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最後に…

「ネージュ!」


サリス(もう呼び捨てでいいよね!!)が魔法陣を展開させると、真っ赤な光がネージュを捕えて包み込み、その光が無くなった時には、ネージュの4本の足と首に、枷の様なモノが嵌められていた。


「はっ!フェンリルも大した事なかったな?お前には、国に還ったら、国の再興や領地拡大の為にしっかり働いてもらうからな。それと──」


サリスは、私へと視線を向ける。


「契約を結んでいるお前─巫女にも一緒に来てもらう。」


「私は、巫女の血なんて、引き継いでなんていない。」


確かに、日本に還れずパルヴァンに飛ばされた時は、巫女の魔力が流れていると言われたけど、レフコースと一度繋がりを断った時に、その魔力も失ったはず。


「巫女の血が、お前に反応していると言う事は、そう言い事なんだよ。巫女とフェンリル以外には用は無い─この森も…要らない。」


サリスが手を翳すと、その手から一気に赤色のモヤが広がった。


「好きにはさせないわよ!」


ミヤさんがそう叫んだと同時に、私の背後から金色の光りが溢れ出し、赤色のモヤを飲み込む様に進んで行く。


それは、圧倒的な強さであり、とても綺麗で──




『主ーっ!!!!』


「えっ!?」


一瞬の気の緩みだった。





カシャンッ────





ヒュッと息を呑む





冷たい感覚が背中から這い上がる






「あれ?ひょっとして…お前も結構な魔力持ちだったのか?」



「───っ」




「「「ハル(様)!!」」」




ティモスさんとルナさんとリディさんとミヤさんの、少し焦ったような声が聞こえる。それと同時に、赤色のモヤと金色の光りが霧散した。


「魔力封じの枷、もう一つ持っておいて良かったよ。」





ー苦しいー






身体がカタカタと震える。



「そろそろ、ここから離れるか。フェンリル、お前の力で…この森を焼き払え!」


『──グゥ────ッ』


足に着けられた枷に魔術が仕組まれているのか、ネージュの意志とは反して、ネージュが森を攻撃する為に動き出す。


「ネージュ!」


ーどうしたら良い!?どうしたらネージュを止められる!?ー





──我の血を………大樹にっ─────





ー動け!ー



今のサリスは、ネージュとミヤさんに意識が向いている。大丈夫。やれる。



グッと力を入れて立ち上がり、サリスの左手に握られている()()を奪い取り──


「何をっ!?」


()()を思い切りの力で大樹に投げつけると、パリンッと瓶が割れて、赤い液体─巫女様の血─が大樹に飛び散る。


「くそっ──お前っ!!」


サリスが怒り、私の腕を捻り上げ──



『お前の好きにはさせぬ───』



大樹から溢れ出した光りがネージュを包み込み───


そのままネージュを飲み込んだ───





『レフコースは…我が…守る。それしか………』





ーあぁ、これで、ネージュは大丈夫だー


こうしている間も、どんどん魔力が失われて行くのが分かる。


ー落ち着いてー


私には、リュウからもらった魔石がある。それを展開させればここから逃げられるけど…問題は…この転移魔法はおそらく、一人だけしか転移できない。チラリとミヤさん達の方へと視線を向けると、顔色を悪くしたリュウを庇いながら、男達と対峙していた。


転移をするには、必ず魔法陣の中に居なければならない。少しでも魔法陣から外れると転移できないのだ。


ー大丈夫、私なら…できるー


サリスに捻り上げられている手とは反対の手で、震える手でそっとピアスを外す。


「ちっ─お前、何をするつもりだ!?ソレを寄越せ!」


「─っ!嫌──っ!!」


取られないように抵抗すると、奪い取ろうとしたサリスの手とぶつかり、そのピアスが私の後方へと弾き飛んで行く。

それを、私はゆっくりと落ち着いて目で追う。


ー大丈夫。私ならできるー


細く細く、そのピアスに少しずつサリスに気付かれないように私の魔力を流し込む。


そのまま、そのピアスがミヤさん達の頭上まで来た時に、一気に私の魔力を流し込んで魔法陣を展開させた。


「なっ!?」


ミヤさん達の足元に魔法陣が現れ、黒と淡い水色の光がミヤさん達を包み込む。


「ハル!?」


焦っているのは───ミヤさんだ。


リュウの魔力だけでは一人しか転移できないけど、私の魔力を更に込めれば、ティモスさんもルナさんもリディさんもリュウも…王城迄飛ばせる。


本当は、グレン様の所でも良いんだけど──


ミヤさんを、どうしても王太子様の所に…還してあげたいから。

ミヤさんには、王太子様と幸せになって欲しいから。

後は、張られている結界を、転移と同時に壊す事。


ーできる。大丈夫ー


「ハル!ハル!」


必死に私を呼ぶミヤさんを、ティモスさんが必死に抑えている。


ーティモスさん、ありがとうございますー



更に魔力を流して魔法陣を展開させて、私がミヤさんに笑顔を向けると同時に、ミヤさん達の姿が───そこから消えた。




ーどうか…無事に…王城──王太子様の所に…還れますようにー




ーできる事なら…ディに…最後に…ディに会いたかったー


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