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再会①



ゆらゆらと動く体に、何となく─懐かしい?温もりが()()にあるのに、まぶたが重くて上げる事ができない。その代わりに、その温もりにスリッと頬を寄せてみると、今度は安心感が広がった。


ー私は、この温もりを…知っている?ー


安心するのに、キュッとした痛み?もあって…私はその温もりに手を伸ばしてギュッと握りしめた。









目が覚めると、自分の部屋のベッドの上だった。


「夢──だった?ん?」


フワリと香る、シトラス系の爽やかな香りに、また、胸がキュッと痛みを訴える。それから─


「かすみ草?」


ふと視界に入ったのは、水色のかすみ草だった。

昨日、私が寝る時にはなかった。それが、ベッドサイドのテーブルに飾られている。私の瞳の色によく似た色のかすみ草。

誰が飾ってくれたかは分からないけど嬉しくて、胸の痛みが薄らいで、自然と笑みが溢れた。










『ミヤさんが……王太子様と……!?』


これまた、驚きの事実を聞かされました。


ーいや、本当に驚きです!ー   


『婚約が成立したのは最近なんだけどね。』


ふふっ─と、ミヤさんは嬉しそうに笑う。


ーあれ?確か…日本に彼氏さんが…居たよね?ー


むうっ─と考えていると、ミヤさんが更に微笑んだ。


ーあ、コレは…訊いてはいけないヤツかな?ー


『えっと…そ…それで、その王太子様が…何故パルヴァン(ここ)に来るんですか?あ、婚約者のミヤさんに会いに来るんですか?』


『今回も非公式なんだけど、念の為に森を浄化する事になったから、それに同行する為に来る事になったのよ。そのついでに、ハルにも会ってもらおうかと思ってね。勿論、ハルが無理だと言うなら、無理強いはしないから。』


ーでも、相手は王太子様だよね?拒否権って…無いのでは?ー


『身分的な事を気にする必要は無いわよ?一応、王太子より…聖女である私の方が身分は上だから(おそらく、ランバルト様よりも私よりも、ハルの方が…ある意味強い立場に居るんだけどね─なんて、口に出して言わないけど)。』


と、ミヤさんは綺麗な笑顔をする。

背中がゾクゾクするのは…気のせいにしておきます。


『怖くない─とは言えないけど…大丈夫だと…思います。召喚された時と、謁見した時の印象しか無いんですけど…何となくですけど、以前程心が拒否反応?しないので…。記憶は無くても、身体?感覚?が“大丈夫”だった頃の事を覚えているかもしれませんね。』


嘘じゃない。以前なら、男の人だと思っただけでも体が緊張して固まり震え出していたのに、今では震える事がない。


『なら、一応、会う─と言う事で予定しておくけど、どうしても無理だと思ったら言ってちょうだいね?あ、そうだ、その時、ネージュかネロに、側に居てもらおうか?』


『あ、それ、とっても心強いですね!私からネージュにお願いしてみます!』


ーうん!ネージュとネロが居れば大丈夫な気がする!ー




“会う”と決めて、ミヤさんが王太子様に手紙を飛ばすと、ミヤさんによる浄化を1週間後に行う事が決まり、その2日前に王太子様がお忍びでパルヴァン辺境地へとやって来る事が決まった。










*浄化2日前*



「ランバルト様、いらっしゃいませ。」


「あぁ、ミヤ様…久し振りだな。元気そうで良かった。」


転移魔法陣を使ってやって来た王太子様は、私が記憶していた顔立ちよりも、更に大人の色気を含んだイケメンさんになっていた。


ー王太子様とミヤさんが並ぶと…物語に出て来そうな王子様とお姫様みたいだよねー


そんな2人を少し離れた場所から眺めていると


「あー…ハル殿も久し振り─と言いたいところだが…私の事は……」


王太子様はこの世界の言葉で話し掛けて来た。それでも、今日は私が作ったらしい翻訳機能付きのピアスを着けているから、何を喋っているのか、しっかり聞き取れた。


「えっと…すみません…。」


「違う、謝らなくて良い。その…ハル殿も元気になって良かった。遅くなってしまったが、パルヴァンの森を守ってくれてありがとう。」


「それも、記憶…ない…ですけどね。」


と、言うと王太子様も困った様な顔で笑った。

そんな王太子様とミヤさんの少し後ろには、もう一人男の人が立っていた。


ーあの人も…召喚された時と謁見した時に居た人だよね?ー


銀髪で長い髪を襟足で一つに束ねている。目は切れ長で、少し冷たい印象だった彼も、更にクール系の美男子になっていた。


そんな彼を何となく見ていると、ふいに視線が合った。

視線が合った瞬間、彼は驚いたように軽く目を見開いた。


ビクッ─と、自分の体が震えた事が分かり、手をギュッと握りしめていると、彼がフワリと優しく微笑んだ。


ーっ!?ー


「ハル!?どうしたの!?」


「え?」


何故か、ミヤさんが少し慌てながら私の方へとやって来る。


「どうしたの?何で…泣いてるの?」


「え?泣いて??」


ミヤさんに言われて、ようやく気が付いた。

本当に、何故だが分からない。分からないのに、私は涙を流していた。




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