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低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 73

 水島はしばらく震えが止まらなかった。すでに暗くなりかけた部屋の中。静かにうちから湧き出てくる笑みを我慢していた。


「そうだ・・・俺は神にもなれるかも知れないんだ・・・」 


 妄想が膨らみさらに笑みが広がるのを自分でも感じている。


 他者の能力が見え始めたのは偶然だった。三ヶ月前、何気なくタバコを咥えていた警備員の意識が自分に流れ込んできた瞬間を思い出す。他者の意識に触れた恐怖。思わず水島は警備員のパイロキネシス能力を使い、そのタバコに火をともしてみせた。


 驚いた表情の警備員と、突然の出来事にあっけに取られた自分。もしそれだけで終わっていればそのまま手にした民法の判例集を読むために実家に向かう道を急いでいたことろう。だが次の瞬間。街の人々のさまざまな意識が流れ込んできていた。


 敵意、憎悪、怒り、苛立ち。


 自分が失業をしてから感じていた感情のすべてが街に満ちていた。


『こんなに人は負の感情で動いているのか・・・』 


 ただ黙って歩いていてもその感情に飲み込まれそうになる自分。そしてその目の前を歩く少年の姿を見て水島は驚愕した。


 少年。八歳ぐらいだろうか。すでにどんな格好をしていたかは覚えていないが、その表情は妙に老成しているような印象を水島に与えた。


「じろじろ見るなよ・・・法術師が珍しいのか?」 


 明らかに自分に向けて投げられた言葉にしばらく水島は呆然と立ち尽くしていた。


「意識の覗き見なんてずいぶんと趣味が悪いじゃないか」 


 続けて少年から吐かれた言葉。今でもその時の衝撃は忘れていない。


 東都新開地西口。


 再開発のビルと雑居ビルが混じった混沌の街での二人の出会い。それを思い出すたびに水島の心は震えた。



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