低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 41
「で?なんでアタシがオメエの愚痴を聞かなきゃならねえんだ?」
誠達にとってそこはリラックスできる溜まり場だった。お好み焼きの店『あまさきや』。いつものように報告書の修正が終わるとランが誘って豊川市市街のこの店に立ち寄るのが定番となっていた。
「そんなことおっしゃっても・・・麗子さんの担当は要さんじゃないですか?」
「いつからアタシがあの馬鹿の世話係になったんだ?」
いつもならこういう席を避けて家に帰る茜がラーナを帰らせて誠達に付き合うと言い始めたところで誠も嫌な予感はした。茜は異常に酒が強かった。父親の嵯峨を考えてみると彼女がウワバミのように酒を飲むことは不思議には思えない。
だがそれが絡み酒になると分かっているから始末が悪い。しらふなら黙って済ましている和服の似合う美人で済むが、彼女の酔い方は独特でこの人を見つけると徹底的に絡みながら酒を際限なく同じペースで飲み続けるのだから最悪だった。
今日も早速遼州同盟司法局本部の調整担当官秘書の大河内麗子少佐への愚痴を要に向かってもう三十分も続けていた。
「彼女が語学が得意なのは分かりますよ。確かに胡州の高等予科学校から海軍大学校に直接入学なんて十年ぶりの快挙なのも分かっています。でも・・・」
「だからあいつはアタシの担当じゃないんだよ」
要は右ひじを握り締めながら体内プラントでアルコール分解ができるサイボーグの自分とほぼ同じペースでウォッカを飲み続ける茜に辟易していた。それもそのはず、そのウォッカは要のボトルキープしている酒である。茜はまるで意に介さずに次々と手酌で杯をあおる。
「いいんじゃないの。聞いてあげなさいよ。タコ中佐も困っているみたいだから解決したら何かおごってもらえるかも知れないわよ」
さっきから茜の酔い方が面白いので烏龍茶に切り替えて観察を続けているアイシャがつぶやく。タコ中佐ことランの先任に当たる実働部隊部隊長の明石清海中佐が調整担当官をしており、その秘書の麗子の傍若無人なお嬢様気質に時々泣き言を漏らすのを誠も聞いた事があった。
「仕方ねえじゃないか。司法局は人材的には隔離病棟扱いされてるからな。ああいうテストは得意だけど実際の運用はまるで駄目で口ばかり達者な人間も組織ってものにはいるんだよ」
そう言うと苦々しげに要はグラスを傾けた。




