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ラブコメ短編集(TSとか男の娘)

俺たちの勇者はTSしたからって、絶対にメス堕ちしない!! だが、勇者は完全に女の子になっていた。

作者: 黒神譚

3連休なので、もう一つ短編を書きました。

次回の連載作品は、一月末からを考えていますので、これからも短編はちょくちょく上げていくかもしれません。

TSとか男の娘とかのラブコメが個人的に書きやすいので、そういう話になると思います。

もし、また見かけたら、読んでください。

喜びますよ?主に私が!

勇者は常に勇者でなくてはならない。

苦しい時も、悲しい時も、恐怖で足がすくみそうなときも、勇者は勇者でなくてはならない。

勇者エーリッヒは、1000年前にドラゴンを倒した勇者の直系の子孫である。エーリッヒ自身も勇者となるべく、幼い時から常に厳しい教育を受けて育ち、心身ともに強靭な男であった。

両親が宮廷魔術師の家に生まれ育った俺も似たような境遇で育てられたから、エーリッヒがどうして強いのか理解している。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()本人が望もうと望まなかったとしても勇者になる以外の選択肢が与えられない人生だった。

俺たちエーリッヒ率いる勇者パーティは皆、そういう星の下で生まれ育ってきたから、いつ、いかなる時も勇者を信じて戦うことが出来た。

戦士ファイターのアーレンも傭兵王の跡継ぎとして、幼いころから戦場をかけまくった荒くれものだったし、

騎士ロードのフェスラーも貴族の3男坊として、幼いころから帝国剣術の英才教育を受けて育ったエリートだったし、

探索者スカウトのカイゼルもギルドの跡継ぎで罠や地形を把握する訓練を幼いころから受けて育ったし、

回復術士ヒーラーのヘルマンドも幼いころから「森の人」に預けられて厳しい修行を耐え抜いて冒険者になった。

皆が皆、幼いころから鍛えに鍛えられたエリート集団だった。だが、その中にいて、やはりエーリッヒは勇者だった。俺たちはいついかなる時もエーリッヒの超人的な強さとカリスマに憧れた。彼は、我々をもってしても超えられぬ存在だった。心身ともに一切の隙が無かった。どんな困難な戦いでも決して挫けぬ心と肉体で俺たちを支えてくれた。俺たちは彼の命令さえあれば、どんな困難な戦いの中でも決して希望の光を見失わずに戦うことが出来た。


だから、邪神の呪いで女体化させられてしまった時も俺たちは、勇者は、平気だと思っていた。

その呪いは大陸最高峰の神殿の司祭長ですら解くことが出来ない呪いであった。つまり、この呪いは一生、彼に付きまとうのだ。俺たちは、落胆するエーリッヒを慰めるもののエーリッヒはすぐに立ち直って歩き出すことを信じていた。


ところが、最近、そのエーリッヒの様子がおかしい。

俺たちと一緒に寝たがらない。

俺たちと抱き合って勝利を喜び合う事をしなくなったし、

俺たちが風呂上りに半裸で歩いていると、真っ赤な顔をしてその場から走り去るし・・・・・

もしかして・・・・

もしかして、これは・・・・・


「おい。もしかして・・・・これは・・・・」

俺たちは男同士、酒場で雁首揃えて勇者の変化について会議をする。

「あれは完全に俺たちを男として意識しているな!」

戦士のアーレンは、麦酒を一気に飲み干すと、空になった容器をテーブルにドンッと音を立てて置きながら言う。これには、騎士のフェスラーも同意する。

「うむ。私もそう思う。時々、エーリッヒが私たちを見る目は、町娘が我々を熱く見つめるそれと同じになっている。」

そして、これについては俺も探索者のカイゼル、回復術士のヘルマンドも同意した。

「どう思うよ。オットー?」

オットーていうのは魔法使いの俺の事ね。俺は大体、こういう場合に意見を求められる。一応、パーティーの中で一番の知識人だからね。俺は答える。

「ここはひとつ、確かめる必要があるな!」

そう、勇者の行動に不審な点はあっても、そこに確かな証拠はない。

まずは確かめるべきであろう!!勇者が心身ともに女性化してしまったのか?という事を。


翌日、俺たちのパーティーは冒険は休みであるので、勇者の行動を監視することにした。

勇者は、朝、冒険者たちがごったがえす終日営業の居酒屋ではなくて、パン屋が営業しているオサレな喫茶店で朝食をとる。

食事が終わると花屋を見て回る。それが終わると勇者は、裏通りにある見知らぬ店に入っていく。

俺たちが付いていこうとすると探索者のカイゼルが慌てて引き留める。さすが、探索者。見つかる危険行為は見落とさず回避するというわけか‥‥‥え?違う?

カイゼルは、脂汗をかきながら、こういった。


「あそこは危険だ!!」

「あの店に置いてあるのは、薄い本ばかりなんだよっ!!!」


薄い本?薄い本があったら何だっていうんだ?要するに旅行のパンフレット的な本が置いてあるんだろう?

