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第十六話【もう戻れない】

「はぁ……あのさ、たっくん。じゃあ逆に聞くけど、仮にたっくんが今の暮らしを捨てて、あたしの居た時代に行って、生活出来る?」

「……え?」

「SNSはおろか、テレビとかゲームとか、現代では当たり前の娯楽なんて一切無い。それどころか、車や電車も飛行機も無いし、隣の村へ行くにも徒歩か馬。野盗はゴロゴロ居るし、関所だってある。食事だってそう。ファミレスやコンビニなんて当然無いし、食べたければ自給自足や狩りが基本。どう?」

「……う。そ、それは」 

 あまりにもシンプルで的を得た逆質問に対して、

「む、無理だと思う」

 俺は素直にそう返答した。 

「でしょ? でしょ? でしょ~? 無理だよね。つまり、たっくんは自分が出来ない事を他人に強要してるって事だよ? それってさ、ちょっと理不尽過ぎない? てゆーか、もはや鬼だよね」

「お……鬼って」

「そーでしょ? だってさ、戻りたく無いって言ってる、あたしの意志を尊重せず、佐々木小次郎があーだとか、歴史がこーだとか、都合のいい理由並べて戻れなんてさ。たっくんが無理な様に、あたしももう無理だって。食事は米、味噌汁、焼き魚のループ、イタ飯やラーメンやら現代の食生活を経験してるのに、今更戻れるわけないっつーの!」

「わ……分かったよ。ごめん」

「うん! 分かればよろしい!」

 やれやれ、結局ムサシに論破された形になってしまった。でも、確かにそうだよな。例えば、スマホを知ってからガラケーに戻れって言われたら、ちょっと抵抗がある。現代の快適な生活を知って、何もない時代に戻れるわけがないよな。まぁ、ここは本人の意思を尊重しよう。

「じゃ……じゃあ、とりあえず俺は部屋に戻るよ」

「待って」 

「は?」

「たっくんさ、まだあたしが宮本武蔵だって完全に信じてないよね?」

「う……それ、それはまぁ、そうかな。史実と違うし、それに一番信じられないのは、やっぱ君が可愛い女の子だから……」

「お。なになに? 女子の部屋で突然の告白ですかぁ?」

「ち、違うよ! そういう意味じゃなくて……」

「よし!」

 ムサシはそう声を上げるとドヤ顔を見せた。

「じゃあ、あたしが本物の宮本武蔵だって事を証明してあげるよ」

「証明?」

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