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第十九話【道場破り】

 三日後の日曜日。俺はムサシと共に再び道場を訪ねた。

「うわぁ~、柳生の血筋と試合出来るなんて、夢にも思わなかったよ~。だってさぁ、柳生家って将軍家の指南役だから、あたしみたいな一介の武芸者とは絶対に立ち合ってくれないからさ、超嬉しいよ! 令和サイコー!」

 とてつもないハイテンションで喜びを伝えるムサシ。まぁ、史実では新陰流創始者、柳生石州斉に憧れ、剣の道を目指したとも記されているからな。血は相当薄いとは言え、その子孫にあたる血族と立ち合えるんだ、興奮するのも頷ける。正直、ここに来るまでちょっと緊張していたけれど、まるでアイドルに会いに行くオタクのようなムサシを見て、少しだけそれが和らいだ。

 道場には山田さんを筆頭に門下生が勢揃いしており、異質な空間となっていた。

「あ、皆さんおつかれさまでーす」

 声を掛けつつ、道場内へ入った。すると、山田さんが駆け寄ってきた。

「坊っちゃん、本当にやられるんですか?」

「え……えぇまぁ。あれ? じいちゃんは?」

「只今、別室にてリモート会議中でして。それが少々押している様です」

「リモート会議……それ、多分ヌコ生の生配信観てるんだと思います」

 やれやれ、決闘当日だっつーのに、また推しの女の子がやってる生配信で、投げ銭しまくってやがんな。

 柳生権八郎は、無類の強さを誇る剣の達人であるが、その半面、無類の女の子好きというエロジジイでもある。まぁ、俺はそんなギャップがあるところが結構好きなので、多少の事は目を瞑っている。しかし、流石に門下生を勢揃いさせておいて、生配信観てる場合じゃないだろ。

「……ちょっと、俺呼んできます。ムサシ、少し待っててくれ」

「あ~い♪」

「あ、あの坊っちゃん、此方の可憐な少女は?」

「え? あぁ、この子が今日の相手……道場破りの言い出しっぺです」

「えぇッ!?」

 驚愕しつつも、鼻の下をマウンテンゴリラ並みに伸ばしている山田さんにそう告げた瞬間、バン! という襖が開く音と共に、じいちゃんが道場内へ疾走してきた。そして、俺の隣にいる袴姿のムサシを険しい表情で舐め回すように眺めた。

「た、たたた拓海! まさか、この小娘がワシに挑もうとしている命知らずか?」

 う~ん、流石に師範代としてのプライドを傷付けたか?

「そ、そうだね」

「バ、バカモーン!」

 そりゃそうだよな。幾らなんでも馬鹿にしすぎているか。何せ、この娘が宮本武蔵かもしれないと思っているのは俺だけなんだから。端から見たら単なる小娘にしか過ぎないよな。

「じいちゃん、ごめ――」

「なぜ女子が来ると先に言わんのじゃ!」

「へ?」

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