キミは、おにぎれるのか?
おにぎりを食べたことがなかった。
はじめて食べて衝撃を受けた。
にぎるだけで味が変わる。
こんなにも別物になる。
幸せが溢れる。
はじめて日本に来た。
アニメが好きでやって来た。
でも、今はすっかり、おにぎりの虜だ。
それから、どっぷり恋をした。
日本の男性に。
もちろん、おにぎりにも恋をしているのだが。
結婚になった。
とんとんと話は進んだ。
彼の実家を訪れた。
おにぎり屋だった。
父親はおにぎり職人だった。
父親と対面した。
第一声、彼の父にこう言われた。
「キミは、おにぎれるのか?」
「はい」
好きで、自主的に勉強していた。
だから出来た。
実践することとなり、にぎると上手く出来た。
おにぎれる感覚は、サイコーだ。
彼の父が、それを食べたとき、優しい笑顔になった。
はじめての笑顔だった。
おにぎりをにぎったときと、同じくらい、相手の心をにぎることは、嬉しいことだ。