラは自分の端末を机の固定端末に接続してデータ移行を開始した。
「でも・・・かなり法術の存在は・・・」
「神前。言わなくても分かるってーの。あの事件以来この国に・・・いや、地球圏も含めて宇宙は猜疑心で一杯だ。あいつは俺の心を読めるんじゃないか、あの通行人はうちに火でもつけるんじゃないか。そんなありもしない疑惑で一杯だ。そこに今回の事件。悪意があれば何でもできる能力を保持した連中が悪意の赴くままに暴れているんだ。正直言い気分はしねーな」
そう言うとランは立ち上がる。襟巻きを強く巻きなおし、回りを見回す姿は誠にはどう見ても小学校低学年の姿にしか見えなかった。
「じゃあ、アタシは上がるわ」
「なんだよ・・・付き合い悪いじゃねえか」
「見たとおり餓鬼なんでね。8時も過ぎたら眠くて・・・」
要をからかうようにそう言うとそのまま立ち尽くしているラーナの脇を通り抜けていく。
「そうだ、カルビナ。茜が合格点だとさ」
「え・・・有難うございます!」
ランの捨て台詞に敬礼で答えるラーナ。誠も納得したように自分の席に戻った。




