最終話
蒼の邸の裏庭の木陰で、セオドアとヴィオラとネロが昼寝をしている。
「この2人…本当に9歳と7歳か?寝顔は年相応だけど。」
「うん。セオは9歳だし、ヴィーは7歳で間違いないよ?リュウも知ってると思ってたけど…」
と、リュウの呟きにコテンと首を傾げるハル。
「あぁ、リュウもボケて来たのか?少し…早過ぎないか?」
そこに、俺に追撃を喰らわすエディオル。
ー本当に、エディオルはブレないよなぁー
「ボケてない。意味、分かってるだろう!?小学1年生と3年生の子供が、ここ迄魔力を上手く使える#事に感心してるだけだ!」
「あ、なる程。でも、それは、リュウの魔力の使い方の教え方が上手なんだと思うよ?ほら、私が記憶を失った時も、本当に分かりやすいな─って思ったから。」
と、ハルがニコニコと笑っている。
「そう言ってもらえると嬉しいけど……多分、ハルから受け継いだ魔力が、2人に馴染んでいるのも要因の一つだろうね。流石は、規格外な魔法使い様様だよ。」
「ふふっ。それが本当なら、チートに感謝だね?」
ハルが、本当に幸せそうに─穏やかに笑う。
その笑顔を見ると、俺も幸せな気持ちになる。
セオとヴィーも、本当に可愛い。甥や姪…孫の存在とは…こう言うモノなのか?と思う。
前世では結婚どころか彼女すらいなかった(今世もだけど)。
この世界で前世を思い出し、俺がした事は…本当に最低な事だった。そんな俺を赦してくれたハル。そのハルが幸せになった。本当に良かった──と、俺は寝ている3人の横に腰を下ろした。
「コトネ、今日もお疲れ様。」
「ディもお疲れ様でした。」
セオとヴィーが寝た後は、ディが夜勤以外の日は、ディの私室でお茶をする事がルーティンになっている。
「明日は王城に行くんだろう?一緒に行こう。」
「一緒に行けるのは嬉しいんですけど、時間は大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。王城に来るように誘って来たランバルトが、“家族4人一緒に登城して良い”と言って来たからな。」
「そうなんですね。ふふっ。セオとヴィーは、喜ぶだろうなぁ。」
明日の登城は、王太子様からのお誘いだった。
王太子様とミヤさんも予定通りに結婚して、ヴィーと同い年の双子の王子と王女がいるのだ。そして、有り難い?事に、その双子と我が子2人は幼馴染みである。あ、因みに、イリス様とベラ様にも子供が2人居て、セオとヴィーと同い年であり、こちらも幼馴染みだ。
その6人の子達が遊ぶ為?に、王太子様からお誘いを受けた─と言う訳である。
「────ヴィーを連れて行かないと駄目か?」
「ん?」
何故か、ディが唸る様に呟いた。
「えっと…連れて行ってあげないと、ヴィーは泣くかもしれないですよ?」
「─────分かっている。」
「??」
どうしたんだろう?と、ジッとディを見つめていると、軽く息を吐いた後困ったような顔をして
「──王子がな…ヴィーを狙っているだろう?」
「王子?狙って??」
ー王子とは─双子の兄のリオン様の事だよね?リオン様がヴィーを狙うって…何?ー
「“婚約者はヴィーが良い”─って、ランバルトとミヤ様に言っているらしい。」
「婚約者!?え?まだ7歳だよ!?」
「あぁ…コトネの世界では有り得ない事かもしれないが、この世界では割とよくある話なんだ。特に上位貴族ともなれば…な。」
「あ…そう言えば、ディ達に婚約者が居なかったのは…聖女様絡みでしたね。えー…7歳で?」
ー早過ぎるよね?出来れば…恋愛結婚をさせてあげたい!ー
ムウッ─と、知らず知らずに眉間に皺を寄せて考えていると
「まぁ…ミヤ様とコトネが居る限り、ランバルトも国王両陛下も無理強いはしないだろうけどね。」
そんな事をすればどうなるか……ランバルト自身が一番よく解っている筈だから──と言う事は、エディオルは言葉にはせず呑み込んだ。
「そう…ですね。ミヤさんが居る限りは大丈夫ですね。勿論、ヴィー本人がリオン様を選んだら、私も反対はしませんよ?」
「──くっ…ヴィーが選んだら…その時は俺も……いや、まだまだ早過ぎるだろう!!」
「ふふっ。ディ、それ…ただ単に娘を嫁に出したくない─だけだよね?」
「当たり前だろう?」
「ヴィーが選んだら…選んだ時は、ちゃんと送り出して下さいね?ふふっ。」
ー少し拗ねた?ディは可愛いなぁー
なんてフワフワ笑っていた自分を殴ってやりたいです。
「コトネ、余裕で笑っているな?俺は…傷付いたのに。」
「ふぁいっ!?」
私の耳元で静かに囁きニヤリと笑った─次の瞬間、お姫様抱っこされて、そのまま夫婦の部屋へと運ばれた。
子達を出産した後は、抱き潰されると言う事は無かったけど…。
「手加減できるかどうかは…分からないからな。」
と言われたのが最後。
久し振りに、最後の記憶が……
ーあ、窓の外…少し明るくないかなぁ?ー
だった。
翌日がどうなったかは……ご想像にお任せします。
ミヤさんがチクリとディに言ってくれたけど、ディはニコリと笑っただけだった──とだけ、言っておきます。
ー恥ずか死ねるよね!?ー
兎に角、聖女様達に巻き込まれただけのモブだと思っていた私─
それが、元の世界に還れなかった規格外な魔法使いになり──
実は、この世界の血を引き継いでいるモブで、私はこの世界で好きな人と結婚して愛しい子供が2人生まれた─
「「お母様!」」
今日も裏庭へと行くと、ネージュとネロと一緒に居るセロとヴィーが笑顔で私の方へと駆け寄って来る。二人を抱きとめて話をしていると
「ここに居たのか─」
「「お父様!」」
フワリと微笑むディが、ノアと一緒に帰って来た。
「ただいま─」
そう言いながら、ディは私の頬にキスをした後、セロとヴィーを抱きしめた。
ノアも、ネージュとネロにキスをする。
ー幸せだなぁー
これからも、この幸せが続きますように──
それだけが、私の願いだ─
リオン王子とヴィーがどうなったか?──は、また別の話である。
❋これにて、【モブ】シリーズは完結となります。最後迄読んでいただき、ありがとうございました❋
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