第十三話【お風呂】
「う~ん……」
様々な憶測が頭の中から離れない中、渡り廊下をボンヤリとしながら歩く。
「ま、考えても仕方ないか。それにしても……」
パッションピンクにウサギがプリントされたバスタオル。このタオルでこれからムサシは体を拭くのか。そう思った瞬間、煩悩ゲージが一気に上昇した。
そして──
ボフッと、バスタオルに顔を埋めた。あぁ、なんかとてつもなくいい匂いがする……気がする。使ってる洗剤は俺達と同じなのに。
タオルから顔を剥がし、脱衣場に入った。
「ふ~ふ~ん♪」
鼻歌が聞こえる。おお、なんか妙に興奮してきてしまった。この家で風呂に入る女性は母さん一人だけ。健全な思春期の男子には、この上ない刺激的なシチュエーションだ。
バスタオルを置き、浴室に視線を向けた。むぅ……この扉の向こうで、可憐な美少女が身を清めているのか。
悶々が止まらない。駄目だ、理性で制御出来る内に、この場を立ち去らないと。そう思った瞬間、何の前触れもなく突然浴室の扉が勢いよく開いた。
「へ……?」
一糸纏わぬ姿のムサシが、目の前に現れた。髪をヘアバンドでまとめ、程よい胸……滑らかなボディラインがとても魅力的……ではなく!
「お、たっくんどした? 覗き?」
「覗……ちっ、ちがっ……違う! 俺は母さんからバスタオルを置いてきてって」
「ふ~ん、ホントにぃ?」
「ほ、ほほほ本当だよ! ほ、ほらコレ タオル!」
「サンキュ~♪」