あるある。旅行客が地方のパンフレットを持ち帰って、それを売りに出すと旅行に憧れる層が買っていくのだとかいう話を聞いているぞ。

一体、何が危険だというのだ?俺がそんなことを考えていると、騎士のフェスラーが動悸を乱して頭を抱えながら狼狽える。

「なんてこった!!・・・・・・勇者は、女の子になるどころか・・・・・・」

「ただの女の子を通り越して、腐っちまってた!!」

そして、それからうわ言のようにブツブツと「姉上、ごめんなさい」と繰り返すフェスラーをしり目にカイゼルが薄い本の正体を教えてくれた。

さらにこのフェスラーの狼狽えようの正体も知って、俺たちは戦慄した!!

なんでもフェスラーの姉上もお腐れ様で、幼少期のフェスラーは姉上の描いた薄い本を朗読させられたのち、その本の感想を聞かれるという・・・・・虐待めいた経験をして育ったのだという。

「な、なんて恐ろしい姉上だ……」

おれたちは同情してフェスラーを慰めるも、回復術士のヘルマントだけは、鼻息荒く薄い本の魅力について語ってくれた。その時の彼は、とても早口で、しかも万の言葉を用いて、薄い本の名誉挽回とばかりに俺たちに男同士の恋愛の尊さについて語ってくれた。

ようし、わかった。

お前、もう帰れ。それから二度と俺たちと同じ風呂に入るな。


そうこうしているうちに、勇者エーリッヒは紙袋を大事そうに抱きかかえて店から出てきた。

俺たちは出来るだけ店の中を見ないようにしながら、勇者エーリッヒのあとをつける。

ただ一人、怪しげな店の中に消えていったヘルマントを除いてな。


ーヘルマント、戦線離脱ー


まぁ、坊さんはあっちが多いって聞くもんな・・・・・。

俺たちは、今後、ヘルマントとどう付き合っていくべきかという案件を抱えながら、勇者エーリッヒを追わねばならぬ。なんとも気の重い話だが、やらねばならない。なんと言ってもエーリッヒは勇者であり、俺たちの希望の光。エーリッヒが困っていたら、俺たちは支えてやらねばならない!!

俺たち全員が同じことを考えていた。

暫くすると、エーリッヒは洋服店に入る。いや、あれは婦人服店だった。

戦士のアーレンが絶句する。

「マジか‥…」

俺は、アーレンを励ます。

「いや、そりゃそうだろ。エーリッヒは今、女の肉体なんだし。」

俺も励ましながら、(これは厳しいな)と思ってはいた。だから、アーレンが「し、しかしだな。精神が男だったら、仮に体が女性になったからと言って婦人服を着るのか?」という返事を返してきたときに返答することが出来なかった。

だが、フェスラーは言う。

「いや、意外と女物もいいものだぞ。なんていうか魂が解放される気がするんだ。」

「女性下着のみ着た姿で夜道を徘徊すると、私は世界と一つになれる気がするのだよ。」

どうやら、これも幼少期に姉上に着せ替え人形にされたときに身に付いた性癖らしい。

そうか、お前も苦労してきたんだな。

だが、帰れ。

それから、頼むから夜中に憲兵に捕まって、勇者パーティーの迷惑になるようなことはするなよ?


ーフェスラー、戦線離脱ー



俺たちは、何度もフェスラーに釘を刺すと店から勇者が出てくるのを待った。

女の買い物は長い。

これまでの事を考えても、俺たちは、もう確かめるまでもない。

「俺たちの勇者は、もう女になってしまったんだ。」

心の奥底で俺たちはそう確信し始めていた。

それでも、どこかで期待していた。戦場で見せるあの勇敢さを。あの男らしい彼の精神がいまだに残っていることを・・・・・・

だが、店から出てきたエーリッヒを見て、俺たちは、諦めざるを得なかった。

エーリッヒはあまりにも美しすぎた。

俺たちは勇者としてエーリッヒを見ていたので気が付かなかった。

その女性らしい目元。柔らかな唇。豊満な乳房。抱きしめたら手折れてしまいそうなほどに細い腰。

女性を象徴するような長い髪のかつらを被って、真っ赤なドレスに身を包み、撥ねるようなステップを踏んで、嬉しそうに歩く「彼女」の姿を見て、俺たちは、諦めたんだ。



勇者エーリッヒは、もういないんだ。と



俺たちは、オシャレした自分を楽しむ様に散歩を楽しむエーリッヒを置いて、先に宿に帰り、全員で話し合った。そして、エーリッヒを解放してやろうと話し合った。

エーリッヒには女性らしく生きる権利があるし、これからも戦場に立つならば、これからは俺たちが彼女を支えてやらねばならんと、誓い合った。

夕方。俺たちは帰ってきた彼女を部屋に入れて、今日の事を告白した。

隠していたことを暴露された彼女は、フラフラと後ずさりして壁にもたれかかった。

その時、思わず腕から落としてしまった紙袋からは、女性ものの服や薄い本が落ちて床に散らばった。


「ああっ!!」

秘密の中身を見られて半泣きになったエーリッヒが慌てて、下着や本を拾おうとしたとき、フェスラーが歓喜の声を上げる!!

