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桜色の街で ~ニュータウン漂流記~  作者: サイダーボウイ
二つの手紙編 4月14日(日)
381/421

第381話 大貴からの手紙-16

 つっても、表面上は俺がグループの顔として機能してたから、あいつらがなんか騒ぎを起こせばその責任は俺にあった。

 だから、彩夏たちが俺の元から離れてってもこと細かく注意は払ってたんだよ。


 教室で騒ぎを起こすな、とも言ってた。

 もちろん、それをあいつらが疎ましく思ってることにも気づいてた。



 

 さっき、関内と一緒にいる時、こう言われたんだ。

 少年調査官の存在をバラす投稿をしたのはお前なんだろ、って。


 マルチメディア室に俺の名前が書かれた使用許可証が落ちてて履歴を辿ったらTwinnerにログインした形跡があった、とも言われた。


 もちろん、俺は関内のTwinnerになんかログインしてねーし、そもそも昨日はマルチメディア室になんか行ってない。


 多分、彩夏が俺を犯人に仕立て上げるためにそんな細工をしたんだ、って思ったよ。

 俺への当てつけみてーなもんだな。

 関内には悪いが、奴は俺たちグループの揉めごとに巻き込まれたって形だ。

 

 まあ、これ以上彩夏がバカな行動を取るようなら毅然と対処するつもりだよ。

 俺にもまだ慕ってくれてる仲間がいるからな。




 んで、それと並んでもう一つ。

 俺が懸念してるのは、社家の存在だ。


 社家は基本的には俺に忠実だが、清川同様、腹のうちが読めない男だ。

 厄介なことに俺の知らねーとこで彩夏とも繋がってやがる。


 ひょっとすると、俺の本心にも気づいてて、最終的に俺が警察へ自首しようって考えてることにも勘づいてるかもしれねーんだ。


 自分が巻き添えとなることを極端に警戒してる自己保身に長けた男でもある。

 

 土壇場で社家がどう出るか。

 正直、俺にも読めないところがある。

 

 すべてが終わった後、どうなってるか。


 当然、俺もただじゃ済まねーはずだ。

 関内たちによって晒し者になる覚悟もできてる。


 親父への復讐と、お前への贖罪はそれをもって完成すんだ。




 だから、もしお前がこれからあの男を殺したことを自白しようって思ってんのなら、俺は全力でそれを止めたい。

 良心が咎めてそれをやろうってしてんのならなおさらだ。


 いや……こんな書き方は不自然か。


 この手紙を読んでるってことは、お前はこの場所――つまり、犯行道具を隠してるこのパン屋まで来たってことだよな?


 その目的は一つしかない。

 シャベルを手に入れることだ。


 それとヤツの死体があれば罪を確定できるって考えてるんだろ?

 

 確かにその通りだよ。

 それですべて決着がつく。


 でも、よく考えてほしい。


 本当にそれでいいのか?

 お前がすべて打ち明けた結果、麻唯はどうなった?


 自分が正しいって思った行為が周りを不幸にすることだってあんだよ。



 

 あの男を殺した日は、お前が福岡へ引っ越す前日だったよな。

 それは……麻唯の誕生日の前日でもあった。

 

 今にして思えば、あれは偶然なんかじゃなくて運命だったんじゃねーかって思うことがある。


 起こるべくして起こったこと。

 避けようがなかったことだったんだ、って。


 もちろん、勝手にそう思い込みたいだけなのかもしんねーけど、俺はそう信じるようになった。

 あの男は、殺されるべくして殺されたんだ。

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