奴隷承認
「はぁ」
間島さんはとても怒っている。
「はぁ」
もう1回言うと、間島さんは怒っている。
「はぁ」す
しつこいが、間島さんは怒っている。
商品を運んだ帰り、パトカーに車を止められたからだ。
「ふざけるな、どういうことか説明してもらおうか?」
「そんなことをおっしゃられても……通報がありましたから」
間島さんは新米警官と揉めていた。ベテランの警察官がまぁまぁと間島さんをなだめる。
「こちらに違法に少女を監禁してるとの通報がありまして。それで、奴隷疑惑というべきですが……」
ベテランの警察官によると、匿名の「少女が違法に監禁されている」という通報があったらしい。警察としては奴隷取引、所持が禁止されている現代でそのようなことは許してはならないとのことだ。
それで、わざわざ車ごと止めるなんてご苦労なことだ。
「言っておくが、この子は私の養子となっている。その証拠に彼女は間島という名字だ。この国には義務教育はないし、問題はないはずだが」
「そ、それでも。重労働、監禁は禁止されています!!」
新米警察官は必死だった。だが、間島さんは鼻で笑った。
「証拠は?」
「それは……通報がありましたし……」
新米警察官は少し元気がなくなった。間島さんはため息をついて、ベテランの警察官に先ほどもらった紅茶の茶葉を投げ渡す。ベテランの警察官は中身を見て驚いたような顔をした。
「証拠はない、通報はイラズラ電話よね?」
ベテランの警察官はますます焦っている。
「はっ、はい。当然です。我々のミスです」
新米警察官は怪訝な顔をした。
「もう、これでいいかしら?」
「もちろん、すみませんでした。ほ、ほら行くぞ!」
ベテランの警察官はパトカーに急いで向かった。間島さんも車に戻ろうとした。
「あ、あのっ!」
新米警察官が呼び止める。
「……何をやったか、自分にはわかりません。ですが、どんな境遇であれその子の自由を束縛するのは許せません」
間島さんは振り替える。
「仮に、そうだとしても私にはそういうことが許されるだけの力がある。悔しかったら、お前が権力を握って私を潰しにこいよ。行こうか、楓季」
私は間島さんについていく。私は他人事のように見ていた。別に間島さんのことは嫌いじゃないし、勉強はしてみたいが出来ないなら諦める。重労働は運よくさせられたことがないし、間島さんは私にはそういうことはさせない。
むしろ、私は奴隷じゃなくなるのが怖かった。だって、どこへ連れていかれるかわからないし何より環境が変化するのは耐えれない。
「間島さんがさっき渡したのは何?警察の人。慌ててた」
「別に、ただの紅茶よ。今は売れてない紅茶なんだけどね。まぁ、あの紅茶の茶葉だけでかなりの大金になるわよ。簡単に言えば賄賂ね」
間島さんはそう言うと私の手をつなぐ。
「今日は仕事も終わったし、早く家に帰りましょうか」
「うん」
間島さんは私には優しい。私が失敗しても怒らないし、私のことを馬鹿にしないし、私のこと大好きだって言ってくれるし、人として不当な扱いをすることはしない――間島さんにとっては私は唯一例外なのかもしれない。間島さんは商品に容赦はしない。商売上敵対した人間は酷く残酷だ。金のためならば悪魔にすら魂を売りそうだ。
だから、私は油断していたのかもしれない。
私がまさか、
間島さんの弱みになるなんて意識してなかった。