「こ、これは!!アルヴィリア商店のブラジャー!さすが、エーリッヒだ!!()()()()()()()()()()()()!」

「これは本当に素材がスベスベだし、軽くて型崩れしない。最高だよ!」

おい、やめろ。そんなこと聞きたくねぇよ。だが、エーリッヒは両手を結んで、キラキラした瞳でうんうんと何度も頷いた。

うんうん、よかったよかった。エーリッヒが解放されて!!

・・・・なんて言うかよ、アホたれがっ!!

お前ら、へんな友情で結ばれてんじゃねーよ!!


「ああっ!!これは!!ラウラ先生の新刊っ!!いーなぁ!!さっき、俺これ買えなかったんだ!!」

おい、よせ。このお腐れ男子、話をややこしくするなっ!!

「ヘルマントも、ラウラ先生のこと好きなの?」

「うんうん!!絵が耽美ですきっ!」

意気投合してんじゃねーよ!!と、思ったら、本の内容を確認したヘルマントが「え、これフェスラーが受けなの?」と不満を言う。その言葉にエーリッヒの顔が一瞬で曇る。

「は?・・・・・なに?アーレンが受けとかありえないんですけど?傭兵と貴族だったら、耽美な貴族が受けでしょ?」

「・・・・・いや、フェスラー受けとか公式設定、無視してると思うんだけど?」

「は?」

「なに?」

おー?戦争かぁ?

て、いうーかっ!!これ以上、わけのわからない情報で俺を混乱させるのはやめろーっ!!!


だが、その戦争は3日3晩続いた。

俺たちがむくれるエーリッヒに話を聞いてもらえたのは、4日目だという事だ。

「・・・・・・絶対にフェスラーが受けだもん・・・・・・」

いや、それはもういいから。

「エーリッヒ。聞いてくれ。俺たちは、お前がどうしたいか聞きたいんだ。お前が女として生きていきたいなら、俺たちはそれを尊重するし、男としてお前を守る。」

戦士のアーレンが静かだか強い意志を感じる言葉で語り掛けると、エーリッヒは、これまで耐えていた感情が堰を切ったのか大粒の涙を流して「女の子として生きたいのっ!」と、告げた。

俺たちは、彼女の手を取り、肩をさすってやりながら「わかった。わかったよ。」といって、彼女が泣き止むまで慰めてやった。

これから、俺たちも変わらねばならない。勇者の補佐ではなくて彼女を守る盾としてしっかりしなければならない。これまでエーリッヒがやってきたように、今度は俺たちが彼女の希望の光にならなけらばならないのだ。



だが、問題は終わってはいなかった。

いや、むしろ問題は今始まったのだ!!

なんとアーレンがエーリッヒを妻にすると言い出したのだ!!

「エーリッヒは勇者の血統だ。必ず強い赤ちゃんを産む。俺の一族をさらに強くしてくれる!」

おいおい、ちょっと待てよ?抜け駆けか?

俺はカチンときた。

そりゃそうだろう。実際問題、女性になったエーリッヒは美しすぎる。

ドレスをまとって舞踏会に出れば、宮殿に集まった男どもは誰もが彼女に求婚するはずだ。

それにな、俺は見たんだ!下着が床に落ちたときに、犯罪的なカップ数をしていた勇者のブラジャーのサイズをなっ!!今まで押し隠してやがったんだ!

だが、爆乳の持ち主と分かれば、オッパイマイスターの俺は見過ごせねぇな。

「悪いが、エーリッヒを狙っているのはお前だけじゃねぇぜ?」

俺は両腕を組んでアーレイを睨みつけて威嚇する。

しかし、探索者カイゼルも負けていない。こいつも、こいつでボーイッシュマニア。元男のエーリッヒは理想の美女というわけだ。

俺たちは暫くにらみ合ったのちに、エーリッヒに詰め寄った!!

「俺たちのうち、誰が一番いいんだよっ!」



すると、真っ赤な顔してエーリッヒが困り切ったように「皆、顔が近いよぉ~」といって、部屋の外へ走り去ってしまった。

その可愛い後姿を見ながら、俺たちは、あらためて俺たちの勇者が、女の子になったと思った。

そして、そんな俺たちにお腐れ男子が

「性急すぎる。エーリッヒには自由恋愛の権利がある。」

「男らしく正々堂々、誠心誠意をこめて女性としてエーリッヒに接しろ。」

「その後に、エーリッヒに選んでもらうべきだ!」

と言ってきた。

うむ。正論だな。

俺たちは、ズルを一切しないことを誓って、花嫁争奪戦を始めると誓った。

おーし!マジで戦争だな?

やってやろうじゃねーか!!

俺達は必ずエーリッヒを嫁にする。そう誓うのだった。



(おわり)
















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