表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

2、勇者一行との顔合わせ

とても久々の投稿です。

文章可笑しかったりしたらすみません<(_ _*)>

ブックマークして下さっている方々、読んで下さる方々、ありがとうございます!

ソリス大神官に笑顔で、強制的な勇者一行への同行を告げられた翌日。正直、朝から憂鬱だった。

「リラン様、起きて下さい。本日は勇者様御一行との顔合わせがあると、ソリス大神官が仰られていたじゃないですか」

「うぅ…やだー…眠いめんどくさい」

「もう、取り敢えず…起・き・て・下・さ・い!」

枕に顔を埋めて呻いていたら、ジェミニに思いっきり掛け具を剥ぎ取られた。枕から顔をのろのろと上げると、ジェミニが掛け具を抱えて「やれやれ」とでもいうような表情をしている。

「…ジェミニ、強くなったねぇ…」

最初の頃はなかなか起きない僕を、どう起こしたらいいかとおろおろしていたのに。

「何言ってるんですか…それより、御召し物はちゃんと用意してありますから、早くお着替えになって下さい」

「ふぁ…ん、はいはい」

何処か呆れたように言うジェミニに従って神官服に着替える。

そして、普段は着けない耳飾りを付ける。

鏡の前で、一応髪を軽く整えて、準備完了。

「それでは、木蓮の間に参りましょう、リラン様。勇者様御一行は其処にて、お待ちのようです」

そう言って、綺麗に一礼したジェミニの言葉に首を傾げた。

「…え、もう、来てるの?僕、お昼過ぎてからくらいだと思ってたんだけど」

「何で起こしたとお思いですか…どうやら、近隣の魔物を退治した帰りらしいです。ちょっと早いですが、そのままいらしたみたいですよ?」

「うん、早いよー。もうちょっとゆっくりしたかったー…」

「折角お着替えなさったんですから、ほら、行きますよ!」

「わかった、わかった」

ジェミニに背中を押されるようにして自室を出る。

シャラ、と耳元で耳飾りが揺れる音が幽かにした。



ーその頃、木蓮の間では。

「なぁ、俺達に同行してくれる神官さん、まだですか?」

「こら。此方が予定より早く来てしまったんだから、待つのは当然だろ?

すみません、ソリス大神官」

ソファーに座った赤茶色の髪の青年がそわそわとしながら言うのを、その隣に腰を下ろしている背の高い、騎士の鎧を纏った青年が嗜め、向かい合った藍色の髪の人物に頭を下げる。

藍色の髪の人物ーソリス大神官は、穏やかに微笑を湛えたまま、いいえ、と首を振った。

「此方こそ、御待たせして申し訳ありません。御到着なされてから直ぐに呼びには行かせているのですが、何分、あの子は用意に時間がかかるもので…」

申し訳なさそうに言うソリス大神官に、鎧を纏った青年ークロウ・アドヴェルド・バーンズは首を振り、笑った。

「お気になさらないで下さい。先程も言った通り、もとは、此方が予定より早く訪問してしまったのが悪いのですから」

クロウとソリス大神官がそうやって会話している間に、赤茶色の髪の青年ー“勇者”ミリオ・ランゲスタは、緋色と緑色の髪の二人の少女にこそっと話しかけた。

「なぁなぁ、フェリア、モニス。同行してくれる神官ってどんな人なんだろな?」

「さあね。ひょろひょろしてるんじゃないの?」

「ふーん、ひょろひょろか~…それで旅って、出来んのかな?」

「そんなの、私に言われても知らないわよ」

緋色の髪の少女ーフェリア・サリスはプイッと横を向いた。

「じゃあ、モニスは?どう思う?」

「ふぇ!?わ、私、ですか?え、えっと…」

緑色の髪の少女ーモニス・カーディアンはビクッとして、両手の指をもじもじと絡ませながら、俯きがちに言った。

「ぜ、全然、分からないです、けど…こ、怖くない方だったら、いいな、とは思い、ます…」

二人の言葉に、ミリオはふむ、と顎に指を添えた。

「ひょろひょろしてて、怖くない人、か…全然大丈夫そうに思えないんだけど…」

眉を寄せる彼の様子に、クロウと会話していたソリス大神官は小さく笑い、こう言った。

「ふふ、あの子は怖くは無いと思いますよ?まぁ、細身ではありますけど」

「え、どんな人ですか?もっと具体的に!」

ソリス大神官から与えられた情報に、思わず身を乗り出すようにして尋ねると、クロウに軽く頭を叩かれる。しかし、これから旅を一緒にする人物がどんな人間か、やはり興味はある。

