低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 32
「グレゴリウスは熊だよ。漫画なんて読めるわけ無いじゃん」
馬鹿にした口調のシャム。時折こういうことを言われると温厚な誠もさすがにカチンと来る。
「じゃあどけてくださいよ。入れないじゃないですか」
「?」
文句を言った誠にしばらく呆然と視線を送るシャム。そしてワンテンポ遅れて納得したと言うように手を打つと手にしていた干し肉をグレゴリウスの口に投げ込んだ。グレゴリウスは器用にそれを口に咥えると本を放り出してそのまま自分の小屋がある車両置き場に向かって歩き始める。
「それ、プレゼントだから」
のろのろ着いていくシャムがそうつぶやく。隣の亀の亀吉もゆっくりとそれについていく。仕方が無くいかにも怪しげな半裸の美少年達が描かれた同人誌を手に取るとそのまま正面玄関から部隊の宿舎に入った。
「あれ・・・?あれ?」
そこで誠は大きなため息をついた。目の前には紺色の長い髪の少佐の勤務服を着た女性士官。一番この手の本を手にしている時に出会いたくない上官のアイシャ・クラウゼだった。
「それ・・・シャムちゃんの・・・もしかして使用済み?」
「使用って何に使うんですか!」
「だって冬なのにそんなに汗をかいて・・・」
「ランニングが終わったんです!」
「ふーん。つまらないの」
そう言うと誠から関心が無くなったというように振り向いて彼女の本来の職場である運行部の部屋の扉に手をかけた。
「ああ、そうだ。シャワー浴びてからでいいと思うんだけど・・・」
今度は打って変わった緊張したまなざしを誠に向けてくる。いつものこういう切り替えの早いアイシャには誠は振り回されてばかりだった。
「ええ・・・なんですか?」
そう言う誠が明らかに自分を恐れているように見えてアイシャは満面の笑みを浮かべた。




