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転生した悪役令嬢が(物理的に)強すぎて1話で完結しちゃったんだけど、まぁ誰も不幸になってないしいいよね?

作者: 玲来

思いつきで書いたからストーリーグズグズかも。






「お前とは婚約破棄する。2度と俺の前に姿を見せるな!」


大きなホールに響く、男の声。怒りを含んだ声を上げたのは、この国の王子、フィール王子だ。


「ユシアをいじめたようだが、お前の悪行もここまでだ。」


ユシアと言われた少女は泣き真似をする。王子の後ろに隠れた彼女は1人ほくそ笑む。全て自分の思い通りになったのだと。


ユシアは日本人だった前世でハマった乙女ゲーの主人公気取りで婚約者を嵌めた。逆ハーを形成するために。


既に彼女の策に嵌ったアホな男は何人かいる。彼女はやり手なのだ。


ユシアに操られた王子に婚約破棄を言い渡されたのは、王子の婚約者"だった"伯爵令嬢、メル。


無口で大人しい彼女はなにも反論しない。ただうつむいている。


「私、影でメルさんに叩かれたりして……。いつも大人しい人だから信じられなくって……。」


これがユシアの常套手段。これで騙された男を数えるのには両手の指では数え切れないだろう。


「なんて酷い!」「ユシアちゃんを泣かせるな!」


事実を知らないアホがメルを責め立てる。


「何か言ったらどうだ?今までしてきたことがばれて焦っているのか?」


王子はハンっと小馬鹿にしたようにメルにそう言い放った。


「……王子、私にもいいたいことはありますわ。」


メルが口を開いた。余り喋らない彼女の声は美しく透き通っており、それだけで単純な男達の心が揺れ動く。


「フンっ。言ってみろ。」


どこまでも傲慢に、上から目線で王子は言葉を紡ぐ。彼は別れたくないと喚くのか、それともユシアに謝罪するのかと考えていた。


「私が言いたいのは―――――――――――」


だれもが彼女が次に言う言葉をしっかり聞き取ろうと静かになった。静寂の中、彼女が放った言葉は……。











































「「オメェみたいなゲロ以下のゴミカス如きに上から目線で物言われるのが腹立つんだよこのクズ!!!!!」」


清純そうな彼女からは考えられない罵詈雑言だった。





「え?え?」


王子が戸惑う。無理もない。今まで大人しかった婚約者が美しい顔を最大限ゆがめて綺麗に中指を立てているのだから。


「いじめてただァ?こちとらお前が遊び呆けまくって溜めに溜めた仕事をやってやってんだぞ!!そこのアバズレかまってる暇なんざねぇんだよ!!そのゆるゆるな頭とシモを何とかしてから俺に文句言ってみろ!!!ジャーマンスープレックス決めてやる!!!」


一人称が俺になるほどブチ切れている。一応今はパーティー中で色々な貴族が集まっているが、誰1人として声が出せないせいで完全にメルの独壇場になっている。


「あーくそ腹立つ!!!なんで俺はこんなやつと婚約しなきゃいけねーんだこんなちんちくりんの七光りクズとよォ!」


大きな舌打ちをしドレスを着てるとは思えない速度で王子の元へ走る。あまりにも早すぎて王子は対応できなかった。


「オラァっ!!!!!これは一緒に仕事を手伝ってくれた俺のメイドのアンナの分じゃ!!!!!」


ガっと音を立てて見事なプロレス技を決めた。


「さすがお嬢様!!見事なパイルドライバーですわ!!」


サラッと入ってきたが、この人はメルの専属メイドのアンナ。一応転生者。プロレスが大好きで、よく見に行ってた。


多分もうわかってる人もいるかもしれないが、メルも転生者だ。前世では無敗のプロレスラーで、「魔神」という2つ名を付けられるくらいで、彼女の名前を聞いただけで相手が泣いて逃げ帰ったという逸話まである。普段は大人しいのだが、怒りのボルテージが上がったり、試合の時は口が悪くなってしまうのだ。


