メイリミテッド ~動画。撮影。簡素。質素。従順。見せていたものは白。終了~
メイドカフェと呼ぶ派と、メイド喫茶と呼ぶ派がいるでしょう。私はメイドカフェ派です。
あなたは動画を観ていた。
長い黒髪を二本の三つ編みにしたメイド服の少女が、映っている。撮影装置が下のほうにあるようで、視点は低めだった。
背筋を伸ばし、両手を正面で丁寧に重ね合わせた格好のメイドさん。白と黒の落ち着いた衣装で、黒いスカート部分の丈は長い。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
おとなしそうなメイドさんは、落ち着いた声でごあいさつをする。メイドカフェでご奉仕するには申し分のない容姿だったものの、撮影場所は彼女の自室のようにしか見えないのが残念でもあった。
この少女は少し間を空けてから、その場で深くお辞儀する。顔を上げた後、彼女はスカート部分をつまんで、たくし上げた。さらにたくし上げた。中に穿いていた白いドロワーズを画面内で晒してしまう。
彼女はスカートを持ち上げた状態で、撮影装置があると思われる場所に近づいて、ドロワーズを大きく映らせる。
ドロワーズの白い生地は膝の上までを覆っており、太ももを囲う裾は白いフリルで飾られている。左右の裾の外側、上部ゴム正面すぐ下には、それぞれ小さな白リボンがついていた。
あなたが眺める画面内では、メイドさんがずっとドロワーズをたくし上げる姿が続き、そのまま動画は終了した。
この短い動画は、特に撮影の技法が優れているわけでもなく、楽しいわけでもない。自分からスカートを持ち上げなさそうな少女が、大胆かつ繊細にドロワーズを視聴者に見せつけるだけ……なのだけれど、その様子がとても印象的に残った。
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数ヶ月が経った頃、あなたはメイドたくし上げ動画のことを思い出した。
タイトルなどの詳細は曖昧だったため、再び観ようと検索しても、見つからなかった。
探す時間だけで、あの動画時間よりも長くなってしまった。もしかしたら、削除されてしまったのかもしれない……と、あなたは思うようになる。
見つけられなかった残念さ。
手を尽くした後の、喪失感。
もっと観ておけば良かったと後悔し、負の感情が心の中を支配する。
ところで。
あなたは本当に動画を観ていた?
一番上へと文字列を遡れば、あなたはメイドさんのたくし上げを何度でも読むことが出来る。
この短編が消されなければ。
(了)
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。