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低殺傷火器(ローリーサルウェポン) 31

「なんだ?」 


 思わずつぶやいてしまった誠の目の前にはシャムが背を向けて立っていた。その手には茶色いものが握られている。そしてよく見るとその足元には冬の夕方の弱い光を全身に浴びようと言うように転寝をする大きなゾウガメの姿があった。


「ナンバルゲニア中尉!何をしているんですか?」 


 誠が声をかけるとシャムはめんどくさそうな表情で振り向く。そして彼女が玄関口に立つ大きな熊に何かを教えようとしていることが分かってきた。


「芸を仕込んでいるんですか?」 


 しばらくシャムの嫌な顔を無視して玄関に届いているほどの巨大なコンロンオオヒグマの子供のグレゴリウス13世に目を向けた。


 すぐにグレゴリウスが手に何かを持っているのが誠にも分かった。そしてそれがアイシャが原作を書きそれなりにネットで流通しているボーイズラブ小説をシャムが漫画化した本であることに気がついた。


「何やってるんですか?」 


 呆れながら真剣な表情の小さなシャムに目をやる。身長は140センチに届かない小柄な少女のように見えるシャムだが実際は誠よりもはるかに年上で遼南内戦ではエースとして活躍したシャム。彼女の凄みを利かせた目は最近では誠もその恐さが分かってきたところだった。


「誠ちゃんも・・・アイシャの小説読むでしょ?」 


 真剣な顔でつぶやくシャム。誠はいくつかの短編をアイシャに読まされた上に漫画を描かされたのを思い出して渋々頷いた。


「男の人が読むと・・・どんな感じ?」 


 シャムの目はじっとグレゴリウスに注がれている。シャムが大好きな彼だが当然文字が読めるわけでもなく、人が読むのをまねして本を開いて覗き込んでいるだけだった。


「それが知りたくてこうしてグレゴリウスに読ませているんですか?」


 投げやりにつぶやいた誠を見ると今度はいかにも軽蔑するような視線で誠を見つめてくるシャムがそこにいた。



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