「そしてこれは俺が無駄にした時間の分!!!」


「きゃあ!出たわお嬢様の得意技!キャメルクラッチよ!」


ステキー!と声援を送るアンナ。その他はポカーンである。当たり前だが、ここは日本とは異なる世界。プロレスが無いので技名も分からないので??マークが飛び交っている。


「そしてこれは!!!!!」







「俺が今まで我慢してた全てを詰め込んだ分だァー!!!!」


「キャァァァ!!出たわお嬢様の奥義!ウラカン・ラナ・インベルティダよ!!!ステキー!」


え?何それ?みたいな顔でアンナの近くにいた貴族がアンナを見る。


「は?あなた知らないの?ウラカン・ラナ・インベルティダよ?高角度後方回転エビ固めよ?お嬢様の見せ場よ?もっと喜びなさいよ!!」


満身創痍の王子を後目にメルはぺっと唾を吐き、


「今度こんなことしたらテメェのケツに火薬ぶち込んで火ィ付けるかんな」


そう言ってパーティー会場を後にした。























「あぁぁぁぁぁ……。私ったらなんてことを……。」


我に返ったメルは自分の部屋で1人落ち込んでいた。自分の昨日の行いを振り返っているのだ。


「前世もそうだったけど……。どうも興奮したり怒ったりすると人格が変わったようになっちゃうのよね……。」


「お嬢様、昨日はとても素晴らしいプロレス技を見せて頂いてこのアンナ、感激ですわ……!!」


アンナは目を輝かせる。


「どうしましょう……。不貞を働いたとはいえ王子になんてことを……。それにあのユシアさんも引いておられましたわ……。合わせる顔がありませんわ……。」


コンコン、とノック音。


「ひょえ!」


昨日王子にプロレス技を決めて唾を吐きかけた人間とは思えないなんとも間抜けな声が出る。


「どなたですか?」


アンナが代わりに扉を開けると、そこにはユシアがもじもじして立っていた。


「ど、どどどうなさったのですか?」


若干、というより結構動揺した様子でメルは問掛ける。


「あ、あの……。昨日、のパーティーに関係する話、なんですけど……。」


ドキ。とメルの心臓がはねる。


「わ、わわたくししにななにかかか……?」


「お嬢様動揺しすぎです。」


「あの……。メルさん……。いや、()()()!!!」


「ほえ?」


「お姉様と呼ばせてください!!!」


顔を赤らめて言うユシア。昨日のメルの行いで、ユシアの新しい扉を開いてしまったようだ。


「え、えええええ!?」


「お嬢様、新しい扉を開いたみたいですよ彼女。お嬢様マゾに人気あるんですよね。」


「えええ!?初めて知ったんですけどそれホントですかアンナ!?」


「ええお嬢様、王子の仕事を代わりにしてる時、イライラしてたでしょう?その時に裏のお嬢様が出てましたよ?その時あなたの元に行ったメイドと執事が何人か新しい扉を開いていましたよ?」


「初耳です……。」


「多分この調子だと王子も来ますね。」


「おい、メルはいるか!!」


「うわホントに来た!!」


「お姉様……。ハァハァ……。」


やれやれ、とどこか楽しそうに言うアンナとM属性が増えて変態へと進化したユシア、さらに顔を赤らめた王子まで来てメルは混乱してボルテージが上がり……
















「こっち来んなクズどもがァ!!!!」


裏のメルが出てしまった。あと、


「「ありがとうございます!!!」」


恍惚の表情でメルを見つめる王子とユシアがいたりいなかったり。






















後日、ユシアは他にも誑かした男がいたのがバレ、牢屋に入れられた。しかし彼女が反省しているのと、メルが情けをかけたおかげですぐに出られた。今はメルの元で侍女として働いている。メルを見る目が若干怪しいが……。


王子は父親である国王から叱られ、正式に婚約破棄が行われ、メルへの接触禁止命令が出された。王子が渋ったが、国王には逆らえないのか渋々了承した。しかしたまにメルに鞭を渡そうとしている王子が発見されたとか……。


パーティー会場にいた貴族の間では、「怒らせてはいけない人物」と恐れられたり、扉を開いた一部の貴族が『メル様に踏まれ隊』を結成したりしたが、それも別にどうってことない話である。

















「私は嗜虐的な趣味はありませんと言っていますでしょ!だからその鞭を渡してくるのやめてくださいまし!!鞭は使ったことありませんわ!!!」


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