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目覚める

あの騒動から3日。


ハルもネージュも、まだ眠ったままだった。









「ハルの事…宜しくお願いします。」


「ええ。任せてちょうだい。」


ハルが倒れてからずっと側に居たエディオルも、そろそろ仕事を──と言う事になり、ランバルトの計らいで、代わりにミヤがハルの元へとやって来た。ついでに、改めて森の浄化をすると言う事もあったからだ。






『それじゃあ、私も主と王都に戻るから、ママの事は頼んだよ?』


『わかったの!まかせてなの!パパは、おしごとがんばってなの!』


ノアとネロが鼻と鼻をくっつけた後、ノアは主であるエディオルと共に、王都へと戻って行った。




『まま…もうすこしなの……』


ネロはそのまま大樹の根元に身を寄せて、尻尾をフリフリさせながら目を瞑った。









*ハルの部屋にて*



「私には、魔力がいまいち分からないのだけど、ハルの今の状態はどうなの?」


聖女としはチートなミヤであっても、魔力に関してはイマイチ分からない。


「もともと、ハルの魔力量は多かったから、その分回復するのにも時間が掛かっているんだと思います。見た感じでは、八割程は回復してますから、いつ目が覚めてもおかしくないでしょうね。ハルの存在が大き過ぎて忘れがちですが、クズ──リュウも魔法使いで結構な魔力持ちだから、アレもアレで回復迄時間が掛かってるんですよ。」


「リュウね…」


ー王城に転移した後、リュウの存在を忘れてて、その分更に治療が遅れたから──とは…言えないわねー


と、ミヤは心の中で…少しだけ反省した。



「ところで、ゼンさんもちゃんと休んでいるの?エディオルさんもそうだけど、ゼンさんもハルが絡むと周りが見えなくなるから。それこそ、エディオルさんやゼンさんが倒れたら、ハルが悲しむわよ?」


「昨日迄は、後始末が少し大変だったんです。それで、()()()は、事が事ですから、一旦国王預かりとなりました。明日、魔導師長自らが迎えに来るそうですよ。」


今回騒動を起こしたのは、某国─デライト王国の王族の末裔だった事と、騒動が起きた所がウォーランド王国の重要な領地であった事、更には王太子の婚約者であり聖女が巻き込まれたと言う事で、国王のもとに裁きを受ける事となった。


とは言っても、最終的には、パルヴァンが締め上げる─と言う形にはなるだろう─と、誰もが思っている。


「でも、確かに。私が倒れればハルが悲しみますね。ミヤ様、少しだけ…ハルをお願いしても良いですか?少し…体を休めて来ます。」


「ふふっ。私は大丈夫よ。ハルの事は任せて。」


「ありがとうございます。それでは…失礼致します。」


ゼンはミヤに頭を下げてから、部屋から出て行った。




「…ハル……」


ベッドの上で寝ているハルは、3日前は真っ白と言っていい程の顔色だったが、今ではすっかり顔色も元に戻っていて、寝ている理由を知らなければ、ただただ普通に寝ているだけ─の様に見える程だった。


他人(ひと)の事は言えないけど…ハルって、本当に…トラブル体質よね?」


そっとハルの髪を撫でる。


「皆待ってるからね?」







*****



ミヤがパルヴァンに来て2日後。


ミヤが、寝ているハルをルナと、ハルの様子を見に来たグレンに任せて朝食を取っていた時だった。


「きゃぁ───っ」


と、微かな悲鳴の様な声が邸内に響いた。

それにいち早く反応したのがゼン。それに次いで、ミヤも食事中にも関わらず立ち上がり、ゼンの後を追うように食堂から走って出て行った。


ー今の声…ハルの声…よね!?ー


ようやく目が覚めたのかもしれない。

逸る気持ちを抑えながら、ミヤはハルの部屋へと急いだ。








「ハルが…目を覚ましたの!?」


と、ハルが居る部屋へと入って行くと──


「ミヤ……様」


何故か悲しそう?な顔をしているルナと、身体が固まったように動かないゼンさんと───


グレン様にしがみついて震えているハルが居た。グレン様に至っては、酷く困惑しているようだった。


「えっと…皆どうしたの?ハルが…目を覚ましたのよね?」


すると、グレン様にしがみついていたハルが、ゆるゆると私の方へと顔を向けると───


『……おねえ…さん?』


「え?」


何故か、ハルが軽く目を瞠ってから日本語で話し掛けて来た。


『えっと…ハル、目が覚めたのね。身体は大丈夫なの?』


何か意図があるのか?と思い、私も久し振りに意識をして日本語を口にする。


『!お姉さん!!』


すると、グレン様から離れて、今度は私の方へと走って来て、そのままの勢いで私に抱きついて来た。


『─っ!?ちょっと…ハル?一体どうしたの?』


『お姉さんが居て…良かった。目が覚めたら…()()()()()()に居たから、ひょっとして…私だけ何処かにとばされたのかなって。』


()()()()()()?』


ギュッと、震えながら必死にしがみついて来るハル。


『ハル、ちょっと落ち着いて?私の顔を…見て?』


私の胸にくっつけている顔を、私の方へと上げるように促すと、しがみついたままに顔だけを上げる。


『ハル…よね?知らない部屋って…どう言う───』


『ここ、王城の…私の部屋じゃないですよね?』


と、ハルは震えるような声でそう言った。






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