人間市場 考察
飲食店の店内は木製の椅子とテーブルがあり、ほかに客はいない。男性は私達にテーブルにつくよう言った。そして、店の奥へ入る。
「ここはね、人間市場なの。まぁ、魚市場の人間バージョンって考えればいいわ。ここでは、当然のように人肉が食べれる。ここもメニューのほとんどは人肉よ」
間島さんが、淡々と説明する。まるで、人肉を食べることはごく普通に話す。
「あの人、大丈夫なの?」
間島さんは少し困った顔だ。
「まったく、彼は狂ってる。ねぇ?ビス」
ビスと呼ばれたのはさっきの男性だった。ビスは間島さんの分だけ紅茶を持ってきた。当然だ。私は奴隷なのだから。
「本人の前でそう言うか。その通り!俺は狂ってる。人肉はうまいからな!」
間島さんは紅茶を口に運ぶ。そして、一口飲むと顔をしかめた。そして私に渡す。
「飲みたかったら飲んで」
私も紅茶をすする。飲めなくはないが、確実に変なものが入っている。
「私はね、ビス。人肉というビジネスを始めようと思うの」
私は紅茶を吐きそうになった。
「へぇ?」
ビスは楽しそうだ。
「ここ何年間で奴隷取引は禁止になった。もちろん、今まで黙認されていた人肉も。そして、この国で人肉食べれるのはここしかない。ましてや奴隷取引より人肉のほうがリスクが高く誰もやらない。このビジネスを始めれば私の独壇場となる」
間島さんはビスに顔を近づける。
「だから協力してほしいのか」
クハハハと彼は笑った。
「もちろん!人肉の素晴らしいさを伝えるチャンスじゃないか!」
ビスはすごく楽しそうだ。
「それじゃあそういうことでいいかしら?」
「あぁ!これ、お礼に持っていけ」
間島さんに紅茶の茶葉を渡した。
「ん?さっきの?」
「この国のお偉いさんが大好きなんだ。もし何かあったらそれを渡せ」
間島さんは中身を見てふぅん?とだけ言って店を出た。私もついて行こうとした。だが、ビスに腕を捕まれた。
「な、何するんですか?!」
私は焦った。どうしよう……ビスは私の耳元にそっと囁いた。
「お前は昔俺がさばいた女の匂いがする。血縁者かもな」
ゾッとした。だが、ビスは笑って。
「なーんてな、ジョーダンだよ。またおいでよ、次はお客でも商品でも」
私はホッとして店を出た。