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かすみ草

「おはようございます。」


「ハル、おはよう。昨日はよく眠れたか?」


朝起きて、ディと一緒に食堂へと向かうと、お父さんが朝食の用意をしてくれていた。


「はい。グッスリ……寝落ちしたうえ、部屋まで運んでくれてありがとうございます!!」


「いや、ハルも色々あって疲れていたんだろう。仕方無い。」


そう言って、お父さんはいつものように私の頭を優しくポンポンと叩いた。






その日の午前中に、お兄さんは一足先に王都のパルヴァン邸へと帰って行き、私もお昼前にはディと王都へと帰る事にした。


「ハル、いつでもパルヴァン(こっち)に帰って来て良いからな?」


「はい。あの…一つだけ。お父さんの気持ちの整理がついたらで良いんだけど…。いつか…お母さん─ユイさんが姿を消したと言う場所に連れて行ってもらえますか?」


「分かった。ロンも連れて…3人で行こう。」


「はい。それじゃあ…王都に戻るね。お父さん、元気でね。」


私はディと一緒に魔法陣の中心に立ち、お父さんに手を振りながらパルヴァン邸を後にした。









久し振りに帰って来た蒼の邸では、皆が喜んで私を出迎えてくれました。皆に囲まれて話しをしているところに、ヘレナさんがバスケットを持って来て、それをディに手渡す。何だろう?と思って見ていると


「ハル、今日のランチは外に行くぞ。」


それだけ言うと、ディは右手にバスケットを持ち、左手で私の手を握った。そんな私達を、邸の皆は笑顔で送り出してくれた。







因みに、ノアにもお休みをあげたようで、ノアとネージュとネロはまだパルヴァンの森で過ごしている。なので、ディと私は手を繋いだまま歩いて──蒼の庭園迄やって来た。


「やっぱり青色のかすみ草は綺麗ですね!」


ーよく見れば見る程、ディと私の瞳の色にソックリだ─なんて、自惚れも甚だしいよね…ー


「気に入ってもらえて良かった。前にも言ったが…特別に植えてもらったんだ。俺とハルの色だ。」


「え!?ディと…私の色!?」


ーだから…瞳の色にソックリだったんだ!ー


「俺の青色はよくある色だから、直ぐにうまく咲いたんだけど、ハルの淡い水色はなかなか難しかったらしくて…なかなか思う様な色で咲かなかったんだ。それで、ようやくうまくいったと思ったら……ハルが記憶喪失になってたんだ。」


「ゔっ─すみません…」


「いや、ハルが謝る事じゃないから。それに……ハルが何度記憶を無くしても、俺に()()()だけだからな。」


ディが、未だに握っている手に力を入れる。


「何度ハルが記憶を無くしても、俺に恋をしてもらうから。俺は、ハルを逃さないから。ハルの瞳に、俺を映してもらうから。ハル、愛してる。」


ディは優しく微笑んだ後、私のおでこにキスをした。


「何度でも…って、そう何度も記憶喪失には…なりたくないですけどね?」


少しムウッ─としていると


「トラブル─巻き込まれ体質のハルが言ってもなぁ──くくっ…兎に角、ハルは、もう俺からは逃げられないと言う事だ。」


「ディ?私はディから逃げるつもりなんてないからね?私だって…ディの事─────好き……だからね?」


ディは、一瞬固まった後


「──くっそ!本当に無自覚は恐ろしいな!」


「ん?無自覚?」


ディは、手で口を覆って何かを呻いた。そのまま少し目を瞑った後、ふ───と長い息を吐いた。


「ハル、庭園のガゼボでランチをしよう。ヘレナが、サンドイッチを用意してくれたんだ。」


「はい!」


ー庭園でランチ!嬉しいです!ー








「あの…ディ?この格好だと食べにく──」

「食べ難くないから大丈夫だ。」


ーうん。そんな返しが来るって分かってました!ー


もう、ダメ元で言ってるだけなので、恥ずかしくても受け入れるしかないよね!?でも─これも、久し振りだけど。


はい。ガゼボにあるソファーにディが座り、そのディの足の間に私が座り、後ろから抱き込まれています。久し振りの格好だけど、何とも言えない安心感がある─とは言え、ランチを食べる時位は離れていた方が食べやすいのになぁ─何て思っていても、口には出しません。

それに、ディは足も手も長いからか、特に問題も無く自分でサンドイッチを手に取ってパクパクと食べている。


「あ、そう言えば…ディとクレイル様、王都の街でご令嬢達に囲まれてましたよね?アレ、私の噂?が原因ですか?」


記憶が戻った後、ルナさんとリディさんが私に関する状況を包み隠さず教えてくれた。


私が浮気してるやら、妊娠したやら、離婚の危機やら──


あまりにも突拍子の無い事で、私はショックを受けることもなく笑いそうになったけど…。でも、そんな噂でもディに与える影響は大きいのかも知れない─と思うと…。


「まぁ…な。あんな有り得ない噂を信じたバ─頭の弱い令嬢が、自信満々で近付いて来ていたな。あの日は、クレイルも一緒に居たから、余計に令嬢から絡まれる事になっていたんだ。」


「なるほど。クレイル様は独身だし、人当たりは良いですからね。」


「と言う事もあって、ここを出た後は、街で買い物をしたりしながら邸に帰るぞ。」


「ん?何で?」


「そのくだらない噂を消す為にだ。それに…美味しそうなケーキを見付けたから──」

「はい!買い物します!ケーキも食べます!」


と、私も喰い気味に返事をすると、ディがニッコリ笑って私にキスをした。





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