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赤色の

ネージュが眠りに就いていた大樹。きっと、今でもネージュとの繋がりがあると思うんだけど…。


ー確か、私が魔法で出す水は浄化作用があったよね?ー


そう思い出して、魔法で水を出して、その赤色のモヤに水を掛けると──


パリンッ─


水を掛けた所のモヤが、音を立てて消えていった。


『ひょっとして、水を掛けた所だけ浄化されたのか?少し、嫌な感じが薄らいだ感じだ。』


「うん。水を掛けた所だけ、モヤが無くなった。このまま、この大樹全体に水を掛けるね。」


それから、“雨”をイメージして、大樹全体に水を掛けると赤色のモヤは全て無くなった。





「あー…相変わらずハルは…規格外だな…雨みたいに水を降らすって……。」


と、ティモスさんが遠い目をしながら囁いていた。










赤色のモヤが無くなると、纏わりついていた違和感は無くなったけど、赤色のモヤが何なのか、どうして現れたのかは全く分からない。取り敢えず、私達はそのまま邸へと戻り、グレン様の居る執務室へと向かった。




「今回の森への立ち入りは…中止した方が良いかもしれないな。ティモス、今から何名か連れて、もう一度森を巡回してくれ。ゼン、王太子殿下に手紙を飛ばすから用意してくれ。」


「「分かりました。」」


そう言うと、お父さんとティモスさんは執務室から出て行った。


「グレン様。念の為に、浄化用の水を用意しておきましょうか?」


「私達に()()が見えるかどうかは分からないが、念の為に用意をしてもらえるか?」


「はい。それと、私とネージュも、時間がある時は森を巡回しますね。」


「申し訳無いが、そうしてくれるとありがたい。但し、一人では絶対に行かないようにな。」


と、グレン様は優しく笑って、私の頭をポンポンと軽く叩いた。










*****



「森に異変が?」


「そうらしい。グレン殿から手紙が飛んで来た。」


かつての“森の守り神”と呼ばれたネージュ殿と、規格外の魔法使いでもあるハルでさえ何か分からない“違和感”。

取り敢えずの違和感の元であろうモノは浄化できたらしいが─。


「原因が分からないから、今回は森への立ち入りは中止した方が良いだろう─と。」


3日後にパルヴァン辺境地に入る─と言う所まで視察にやって来ていた視察団一行が泊まっている、王族所有の離宮にグレンからの手紙が飛んで来た。

そして、その手紙の内容について話し合う為に、執務室にランバルト、ミヤ、エディオル、クレイルと、リュウが集まった。


「穢れ─ではないの?」


「手紙によると、穢れではないらしい。と言うか、何がおかしいのか─が、よく分からないらしい。それに、その違和感?を感じ取れるのが、ハル殿とネージュ殿だけのようだ。」


ミヤの疑問に、ランバルトが答える。


「ハルとネージュ殿だけ?」


と、エディオルは眉間に皺を寄せる。


「明日は…俺が居なくても視察は問題ないよな?俺も、パルヴァンの森に、魔法使いとして見に行って来ようか?勿論、グレン伯の許可が下りたらだが…」


「そう…だな。なら、手紙を飛ばすより、リュウが直接転移して行った方が早いだろう。今から行くか?」


「そうだな。気になる事は…早目に済ませた方が良いからな。行って来る。」


と言って、リュウは魔法陣を展開させた。










かつて()()()()()クズと呼ばれても、リュウはこの世界では特別な存在である魔法使いには変わりない。

パルヴァンの森の異変は、このウォーランド王国は勿論の事、隣国にも関わって来る可能性もある。それになにより、ミヤとパルヴァンの騎士達に、隣国は救われた。ならば、隣国の魔法使いであるリュウとしては、喜んでパルヴァンの為に動くだけなのだ。


リュウは、パルヴァンに転移してからすぐにグレンの元まで行き、森に入る許可を得た。

相変わらずゼンは渋い顔をしていたが、グレンからは「ありがたい」と言われた。


それからすぐ、リュウは、ハルとネージュと共に、もう一度パルヴァンの森へと向かった。








「今はもう無いんだけど、この大樹に赤色のモヤみたいなモノが覆っていたの。」


ハルが、大樹に触れながらリュウに説明する。


「赤色のモヤ…」


「でね、私が魔法で出す水には浄化作用があるみたいでね?その水をかけたら…“パリンッ”て音を立てて無くなったの。」


「音を…立てて?」


『我には聞こえなかった。』


「え!?そうなの?じゃあ、私にしか…聞こえなかったの?」


“音を立てて無くなった赤色のモヤ”


「ヤバイな」


と、リュウが自身の顎に手をあてながら呟く。


「ヤバイって…リュウ、その赤色のモヤの事、何か知ってるの?」


「いや、ソレは分からないが…“音を立てて”と言っただろう?浄化したモノが音を立てて消える─その場合、そのモノが呪われていた─可能性がある。」


「呪い!?」

『呪い?』


「そう。呪われたモノを浄化─解呪すると、その呪いは必ず術者に跳ね返る。それが呪いの代償だからな。その時に、音が出るらしいんだ。俺は実際には聞いた事はないけどね。誰が何の目的でこの大樹に呪いを掛けたのかは分からないけど、今頃、その術者に呪いが跳ね返っている筈だ。」


「それは…どの位のダメージを喰らうの?」


「それは、その呪いの大きさによって異なる。大きい呪いなら、死ぬ事だってある。この特別なパルヴァンの森に呪いを掛けるなんて、ただの悪戯ではないだろう。これは、早急に調べた方が良いな。」


そして、3人はまた急いで邸へと帰って行った。









*?????*



「──っ!」


腕が何かに刺されたような痛みを受けた。


ーあぁ、あの呪術が破られたのかー


ズキズキと痛むが─それよりも、ようやく見付けた事への喜びの方が大きかった。



「我らの望みはただ一つだけだ。」



と、痛みも忘れてニヤリと笑った。



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