低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 50
「手がかりは無し・・・まあ期待はしていなかったがな」
ハンガー奥の用具室の中。大鎧の盾を誠に外してもらいながらカウラがつぶやいた。節分の時代祭りでの武者行列。保安隊が設立されてから豊川市の時代行列の源平合戦武者行列は一気に歴史マニアに注目されるイベントになっていた。
基本的には士官は大鎧で馬に騎乗し、下士官以下は腹巻姿でそれに従う。
しかし、馬との相性が最悪のカウラは大鎧で一人歩いて行進していた。今日のグラウンド一周の練習の時も嵯峨の顔で借りた乗馬クラブの馬との相性の悪さを再確認させるだけだった。
「それにしても・・・アイシャ」
鎧の胴を外しながら要が大きくため息をつく。その目の前には他の隊員とはまるで違う鎧姿のアイシャがいた。
「なに?要ちゃん」
「その鎧やっぱおかしいだろ?おかしいと思わないのか?」
「いいじゃないの。これは私の私物なんだから」
そう言って鉄でできた胴を外すアイシャ。彼女だけは戦国末期の当世具足姿だった。剣術道場の息子で多少そういう知識もある誠も違和感を感じはするが、どうせアイシャに何を言っても無駄なのは分かっているのでただ黙ってカウラが鎧を脱ぐのを手伝っていた。
「そう言えばシャムは?」
要は床机に腰をかけて一月の寒さを身に受けながらも平然と扇を弄っている吉田に声をかけた。
「あいつか?馬の世話だよ。それにしてもなんだ・・・お前等の追っている事件」
「他人の能力で相撲を取る卑怯者のことだろ?何か知っているのか?」
そう要に言われるとむっとしたように吉田は扇子を叩いた。
「犯人の拠点が東都西部に移ったと読むべきか・・・たまたまこちらに来て悪戯の虫が騒いだのか・・・」
「吉田少佐。もしかして住民認定の記録を全部見たんですか?」
呆れたように口を挟んだ誠に頷く吉田。
「でもなあ・・・法術関係の資料は極秘扱いだ。俺でも簡単には開けない。そこで法術特捜の名前で捜査令状を・・・」
「無茶をおっしゃらないでいただけます?」
そこにはいつの間にか鎧兜の並んだ部屋にふさわしいような和服姿の茜が立っていた。




