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てやんでぇ婚約破棄(連載版)  作者: ほすてふ


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27/31

27.終息

注意!

本日0時投稿の「26.砂糖の危機」に間違った内容を投稿していました。2時13分に修正しました。

申し訳ありませんでした。


本日複数回投稿しています。本日の最初は「26.砂糖の危機」で、この話は二本目です

読み飛ばしの無いようご注意ください。

「教会は悲鳴を上げているようですよ」

「まあ、まだ一か月しか経っていませんのに」


 教会から販売停止要請を受けて一か月。

 エリザベスを取り巻く環境が少しばかり変わったが、概ね問題なく過ごすことができている。


 熱心な唯信教信者の家からは距離を取られたくらいだ。それらのほとんどは西部の諸侯なので直ちに影響はない。

 王都の砂糖流通は公には停止し、闇砂糖がはびこっている。闇砂糖を持ち込んでいるのは遊牧民系の東方商人である。不正規取引のために末端価格は絶賛高騰中。

 しかしエードッコ家には影響はなかった。

 販売を停止されたなら自前で作って持ちこめばいいじゃない。

 王家からも強い要請を受け、贈り物として渡している。こっそりと。


 エリー商会の収益は懸念されたほど落ち込まなかった。

 国外に持ち出したうえで遊牧民系商人に卸すようになったのだ。

 唯信教の勢力圏外でミャーコ王国外となれば教会も文句をつけられない。

 砂糖を大量に扱える遊牧民系商人は大喜びで東西南北に砂糖を運んで行った。

 同じ外国商人でも、西方系商人に対しては国内同様に販売を停止している。


 想定よりはるかにマシだが、砂糖に制限を受けていることに変わりはない。

 それで平気な顔をしていられるのは教会と我慢比べをしているからだ。

 平気な顔をしてないと負けた気分になる。


 どういう我慢比べをしているのか。


 まずエリー商会は教会からの通告を受け、これを受け入れた。

 つまりミャーコ国内の砂糖の流通の停止をだ。すぐに東方国外で取引を始めたが。

 同時に取引先すべてに対して謝罪と連絡を行った。

 砂糖の取引を停止する。問い合わせは教会へ。

 さらに所有する掲示板にも同じ内容の張り紙を。

 その上で質問や苦情に対しだんまりを決め込み、ただ教会へ、と。

 砂糖取引は国内外の商人と行っていた。

 国内においては各貴族家の御用商人から食料品を扱う木っ端商人まで。

 国外においては国境をまたぎ商う許可を持つ大手商人が主な相手であった。

 砂糖はすでに国内に浸透し、また国外にも広がりつつあったのだ。


 また、教会に対し砂糖を治めた。悪魔の食べ物かどうかよく調べてくれと。

 定期的に人目につくように結構な量を。


 さらにエリザベスと、王妃が砂糖が手に入らなくなってお茶会が寂しいねそうだねと噂を広めた。自分たちはこっそり摂取しているのに。

 なぜ教会は流通を止めさせたのか。ぷんぷん。

 信者ではない者が教会の勝手なに従う必要はあるのか。ぷんすか。


 学園の、そして王家と付き合いのある、つまりすべての貴族家のうち、多くの女性陣が集まるお茶会での話題はあっという間に砂糖の取引停止とその不満に席巻された。

 様々な立場はあるとはいえ、この数年の間に皆砂糖のとりこになっていた。教会の悪魔の食べ物という主張は間違っていないかもしれない。だが彼女らはそんなことは認めなかった。甘いもの万歳。


 それとは別に、蜂蜜の売れ行きが落ちているという噂が市中に流れ始める。

 蜂蜜の権益を教会が独占しているのは周知の事実である。

 希少だからと高額で販売していることも。だから皆甘いものになかなかありつけなかった。


 砂糖の販売停止と不満。砂糖を受け取っている教会。

 なぜ、に対してお問い合わせは教会へとしか答えないエリー商会。

 蜂蜜の売り上げ不振。


 これらの要素が重なった時、皆が好き勝手な想像をして新たな噂が生まれ出る。


 曰く。教会が砂糖のせいで蜂蜜が売れなくなったと難癖をつけて販売を停止させたのだ。

 いやいや、教会は砂糖の生産法を奪い取って蜂蜜のように独占して高値で売りつけようとしているんだよ。

 実際闇砂糖が高値で取引されてるしな。

 あいつら遊牧民系の商人だよな。唯信教関係なければ売れるんだな。

 改宗するか。

 馬鹿そんなことで改宗とか言い出すんじゃない。

 教会が砂糖の取引してるらしいところをみたぞ、遊牧民系の商人と。

 なんだってー! あいつらグルだったのかー!


