低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 67
誠の言葉に一度ほくそえんだ要はそのまま自動ドアの前に立った。
『いらっしゃいませ!』
店内に声が響いた。店員達が一同に立ち上がり誠達に頭を下げている。民間企業での仕事の経験などは学生時代に工場で鉄板を並べていたくらいの誠には異様な光景に見えて思わず引く誠。
『あんなあ。その筋の絡んでる店ってのはみなこんなもんだぜ。妙に愛想が良くて・・・ああ、あそこを見な』
小声で要がつぶやくその視線の先には大きく張り出されたスローガンが長々と壁に張り出されていた。
「あの・・・」
入ってきた要の着ているのが東和警察の制服だったことに気づいた受付の女性が一番声がかけやすそうに見えたアイシャに語りかけてきた。誠も声をかけた小柄な長い髪の受付嬢の化粧が一般のOLのそれより明らかに濃いのが目に付いてなんとなく要の言いたいことが分かったと言うようにアイシャに目をやった。
「ああ、お仕事の邪魔かもしれないけど・・・ちょっとお話を聞きたいの」
明らかに回りに聞こえるような声でアイシャが口を開いた。その様子におどおどと受付の女性は背後の事務所を見る。そこにはどう見ても回りの緑の制服を着た事務員達とは毛色がまるで違う黒い背広の恰幅のいい男の姿があった。
『なるほど、その筋の人が経営しているんだ・・・』
男が仏頂面で立ち上がるのを見て誠も納得する。以前の誠ならその男の威嚇するような視線におびえて足が震え始めるところだったが、この男と同類の前副部隊長の明石が同じような格好をしていたのでとりあえず要達を盾にして後ろで男と目が合わないように天井を見上げる程度で落ち着くことができた。
「申し訳ありませんね。うちは・・・個人情報の遵守をモットーにしてますから・・・見てください」
男は受付にたどり着くと背後のついたてを指差した。不動産業の営業許可証の隣には個人情報保護基準達成の証書が飾られている。だが要はまるで臆することなく彼女が得意な腕っ節でなんとかなる相手に遭遇した時独特の笑みを顔に浮かべて受付に手を着いた。
「そりゃあ殊勝な心がけですねえ・・・まったく頭が下がる納税者さん。応援していますよ・・・納税者さん」
要が二回『納税者』という言葉を続けるとなぜか悪趣味な背広の男はこめかみに手をやって誠達を一人一人値踏みするような視線を向け始めた。




