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第6話 弟、破滅ルート決定のようです。 ※一部オリヴァー視点

 喧嘩しなくなったのはよかった。


 兄姉喧嘩の睨みだけで、みんなが逃げ出しそうなくらい物騒だった。


 この中で一番年上だった俺が怖くて震え上がるほどだ。


 ただ、この状況がわからない。


「ダミアンはなぜ本を読みにきたんだ?」


「私が読んであげようか?」


「イザベラはまだ難しい本は読めないだろ」


「兄様が読むよりは良いわよ。ダミアンの耳が悪くなったらどうするのよ」


 さっきからこんな感じで小さな声で言い合いをしている。


 俺には聞こえないように耳を押さえているが、さすがに隣で話していたら聞こえてくる。


 ただ、思ったよりも姉は俺のことが好きではないようだ。


 それだけでも幸いだった。


 これで嫌われていたら破滅フラグ一直線だったし、今のうちに性格を正せば、だいぶ顔がきつい美人で通るだろう。


「少し勉強でもしようと思ってね。あまり公爵家のことも知らないし、学園にも通うんだよね?」


 乙女ゲーム鉄板の学園について話を振ることにした。


 ここで何かしらの情報は得られるかもしれない。


「ダミアンは俺のことを心配しているのか?」


「さすがにそれはないですわ」


「はぁん?」


 相変わらず兄と姉は歪みあっている。


 仲が良いのか悪いのか全くわからない。


「兄しゃまの心配?」


「ああ、来年から俺は学園に行くからな」


 どうやら乙女ゲームの舞台である学園に、兄は来年から通うらしい。


 それなら話は早い。情報を先に入手しておけば、今後の助けにもなるはず。


 俺は兄に向かって可愛さ全開で上目遣いをする。


――必殺〝ゆるふわキュルルンビーム〟


「はぁー」


 やはりため息を吐いていた。


 吐きたいのかこっちだ。


 合計したら中身が30近くのおじさんが、幼い少年に〝ゆるふわキュルルンビーム〟とかふざけたことをやっているんだ。


 それにしてもまだまだ俺の可愛さが足りないのだろうか。


 何度も目をパチクリさせると、やっと諦めたのか話し出した。


「俺が行く貴族学校は王立ノクターン学園だ」


「ノクターン学園……」


 どこかで聞いたことある言葉を俺はすぐに思い出した。


――〝絶望のノクターン〟


 巷ではバットエンドばかりの視聴者参加型ゲームと言われて話題になっていた気がする。


 乙女ゲームをやったこともない俺でも、名前だけは知っているぐらい人気になっていた。


 本当にそこの世界であれば確実に破滅フラグを回収して、破滅ルートに向かうだろう。


 だって、姉の見た目がTHE悪役令嬢だぞ?


「兄しゃまはそこに行って何を学ぶの?」


「ああ、俺は貴族科だが基本的な教養と教育がメインかな」


「あとはダークウッド公爵家だから、拷問教育も必須になるわね」


 オリヴァーの言っていたことはすぐに理解できた。


 ただ、イザベラは何を言ってるんだ?


 学校で拷問を学ぶとか訳のわからないことを言っている。


 それに俺よりも一つ年上のイザベラからその言葉だけは聞きたくなかった。


「僕も学校に行ったら拷問教育を習うの?」


「んー、それはダミアンの好きにしたら良いかな? 俺としてはそれはそれでありだけどな」


 どこか嬉しそうな笑みを浮かべる兄を見て、若干……いや、かなーり引いた。


 この人もやはりダークウッド公爵家の長男だ。


 将来楽しんで拷問をしていそうだ。


「よかったら練習でもしてみるか?」


「あっ、そろそろ夕飯になりそうだね」


 このままでは変な方向に話が進みそうになったため、俺は急いで椅子から降りた。


「兄しゃまと姉様、また後で会いましょう」


 特に夕飯まで準備することは何もない。


 それに気づいた二人は俺を止めようとするが、素早く動いて行動すれば問題ない。


 俺は急いで足を動かした。


 だが、それが問題だった。


――ドン!


 足が絡まって扉に頭をぶつけてしまった。


「うっ……しちゅれいしましゅ!」


 俺は涙を堪えながら部屋を後にした。





「はぁー、あの可愛い生き物はなんだ」


「私に言われても知らないわよ。どうしてダミアンがダークウッド公爵家に生まれてきたのが不思議よ」


――優秀な拷問官(・・・)のダークウッド公爵家


 それがダークウッド公爵家だった。


 拷問教育は基本的に貴族が習わないといけない教育の一つでもある。


 そんな悪徳非道なことはしないと訴える貴族もいるが、犯罪者を捕まえたら誰が情報を引き出すと思っているんだ。


 ニコニコしていてもあいつら何も吐かない。


 だが、俺達がニコリと笑えば、大体の人達は情報を吐き出すからな。


 そんなダークウッド公爵家の子どもは、生まれつき引いてしまうような怖い顔で生まれてくる。


 俺なんか母を睨みながら生まれてきたらしいし、妹は泣くことも笑うこともなかった。


 今はあの時と比べて感情表現がわかりやすくなった。


 ダミアンはダークウッド公爵家の次男として生まれた末っ子だ。


 初めて見た瞬間に俺は弟であるダミアンに心臓を撃ち抜かれた。


 ダミアンという名前には〝征服〟という意味がある。


 ある意味俺達は征服されているだろう。


 あの顔でお願いされたら〝うん〟としか言わざる負えない。


 毎回大きく息を吐いて、顔を戻さないと緩みまくった俺達の顔はドラゴンよりも怖いと言われているからな。


 だからここ最近はダミアンの周囲で、大きなため息ばかり聞こえてくる。


「それで俺達は仲が悪かったのか?」


「何言ってるのよ? 私達はダミアンを守るために手を組んだ仲じゃないの」


「だよな」


 きっとダミアンは俺とイザベラの仲が悪いと思っているのだろう。


 まぁ、あれはあれで可愛いから問題ない。


 さっきも喧嘩しないように、あたふたしていたからな。


 イザベラもそのことに気づいて、わざと怒っている振りをしていたからな。


「そのためにあのひん曲がった王子と婚約することを受け入れたんですよ」


「あー、次期王も中々厄介な性格をしているからな」


「学園に行ったら私は婚約破棄をしてもらい、新たな婚約者を見つけてもらうわ」


 きっと殿下ならダミアンの可愛さに気づいたら、すぐに自分のものにしようとするだろう。


 それが王族の願いであれば、俺達は拒否することができない。


 だからイザベラは殿下の婚約者としての立場を利用することを選んだのだろう。


「それで殿下とのお茶会は――」


「あっ!?」


 きっとお茶会を忘れたのだろう。


 イザベラもたまに抜けているところがあるからな。


「殿下にダミアンを見られて、手を繋いでいたのを報告するの忘れていました」


「はあん!?」


「ヒィ!?」


 俺は驚いたあまり、つい威圧を放ってしまった。


 まだ抵抗する力がないイザベラはびっくりしていたが、これも教育のうちだろう。


 だって殿下にダミアンを知られたということは、抜けているでは済まされない。


 再び俺達はダミアンを守るために作戦を練ることにした。

「どっ……どうしたら破滅フラグが折れるんだ……」


 ゆるふわキュルルンのカシューナッツが助けを求めているようだ。


▶︎★★★★★評価をする

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「こっ……これは……!?」


 選択肢の投票が行われた。


「全てよろしくお願いします!」


 どうやら評価をすると破滅フラグが折れるようだ。


「BLフラグは……?」


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