「具体的に…そうですねぇ、優しい子ではありますね。何だかんだ言っても、結局は見捨てることが出来ない」

「へぇ~、優しい人なんだ!」

「ええ、とても。傍目には分かりにくい優しさのときもありますが、分かる人間には優しいと分かるのです。…ただ、本人はそのことを認めようとはしませんけどね」

ソリス大神官はそう言いながら、懐かしそうに、愛しそうに目を細める。その様子から、彼がその人のことをとても大切に思っているのだと分かる。

更に詳しく訊こうとしたとき、扉がノックされた。

「はい」

「ジェミニです。お連れしました」

「どうぞ、入って下さい。皆様、いらっしゃっていますよ」

そう。実は、喋ってはいないが、あと二人、この部屋にはいた。クロウの弟ーセシル・アドヴェルド・バーンズと、エルフの青年ーニオ・ラシンドス。この二人も、旅に同行する。…実はまぁ、どうしても、と自ら希望して旅に同行する人物がもう一人いるのだが、本日は来られなかったのだ。

ソリス大神官の返答を受けて扉が開く。そして姿を見せたのは、金髪を肩口で切り揃えた少年。入って来ると、綺麗に礼をし、上げたその顔は軽く驚く程整っていた。

金の髪は窓から入る光を吸収したかのように輝き、その瞳は翡翠(ジェイド)。一見して、何処ぞの王族では無いかとも思ってしまう。

この人が自分達の旅に同行してくれるのだろうか。それにしても、とミリオは首を傾げる。若すぎる気がする。もうちょっとこう…自分と同い年、いや、クロウより年上の人をイメージしていたのだ。しかし、彼は15歳くらいにしか見えない。でも、偏見はいけない…と納得しかけて、「ん?」と思う。さっき、彼は「お連れしました」と言っていなかったか?

「ほら、早く御入りになって下さい。ソリス大神官に指名されたのは、貴方様なんですから」

ジェミニと言った金髪の少年がまだ少し開いたままだった扉の方に呼び掛ける。すると、

「…解ってるよ」

ぽつり、と呟く声がした。そして、今度は本当に、同行してくれるという人物が入って来た…途端に、その人物から目が離せなくなった。

月光を紡いだかの如き銀の髪は艶やかに、長めの襟足が緩やかに前へと流れている。伏し目がちな瞳は琥珀(アンバー)で、肌は雪みたいに白い。身に纏っているのは特別変わったところは無い白の神官服。しかし、それすらもその人を清らかに引き立てるものでしか無かった。ー…つまるところ、とても綺麗だったのだ。

じっと見詰めるミリオを意にも介さず、ソリス大神官に手招きされて彼の隣に腰を下ろした。その背に手を添え、微笑みながらソリス大神官は言った。

「この子が、私が推薦して貴方方の旅に同行することになった神官です」

「…物凄く不本意ですけど」

「リラン?」

「はーい…」

ボソッ、と顔を背けて言葉を発したが、嗜められたようで、先程背けた顔を戻し、真っ直ぐにミリオ達を見据える。

「リラン・ディールです。面倒事は大嫌いなので、甚だ不本意ですが、どうぞよろしく」

嗚呼、瞳の色は琥珀(アンバー)なんだ。あ、でも金色が強い?