 噂である。

 やつらは独り歩きするもので、教会は砂糖と蜂蜜を使って世界征服を狙っているなどという妄言も飛び出していた。

 ただ、不思議と方向性は一つの方向へ向いていた。

 教会おかしい。教会ズルい。教会は何を隠しているんだ。教会に問い合わせだ。


 教会は砂糖が目障りだから消えるか教会のものになれと言い出しただけ。それも大々的に発表したのではなくまずはエリー商会に通告しただけだ。

 あわよくば製法を盗み理屈をつけて独占して財源にしよう。そういう目論見だ。もちろんそれは最良の結果であってそこまでうまくいくとは限らないが、いくらかの権益は得られると踏んでいたはず。

 そしてエリー商会の対応次第では悪魔の食べ物と認定して排除するのだ。そうなれば蜂蜜の売り上げも元に戻る。そういう狙い。


 これに対してエリー商会は初手で情報を選別して拡散した。

 現在エリー商会の情報発信力は、国内でも一番と言って過言ではない。

 口コミの世界に大量の掲示板と紙媒体を持ち込み独占管理しているのだ。

 更に砂糖の流通ルートもそのまま情報拡散ルートでもある。

 教会の横暴を匂わせ、複数ルートで噂を広げ、世論を暴走させた。


 その結果、教会に国内外から多数の苦情や問い合わせ、遺憾の意、懸念の表明などが集まった。

 その結果処理限界を超えてパンクすることになったのだ。

 今日も王都協会に貴族の使者や料理店・菓子店の使い、市民などがわんさか集まっている。


 ここまで一か月の出来事である。

 すべては砂糖の中毒性の力であろうか。やはり砂糖は悪魔の食べ物……? でもおいしいからいいか。エリザベスは考えるのをやめた。

 まあ東の神の書にあったものだし平気だろう。



 教会の目論見がこのような結果になったのは、エリー商会がちょっとおかしいということを把握しきれていなかったからだろう。

 具体的には暴発屋のエリザベスが陰で牛耳っているということ。そしてエリザベスの性格について。

 学園での淑女生活で我慢を重ねていたこと。本来ならもっとカッとなってガツンというやらかしが数多くあっただろうに、学園では外面を維持しきっていたのだ。

 ついでに王妃が砂糖狂いだったことも想定外だっただろう。エリザベスにとっても想定外だったくらいだ。


 はじめは様子を見ていた貴族たちも、各家の砂糖の備蓄が切れて数日たつあたりから順次砂糖要求勢に合流。妻や娘からの突き上げに屈した形だろう。貴族本人が我慢できなくてガンガン苦情を送りつけているなんてことはない、かもしれない。


「それでは時機を見て例の件を」

「承知しました」


 想定の範囲内で状況が推移していることに満足したエリザベスは、詰めの指示を出した。と言ってもタイミングはショーン任せだ。


 結果を言うと、この話し合いから一週間待った。









 ショーンはエードッコ侯爵領の教会で、神官と密談を行った。


「では、今後教会に対するエリー商会の砂糖の取引窓口は神官様に一任するということで」

「よいでしょう。件の通告を取り下げるよう働きかけます」


 その内容は、侯爵領教会をまとめ役個人を砂糖取引の窓口とする代わりに、砂糖の取引の再開を認めさせるよう働きかける。

 そういう取引だ。

 王都教会は今大混乱中で侯爵領教会もまた問い合わせが殺到している。

 それでも侯爵領教会の方がいくらかマシである。

 また、今回の騒動の引き金を引いたのは王都教会のまとめ役の神官だった。

 この混乱を解決できれば教会的にはお手柄である。

 おまけに教会の砂糖取引を独占できる。

 現王都教会のまとめ役を引きずり下ろし、僻地で信者も少ないエードッコ侯爵領教会から出世ししかも砂糖の権益を握ることができるということで神官様は張り切った。


 最終的に、最初の通告から二か月で砂糖は悪魔の食べ物ではないという発表があり、砂糖の国内流通が再開された。

 再開と同時にエリー商会-教会間の砂糖取引独占権を握った神官は、問題解決の手柄をもって、やらかした元王都教会の責任者を蹴落とし後釜に座った。ミャーコ王国教会勢力の頂点となったのだ。


 これをもって教会による砂糖流通停止騒動は幕を下ろしたのだった。

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