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魔導具



「それじゃあ、エディオルさんが帰って来る前に私は帰るわね。リュウ、あなたは私と一緒に来てもらうわよ。拒否権はないからね?」


「ワカッテマスヨ」


と、ミヤさんとリュウは、ミヤさんが乗って来た馬車に乗って、王都のパルヴァン邸へと帰って行った。


そして、それとすれ違うように、ノアに乗ったディが帰って来た。


「あ、ディ。おかえりなさい。」


「今すれ違ったのは、ミヤ様か?」


「はい。それと、リュウも一緒です。」


「リュウも────あぁ、連れられて行ったんだな。」


ディも何かを察したようで、苦笑している。

それから、ノアに騎乗したまま


「まだ時間が早いな…ハル、久し振りに、ノアに乗るか?」


「え?でも…ディもノアも帰って来たばかりで疲れてるよね?」


ーすごく!すごく乗りたいけど!!ー


『ハル様、私は疲れてはいませんよ?これでも魔獣の端くれですからね。』


「俺も疲れていないし、ノアもこう言っているし…何より…ハル、目が…乗りたい!って言っているからな?」


「ゔっ────」


ーバレバレだなんて…恥ずかしい!!ー


「はいはい、恥ずかしがらなくていいから…ほら。」


ディはフワリと微笑むと私の方へと手をのばし、私はその手を取ってノアに騎乗した。











*パルヴァン辺境地にて(リュウ視点)*




「遅かったな?」


「すみません…ちょっと…ミヤ様に捕まってたので…」


「ミヤ様……なら、仕方無いな。兎に角、グレン様は執務室で待っている。付いて来い。」


ゼンにそう言われ、俺はゼンの後ろを付いて行った。









「やっぱり、魔力封じの類の物は、裏ではまだ残っているようだから、見つけ次第一つ一つ取り上げて行くしかない。その上で…問題も発生した。」


「問題?」


「我が国の隣の国─イーレン国の事はどれ位知っている?」


と、俺が問い掛けると、グレンが少し思案した後


「イーレンは確か…殆どの者が魔力を持っていないのではなかったか?」


「そう。魔力を持っているのは、人口の1割にも満たない。だから、魔力封じの魔導具自体持っていない─と言っていたんだけど…調べてみると、国が管理して持っていた三つの魔導具が失くなっていたんだ。そもそも、使う機会がないから、それがいつから失くなっていたのかさえ、分からないと。」


「見つけ次第潰す─事に変わりはない。」


ゼンが忌々しそうに呟く。

ハルが二度も喰らった魔導具だ。ゼンにとっては忌々しい物なんだろう。


「それで、その魔導具なんだけど、アレ、封じる事ができるのは一つだけと言う事が分かったんだ。んー…例えば、俺がその魔導具を着けられたとする。勿論、俺の魔力は奪われていく訳だけど、そのまま俺を助けようと、ゼンが俺に魔力を流すとすると──」


「俺がお前を助ける事は無いがな。」


ゼンがニッコリと微笑む。


「知ってる。分かってるから。例え話だから!それを言ってたら話が進まないから!兎に角、ゼンが俺に魔力を流したとする!でも、その魔導具は、俺の魔力しか吸収しないんだ。」


「なるほど。では、魔力封じを着けられても、応急処置として助ける事ができると言う事か。」


「そう。あくまでも応急処置だけどね。ただ…ハルは巻き込まれ体質だから、これから先、何も起こらない─って事が言えないだろう?」


「「………」」


俺が言うと、グレンもゼンも黙ったまま顔を引き攣らせた。


「何も起こらない事に越した事はないけど、俺の魔力をこの魔石に篭めてあるんだけど、これをいざと言う時に使えるようにハルに渡そうかなと思ってる。また…もしその魔導具のお世話になったら…取り敢えず、この魔石で一度だけ転移が出来るだけの魔力─魔法陣を組み込んである。」


「魔導具を使った相手から逃げる為─か?」


「そう。距離的には、ウォーランドの王都とパルヴァンの距離は問題無く転移できるから、その時に行きたい所には何処にでも行ける─逃げられると思う。」


パルヴァンはこの国の一番端の領地になる。その距離の移動が可能なだけの魔力を、毎日こつこつ溜めた。


ーハルなら、一瞬で溜められそうだよなー


と思いながら、俺はコツコツと少しずつ溜めていった。


「攻撃して相手を倒せても、この魔導具をすぐに外さなければ命取りになる。なら、確実に助かる方法として、ハルが信頼できる者の所へ転移した方が助かる確率がグンと上がるからな。」


「ふん─。クズにしては、ちゃんと考える事はできるんだな。」


なんて言いながら、ゼンは苦虫を噛み潰した様な顔をしている。本当に、ゼンはブレないよな…。


「魔導具に関しては、また何かあったら報告する。で、来月の視察では、このパルヴァンにもお世話になるから、宜しく頼みます。」


そして、俺は転移魔法陣を展開させ、隣国へと帰った。







*****



「リュウ様!」


隣国の王城内の執務室に戻り、少しだけ事務処理をしていると、一人の男がやって来た。


「サリスか、どうした?」


「来月の視察について確認しておきたい事があったので…」


「相変わらず仕事熱心だな。」


サリス─平民出身だが、そこそこの魔力を持ち武も学も優秀で、我が国の魔法省に勤めていて、俺の部下の一人である。勿論、来月のウォーランド王国への視察にも同行するメンバーの一人だ。


「私より働いているリュウ様に言われても、嫌味にしか聞こえませんよ。」


「本当に、お前はハッキリ言うな?ま、そこがお前の良いところだけどな。」


と、2人で笑ってから、視察の話をすすめた。



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