…なんて、此方を見据える美しい瞳に見入っていたミリオだったが、その自己紹介にはた、と我に返った。

ん?待てよ、今、“不本意”と言わなかったか?しかも、“甚だ”まで付いていた。

魔王を倒し、世界を救う為の旅。其処に推薦されて同行するのだから、当然、本意のもとだと思っていた。それは、他の仲間も一緒のようで、思わず見渡した顔は、程度は違えども各々驚きを含んでいる。

クロウはちょっと目を見開いてきょとん、とした顔、フェリアは淑女がそれでいいのかと思うくらいにぽかん、と口を開け、モニスは目を瞬かせながら口を手で覆い、セシルは片手をあまりずれない片眼鏡(モノクル)にやり、ニオは眉を上げた。

そんな反応を気に留める素振りも無く、リラン・ディールと名乗った神官はソリス大神官に顔を向け、「もう部屋に戻ってもいいですか」等と言っている。

「い、いやいやいや!ちょっと待てよ!あんた、リラン…?って言ったか?“甚だ不本意”って何だよ!」

「そ、そうよ!世界を救う為の旅なんだから、同行できるのを喜ぶべきじゃないの!?」

自己紹介をしただけで此方には一瞥もくれず、淡々としている神官に大声で言うと、呆けていたフェリアも食ってかかった。

それに対して、視線を向けて一言。

「何で?」

「何でって…!魔王を倒せば英雄よ!?地位も待遇も…」

「…あー、もうさー」

先程までは淡々としていた口調が変わる。目の下に伸びる前髪を弄りつつ、ゆぅるりと口角を上げて口を開いた。

「めんどいし、疲れるから戻すけど、それ、僕にとってはどうでもいいんだよー?

地位や待遇なんて、別にこのままでいいし~」

「でも…!」

「一つ、言っておくとね~?僕、“面倒事は大嫌い”って言ったでしょ?これ、その“面倒事”に入ってるから」

間延びしたような口調で話し、続ける。

「それに、その栄光は“成功すれば”、という仮定のものであって、確実じゃない。」

美しい、その微笑を崩さずに軽く首を傾ける。

「そんな不確実なものの為に、僕は命を賭ける気は無い。当たり前じゃない~?まぁ、でも、結局は行かされる訳なんだけど。

それで、喜ぶ訳無いでしょ?

…大体、死にに行くようなものだろ」

絶句した。

確かに、そうだ。全力を尽くしても、魔王が倒れる確証なんてものは無い。自分達が生きて帰れる保証も。下手すれば、自分達だけが倒れ、魔王は世界を滅ぼす未来だってー…

そこまで考え、頭の中で打ち消した。美しい顔で飄々としている神官を睨み付ける。相手は怯むこと無く、見返して来た。

「まぁまぁ…落ち着いて下さいませんか、勇者様方。…リランも、口が過ぎますよ」

やんわりとその間に入って来たのはソリス大神官だった。困ったような表情で、そう嗜める。しかし。

「…。じゃあ、仕方ないので、旅ではどうぞよろしく」

神官は少し黙って、それから一言言い放って、何だかわざとらしく礼をすると勝手に出て行った。



リランは、木蓮の間を出て、振り返らずにずんずん廊下を歩いて行く。

それは普段の“怠惰”と言われる彼とは比べ物にならない程、速く、少し荒っぽい歩き方だった。

追いかけて来たジェミニがリランに追いつく。

「どうなさったんですか、リラン様!今日のリラン様は普段と違っておられるように感じましたが…」

「…ごめん、何でも無ーい。唯、あの人達が喜んで当然、みたいなこと言うから、ちょっとムカついただけ~」

「本当ですか?それだけでは…」

「それだけ、だよ」

そう、ジェミニを言いくるめる。半分嘘で、半分本当。

確かに、ムカついた。命を捨てるようなことなのに、それを喜ぶべきことと言う彼等に。けど、それだけじゃない。

…ずっと、“黒”がちらついていたのだ。彼等が、“魔王”という言葉を言う度に、ほんの一瞬、不意に脳裏を“黒”が染める。

瞬きをする間くらい短い、それは頭痛を引き起こした。

そのまま、ジェミニにはもう今日の世話はいいから、と言いつつ、振り切るように自室に戻る。

神官服を脱ぎ捨て、簡素な寝間着を着て、ベッドに倒れ込んだ。

(頭、痛い…何でだろう…でもそんなの、今はどうでもいいや…)

心の中で呟いて、目を閉じ、息を吐いた。


ー…こうして、一応、顔合わせは終了した。

神官と勇者、双方がお互いの印象を悪化させて。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