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第二十九話【青春ならぬ、性春】

「…………え」

 ここでハプニング発生。ムサシの奴、壁側の方を向いて眠ってるじゃないか。これでは寝顔を確認することができない。寝返りを打つまで待つか? それともベッドに上がって覗き込むか? 鼻息が大きくならない様に、息を殺して沈思黙考していたその時だった。

「……ん?」

 目を凝らしてよく見てみると、ベッド脇に何か居た。

「えっ!? う……うわっ────んん!!」

 驚いて思わず叫び声を上げそうになったが、自分で口を塞いでなんとか耐えた。

 ベッド脇に潜んでいたのはじいちゃんだった。

「い、いやいや、じいちゃん、何やってんだよっ?」

「お前こそ何をしとるんじゃ? ん?」

「……俺は、その」

「一度眠ったら起きない、ムサシたんの部屋で」

 ちょっと待て。

 なんで俺だけが知っているムサシの機密情報を知ってるんだ?

 彼女がこの家に来て以来、隣の部屋の彼女の生活パターンを分析していた俺は、一度寝たら朝まで起きない、という習性を発見したのだ。それを実証する為、夜中に壁を叩いてみたりドアをノックしてみたりと、あらゆる実験を行ったが、決して夜中に起きることはなかった。

 まあ、分析やら実験やらと、格好よく言ってはいるが、つまるところ思い切りムサシの事を性的対象として意識しているだけなのだが。

 うん、わかってるよ。とても気持ち悪い事だと。

 しかし、しかしだ。俺は声を大にして言いたい! 隣の部屋に可愛い女の子が住んでたら、色々な事を考えるよね? だって俺、思春期真っ只中だもの!

 てゆーか、俺の青春ならぬ『性春』を語っている場合じゃない。このエロジジイが、この機密情報を入手している事が一番の問題だ。

「一度眠ったら起きないって、なんでそのこと知ってるんだ?」

「拓海よ、お前のPC、セキュリティレベルを、もっと上げた方が良いぞ。あれでは『どうぞご覧ください』と言っている様なものじゃ。ふぉっふぉっふぉっ!」

 ま……まさか。俺のPCハッキングしやがったな!

「齢八十を超える老人が、しかも孫のPCをハッキングするなんて聞いた事ねーぞ」

「ふぉっふぉっふぉっ。まあよいではないか。して拓海よ。お前の目的はなんじゃ? 女子の寝込みを襲うとは、流石はワシの血を引いとるだけはあるのぉ」

「ち……違うよ。俺はただ、どんな寝顔してんのかなって」

「寝顔とな? それはそれは、なんともチェリーらしい願望じゃのぉ」

「じいちゃん声がでかいって」

「何を言う拓海よ。お前の分析だと、声を掛けようが音楽をかけようが、夜中に突然ノックしようが、ムサシたんは起きないというデータが取れておろう。ならば、ひそひそ話しなどする事はないではないか」

「……それは、確かにそうだけど、もしかしてってことがあるだろ。母さんにバレるかもしれないし、ここまで辿り着くのにも細心の注意を払って来たんだから。つか、じいちゃんは一体何しに来たんだよ?」

「愚問よの。このワシ、柳生権八朗を一撃の下に倒した小娘じゃ。夜這いしたくもなるじゃろう?」

「いやいや、意味わかんないって。どうしたらそんな思考になるんだよ」

「こちらの隙を不意打ちされたとはいえ、ワシは今まで一撃で倒されたことは一度もないんじゃ。しかもこんな小娘にな」

 確かに他流試合を含め、じいちゃんが一撃で倒されたところなんて見たことはない。しかし、それとこれとは話が違う。夜這いの理由にはならないだろ。もしかしてムサシの一撃で、どこかおかしくなっちゃったのか?

「ワシは……ワシはどうやらこの娘に恋をしてしまったようじゃ」


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