低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 65
「ともかく例の不動産屋めぐりを始めねえとな。いつ人死にがでるかわからねえ」
要の言葉に誠達の顔に緊張が走った。法術関連の事件は誠がその存在を示して見せた半年前の『近藤事件』以来、増加の一途を辿っていた。好奇心で受けた法術適性検査で突然自分に力が宿っていることを告げられた人物が暴走する話はその手の話を一番知っている法術特捜の首席捜査官の茜から嫌と言うほど聞かされていた。
ほんのちょっとした好奇心でそれは始まる。それがいつの間にか人を傷つけるようになり、さらに重大な事件を起こすことになる。そんな典型的な法術関連事件。今回は趣が違うが確かにその様子を呈してきた。
カウラのスポーツカーに要に押し込まれて狭い後部座席に座らされてもその思いは誠を走り抜けていた。
「愉快犯ですかね」
誠の一言ににんまりと笑う要。そして次の瞬間誠の足は要のチタン合金の骨格を持った右足に踏みしめられた。
「痛いですよ!西園寺さん!」
「当たり前だ。痛くしてるんだからな」
要のそんな言葉に振り向いたアイシャが苦笑いを浮かべている。
「まだまだ小手調べ程度の気分だろ。この前の婆さんを標的にした時は珍しく空間制御で時間軸をいじると言う大技を使ったがまだ空間制御系の法術を借りて何かをするって所までは考え付いていないみたいだからな。アタシなら次は干渉空間展開能力のある奴を見つけて宝飾品店に忍び込んで・・・」
「ずいぶんリアルね。やる気?」
アイシャが茶々を入れたので身を乗り出そうとした要だが、カウラはうんざりしたと言うように車を急発進させた。
「おい!ベルガー!」
後頭部を座席にしたたかぶつけた要が叫ぶ。だがカウラは振り向くこともしない。
「お前さんがさっき作ってたハイキング表の通りに行くつもりだがいいか?」
「カウラちゃんはクールねえ。上官命令、それでいきましょう」
要は複雑な表情で頷く以外にすることは特になかった。




