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もう一度

「──なら、以前よりは…()()だな。」


「マシって…エディオル…」


ランバルトが困ったように声を掛ける。


「この6年の記憶が失くなったとしても、ハルは…ハルなんだろう?なら、俺がする事は一つしかないんだ。もう一度…ハルを俺に落とすだけだ。以前はマイナスから始まったが、今回は0スタートだ。それだけでも、以前よりもだいぶ()()だろう?」


「ふふっ。男前って、エディオルさんみたいな人の事を言うのね。それで…どうしたい?」


ミヤは分かっている─と言った風に、エディオルに尋ねる。


「俺と結婚してる─と言う事は…伏せて下さい。ハルは男性恐怖症だったから、結婚していた─なんて聞いたら…俺に気を使って我慢してしまうだろうから。代わりに、ハルと同郷のミヤ様の婚約者─王太子の近衛騎士として、ハルとの出会いの場を設けて下さい。お願いするのは……それだけです。後は…俺がしたい事をするだけです。」


「勿論だとも!必ず!必ず!!ハル殿とお前を会わせてやるからな!!王太子の権限を使ってでも!!」


と、ミヤの代わりにランバルトが泣きながら答えた。


「いやいや…ランバルト、ちょっと落ち着こうか?心にきた良い話が、ランバルトの涙で全部吹き飛んだよ?」


と、やれやれ─と言った風に言うクレイル自身も、少し目がうるっとしている。


「それじゃあ……結婚している事は伏せておくとして…ゼンさんとの養子縁組の事は伝えても良いですね?」


「それは、私としては問題ありませんが…ハル自身が私よりグレン様の方が…気を許しているような気がするのですが…。」


「あぁ…それね。ハルが誘拐?されそうになった時に、助けてくれた人が居たって言ってたでしょう?その助けてくれた人が…グレン様並の…恐い顔をした人だったのよ。だからか、恐い顔の人の方が…安心するみたいなのよ。ほら、ゼンさんは……普通にイケオジだからね。」


「それは…喜ぶべきなのか悲しむべきなのか…微妙なところ…ですね。」


ははっ─と、ゼンは乾いた笑いを溢した。


「リュウ、あなたは日本語が喋れる魔法使いよね?」


「ハイ」


「暫くの間、ハルに魔法についての指導をして欲しいの。今のハルは、まだ魔力をうまく使いこなせていないらしいから。それと、この世界の言葉も理解できてないのよ。6年前も、ハルは理解できなくて…自力で頑張って理解できるようになったのよ。」


「それは、勿論やらせてもらいますよ。ハルにはまた…助けられたし……。きっと、ウチの国王陛下も今回もNOとは言わないだろうしね。寧ろ、そのまま帰って来るな!って怒られそうだしね。ところで…ネージュはどうした?あの日から、姿を見ていないと思うんだけど…」


「その事に関しては俺から─」


と、ティモスが椅子から立ち上がった。



サリスに操られて森を焼き払いそうになった時、光がネージュを包み込んだと思ったら、ネージュの姿が消えていた。

何処に行ったのか?と思ったら


「ネロとノアが言うには、以前ネージュ殿が眠りに就いていた大樹で、また眠りに就いているようです。魔力の乱れ等もないようなので、サリスにやられた傷?を、大樹の中で癒やしているかもしれないと言っていました。今は、ネロと俺達パルヴァンの騎士で、その大樹を見守っています。」


「後で…俺が見に行っても?」


「それは、私から魔法使いであるリュウにお願いしよう。大樹の様子を見てくれるか?」


グレンのお願いに、リュウは「勿論です。」と答えた。










「それで…エディオルさんには申し訳無いんだけど、ハルはこのまま、このパルヴァン辺境地の邸で“療養”と言う形で過ごしてもらおうと思っているの。今のハルにとって王城─王都は毒にしかならないから。ここでなら、ハルも周りを気にする事なく過ごせると思うの。」


「そうですね…。ハルが、王城どころか王都を嫌がっていた事は知ってますから。グレン様、ゼン殿…暫くの間……ハルを宜しくお願いします。」


ミヤの提案に、エディオルが頭を下げた。


「俺の娘─だからな。エディオル…殿に頼まれなくとも、しっかりと守るよ。」


と、ゼンは相変わらずな口調でありながらも、目は優しかった。





それから、これからのハルの対応の話をした後、ランバルトとエディオルとクレイルとイリスは、転移魔法陣で王城へと帰って行った。












*****



「────ん─」


ー何だろう?お腹が…温かい?重い?ー


と、自分のお腹に手をあてると


「ん??もふ…もふ??」


ソロソロと被っている布団を捲ると──


「え?い…犬???」


ベッドで寝ている私のお腹に顔を乗せて寝ている、黒色の毛並みの綺麗な犬がいた。

その犬は、余程疲れているのか、私が動いても目を覚まさなかった。


「可愛い。」


そっと、その犬の頭を優しく撫でると、心なしか、寝たままだったけど、その犬も嬉しそうな顔をしたように見えた。


ーここで飼っている犬かなぁ?明日、お姉さんに訊いてみようー


そう思いながら、私はもう一度眠りに就いた。





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