おっさん悩む
そこは懐かしい、見慣れた風景であった。決して高くはないこんもりとし山は、我が故郷の誰もが登る足羽山。そして目の前に敢然と壁のようにそびえ立つ足羽川堤防。
「はぁ、無事帰って来れたみたいですね。」
義弘は、壁のようにそびえ立つ堤防をこともなげに一気に駆け上った。
「ふふっ、伊達に2年の歳月、過ごしてませんからね。」
義弘は、懐かしの散歩コースを歩きはじめた。
そんな義弘、一気に登れた堤防に一瞬テンションが上がったものの、我が家に近づけば近づくほど不安が過りだす。
2年の間、留守にした我が家。住む人の居なくなった借家がそのままであるのか?家賃は銀行口座から引き落としであるから特に問題はないはずである。
「ただいま…」
2年の間無くさず大事なしていた鍵を差し込む。
『ガチャ』特に問題なく鍵は開いた。
「ふぅ…」
ゆっくりと開けられた扉の向こう側は、2年前と変わった様子は、ないように見える。
仕事のための安全靴にスノーシューズ。そしてちょっと横に広がったつっ掛けは、間違いなく自分のものである。
「はあ、とりあえず一安心か…ん?」
「はあぁ、こりゃひどいもんだ…」
玄関横のポストボックスからは、夏バテした犬の舌のように垂れ下がる広告に郵便物。
「あぁ、役所に税務署…、そりゃ確定申告してねぇからなぁ・・・」
「問題は、今後どうやって食べていくかだよなぁ」
義弘としては、生活の糧としての年金には全く期待していなかった。
2年の間に異世界で得た力。魔法を使って異世界との貿易によって得た財力での異世界スローライフを考えはじめていた。