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デライト王国

「その程度の魔術で…私に勝てると思ってるの?」



「サリス?」


サリスさんは、大樹に手を添えたまま私達の方へと顔を向けた。

そのサリスさんの瞳は、大樹に纏わり付く赤色のモヤと同じ色をしていた。


ーどうして?さっきまで…黒い瞳だったのに。違う、それよりもー


と、相変わらず息苦しいままだったけど、何とか魔力を捻り出して大樹とその周辺一体に浄水の水を雨のように降らした。

すると、やっぱり“パリンッ”と言う音と共に赤色のモヤが無くなり、私の身体もスッと軽くなる。


「ゔっ──」


サリスさんが左腕をおさえながら小さい声で呻いた。きっと、掛けた呪いがサリスさんに返ったのだろう。


「ハル、ひょっとして…サリスが大樹に呪術を掛けようとしてたのか?」


そう私に訊いて来るリュウは、視線をサリスさんから外さない。


「多分。サリスさんが大樹に触れた途端に、また赤色のモヤが出たから。」


「サリス…お前は一体…」


リュウが、腕をおさえて蹲っているサリスさんに近付いて行き、サリスさんに手を伸ばした時、サリスさんの口元がニヤリとするのが見えた。


「リュウ、気を付けて!」


「え?」


私の声に反応したリュウ。でも、それは遅かった──


カシャンッ────


()()は音を立ててリュウの首に着けられた。


「──なっ!?」

「「「リュウ!」」」


「ははっ!アンタ、油断し過ぎだな!()()さえアンタに着ければ、もう怖いものは無いからな。」


「くっ───」


リュウの首に嵌められたのは“魔力封じ”の魔導具だった。

“魔力封じ”は、その本人の魔力が強ければ強い程吸い取られるスピードが速くなる。リュウは私と同じ魔法使い。吸い取られるスピードは速い筈だ。


「リュウ!」


そう言って、ミヤさんが駆け寄り、首に嵌められた魔導具を外そうとするけど、どうやら外れないようだ。


「ルナさん、リディさんはミヤさんとリュウをお願いします。」


「「分かりました。」」


「ティモスさんは、急いでお父さん─ゼンさんとグレン様に報告を───」


「そんな事させる訳無いよね?」



サリスさんがそう言うと、どこからか5人の男の人達が現れた。


「それと、この辺りに結界を張ってあるから、ここから逃げる事も、外から入って来る事もできないから。」


「サリス……」


苦しそうな顔をしたリュウが、ミヤさんに支えられながらサリスさんを睨み付けた。


「パルヴァンの森に呪術なんて掛けて…お前は…何がしたいんだ?」


「何がしたい?ねぇ…。私はずっと探していたんだ。ずっと…そして、ようやく見付けたんだ。」


恍惚とした笑顔で私とネージュを見つめるサリスさん。


「今は滅び無くなった私達の国を再興させるには、かの守り神と巫女の血が必要だったんだ。それが、私の─先祖代々からの夢だった。」


ピクリッ─と、その言葉にネージュが反応すると同時に、ネージュの魔力が少し乱れたのが分かった。


『ネージュ……』


静かに頭の中でネージュに呼び掛けて、頭をソッと撫でる。


「お前…まさか……」


「そう。私は、かつての守り神であったフェンリルが居なくなったせいで滅んでしまった某国──デライト王国王族の生き残りの子孫だ。」








『何をしている!?殺すなと言っただろう!!』






脳裏に浮かんだのは、誤ってパルヴァンの巫女に致命傷を与えた騎士に、怒り詰め寄っていた男の人。アレは、王子…だったのだろうか?何となく、サリスさんに似ている気がする。


「パルヴァンの巫女の存在は諦めていたけど…まさか、またその巫女の血を引き継ぐ者とフェンリルが契約を交わしていたとは…本当に嬉しい誤算だった。」


「──巫女の血を…引き継ぐ者?」


「あぁ、魔法使いのリュウでも分からないだろう?デライトの王族の血を持つ者は、国の再興の為に必要なパルヴァンの巫女とフェンリルの血に反応するモノを受け継いで来ているんだ。」


そう言いながら、サリスさんが服の下に隠して、首に掛けていたモノを取り出した。


長目のチェーンの先に小さな香水瓶の様なモノが付いていて、その中にはキラキラと光る赤色の液体が入っている。


「これはね、巫女の血を引き継ぐ者が近くに居ると、キラキラと光るようになっているんだ。で、今…光ってるだろう?ちなみに、この赤色の液体は─────()()パルヴァンの巫女の血だよ───」


ニッコリ微笑むサリスさんに対し、ネージュの魔力が一気に溢れ出し、そのまま元の大きさに戻ったネージュ。


『その血を返せ!』


「お前と、そこの巫女の血を引き継ぐ者が、私に従うなら返してやろう。」


『誰がお前達に従うものか!』


「なら…従ってもらうだけだよ──やれ!」


サリスさんのその一声で、周りに居た5人の男達が動き出した。



ティモスさんとルナさんとリディさんは大丈夫だとして、ミヤさんは…うん、ミヤさんも大丈夫そうだ。聖女でもあり、警察官でもあったミヤさんは、空手、剣道、柔道と、全国大会でも上位に食い込んでいたと言っていた。それに、皆には防御の魔法を組み込んだピアスを着けてもらっている。後は、どうやって、今の状況をグレン様達に伝えるか──リュウに関しては時間の問題だ。




「なぁ、フェンリル。お前は、主であった巫女を守れずに、今迄のうのうと生きて来て…恥ずかしくはないのか?よくも、そんな生き恥を…晒せるもんだな?」


『───っ!』


「ネージュ!!」


ネージュの魔力が更に溢れ出し、その怒りのままに一気にサリスさんに詰め寄った。


「はっ!本当に単純で助かる。」


サリスさんはニヤリと嗤い、ネージュに向かって魔法陣を展開させた。





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