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第二十二話【試合開始】

「お待たせしました。どうぞ」

 山田さんが駆け足で竹刀を持って来てくれた。ムサシは竹刀を受け取るも、一旦壁に立て掛けた。

 一体何をするのだろう? そう思いながらカメラを回し続けていると、彼女は持参した巾着袋から何かを取り出した。

「じゃじゃ~ん!」

 スマホに向けたのは菜箸だった。

 は?

 菜箸?

「竹刀でフツーに倒してもつまんないから、一人目はコレで倒しちゃおうと思いまぁ~す。どう? エモいでしょ♪」

 エモーショナルというか、それはもはやセンセーショナルだ。

 なんと、ムサシは菜箸で立ち合うと豪語した。いやいや、幾らなんでもそれは無理だろ。つか、そんなふざけたモノ出して、田中さん怒ってないか?

 スマホを第一試合に出る田中さんに向けた。彼は入門して三年目、鍛練の日々を経て、実力をメキメキとつけてきた二十五才独身のイケメン剣士だ。

 ん~……意外と表情が緩い。いや、デレデレか? 多分、面白動画を撮影するのだと思っているのだろう。ま、そりゃそうか。こんな可愛い小娘が相手なんだから無理もない。

「では第一試合を開始します」

 中央へ歩み寄る田中さんとムサシ。竹刀VS菜箸という、異様な光景だ。

 ついに宮本武蔵の実力をこの目で見られるかもしれない──俺の緊張と高揚はピークに達していた。

 田中さんがムサシに話しかけた。 

「凄いねキミ、竹刀を壊しちゃうなんて」

 恐らく、何かのトリックでも使ったとでも思っているのだろう。でもあれはトリックなんかじゃないはずだ。油断してると死にますよ、田中さん。顔が緩みっぱなしだけど大丈夫ですか?

 やがて両者は提刀姿勢から一礼をした。

「試合開始!」

 遂に始まった。

 田中さんは上段の構え、ムサシは左右の手に菜箸を一本ずつ持った正二刀だ。

 そして、構えは──

「……おお」

 思わず声が漏れてしまった。両刀、いや両箸を下段に置いたその構えは、宮本武蔵の肖像画で最も有名な有構無構だ。『かまえありて、かまえなし』と呼ばれるそれは、まるで水の流れの様な、とてもリラックスした自然体の構えだ。

 独行の道を進み、無双の孤剣と言われた本物の二天一流っぽいじゃないか。

「……さぁ、どこからでもいいよ」

 ムサシは攻撃を促した。しかし、田中さんは一歩も動かない。いいや、恐らく動けないのだろう。試合前まで緩んでいた表情は引き締まり、いつものイケメン剣士の顔へ変わっている。そして、二人を取り巻く空気も張り詰めてきた。

「ムサシちゃん@天下無双娘」は平日は毎日午前中に、土日はお昼に更新します。

更新時間はまちまちですので、読まれている方はご注意ください。

ブクマ付けてもらえると見つけやすいと思います。

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