01.かけつけ3杯は辛い
また連載ものをに手を出した。
基本ゆるゆる。
事実は小説より奇なり。
世の中、小説に書かれているものより奇なるものは多い、と俺は確かに思う。
例えば、父親。ある日の仕事帰りに、いつもは車で1時間もしないで帰る通勤道を2時間くらいさ迷ったという。狐に化かされたんだと言っていた。
例えば、母親。母が子どもの頃、夜の内に家の玄関に浮浪者がいつの間にか居て、朝ごはんを家族と混じって食べて去って行ったとか。それ以降あった事は無いと言っていた。余談だが、朝ごはんは夜ご飯の残りだったそうだが、使われた肉は病死した飼い犬をだったそうだ。美味かったそうだが、もう二度と食いたくないと言っていた。
例えば、従妹。昔彼女の両親がお土産で買って来て、いつの間にか行方が分からなくなっていた観音様が彫られたブレスレット。それを夢の中で見つけて、まさかなーと思いつつ現実で同じ場所を探したらそこから出て来たとか。
後は友人とか、後輩とか……。まあ、否定する人は居るには居ても、やっぱり不思議な事って言うのは、思ったよりも多く起きているもんだ。
「はーぁ……あ?」
「あ。」
そんな例にもれず、俺もそんな不思議な事を体験している人間の一人だ。
大学生活を始めてからそのまま住んでいる、築40年ほどの格安アパート。キッチンと玄関がある部屋とリビングを仕切るドア。そのドアからパッと見は不審者全開の、だがよく見れば品の良い男が立っている。
「……。」
「……。」
いい年した男2人。無言で見つめ合う。
「……マスター、ビール一杯くれ。」
「誰がマスターか。ビールはノンアルしかねぇけど良いか?」
「チューハイは?」
「レモンならある。」
「じゃあ、それくれ。」
「久しぶりに会ってそれってどうなんよ、魔王さん。」
「飲まないとやってらんないんだよ……後、ここで魔王言うなよマキ。」
だいぶお疲れなようだ。
適当に座ってろと言って、冷蔵庫からレモンの缶チューハイと、グラスに俺の晩酌のお供をついでに用意してやる。
事実は小説より奇なり。
現代日本に住んでいながら異世界の魔王と幼馴染で友人関係なんて奴、他にいたら教えて欲しい。
ラストは決まっているけれど、山も谷もあるのは魔王サイド。主人公サイドは基本飲み食いくらい。