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第三十六話【対峙】

「着いたよ」

「柳生新陰流……本当に、本当に拓海様は柳生家の一族だったのですね。私は……私はとても光栄です」

 う~ん、運が良いのか悪いのか。中に居る奴の正体が判明した時、彼女はどんな反応を示すのだろうか?

 さてと、母さんには事前に連絡してあるから心配はない。凶器を庭へ隠し、彼女と共に家の中へ入った。

「ただいま~」

「たっくんたっくん!」

「おわっ! な、なんだよ?」

「これ見て、これ見て!」

 玄関に入った瞬間、ムサシが興奮した状態でスマホを見せてきた。画面にはサエズッターのさえずりが表示されている

「……で?」

「で? じゃないよ! このさえずりをちゃんと読んでよ!」


『推し動画【二刀流女子が道場破りをやってみた】天下無双チャンネル、久しぶりに面白い動画に出会いました。@萌え塩タン』


「あ、ああ……それよりも実はさ」

「ちょいちょいちょーい! それよりもじゃないよ! このさえずり読んで何も思わないの? それでも令和育ちかっつーの! 萌え塩タンだよ!? 一言さえずられたら、バズり確定のインフルエンサー萌え塩タンが、あたしの動画をさえずってくれたんだよ!? これはもはや事件、事件が起きたんだよ! なんでそんなにも冷静でいられるわけ!?」

 ……いや、それよりも大事件が起きちゃってるんですけど。

「てゆーか、その娘誰?」

 ようやく目に入ったか。興奮し過ぎだろ全く。

 ……あ。ヤバイ。

 それよりも何よりも、大問題発生だ。玄関開けたら母さんが出迎えてくれるとばかり思っていたが、玄関開けたら秒でムサシが現れてしまった。

 さて、どうすべきか? とりあえず、『佐々木サキちゃんです』とでも偽るか? 何となくだが、今はお互いの正体を明かさない方がいいような気がする。風呂に入れて、ご飯を食べさせて、落ち着いた所で、俺からきちんとした説明をしてからの方が……。

 そんなプランを瞬時に考えていたその時、「あの、拓海様。この可愛らしいお方は?」と小次郎が俺に尋ねた。

「えっと、この子は……」

「可愛らしい? へー、見る目あんじゃん。そういうアンタも結構美人だよね」

 上から目線プラスドヤ顔のムサシが褒めると、小次郎は少し顔を赤らめ、伏せ目気味に「……美人。嬉しゅうございます」と照れた。

「あたしはムサシ。宮本武蔵だよ。アンタは?」

 うわ! ちょっと待って!

「む……武……蔵?」

「あー! 違う違う! この子は、む……ムサス。ミヤモツムサスって言うんだ」

「ちょっとたっくん? なんで、東北訛りで発音すんの? ディスってんの?」

「い、いいいや、違うんだ。これには深い訳があって」

「は? 意味わかんないっての。改めて自己紹介するね。私は二天一流の宮本武蔵だよ」

 言ってしまった。

 恐る恐る後ろを振り向いた。小次郎は目をパチクリさせて、ムサシを見つめながら呆気にとられた表情を浮かべている。

「む……武蔵」

「そう、武蔵。よろしくね♪」

 満面の笑みで目元ピースを決めるムサシ。一方、小次郎の表情には、殺気が浮かび上がっていた。

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